女性の定住を進めたい自治体は注目!女性が地方に求める仕事像を徹底解剖

地方の人口対策において重視されるターゲットの1つが「若年層の女性」です。若年層女性は労働力、子育ての担い手、そして地域文化を豊かにするプレイヤーとして重要な役割を担います。生産年齢の男性に属する世帯に「何を基準に住まいを決めるか」と聞くと、「奥さんの住みやすい場所は重要」という回答もあるようです。
では、女性の社会進出が当たり前になっている昨今、女性はどのようなことを地域に求めているのでしょうか。それを知ることで、自治体が誘致するべき企業、既存の企業の業態変容や職場の改革で重視するポイントがわかってくるでしょう。
データから分析!女性の雇用が多い業種とは

厚生労働省は「働く女性の状況」を公表しており、女性の雇用状況をデータとともに解説しています。令和5年度時点で、女性の雇用者数は2,793万人となっています。雇用者総数に占める女性の割合は46.0%で、昭和60年の35.9%と比べると10%以上増加しており、女性が男性と同じ程度の主要な労働力になりつつあることがわかります。
参考:厚生労働省 令和5年働く女性の状況
男女で雇用されている業種に大きな違い
厚生労働省の資料で令和5年における女性雇用者数を業種別にみると、「医療,福祉」が 669 万人と最も多く、多い順に「卸売業,小売業」が516 万人、「製造業」が303 万人、「宿泊業,飲食サービス業」が223 万人と続いています。男性は多い順に「製造業」 718 万人、「卸売業,小売業」454 万人、「建設業」320 万人、「運輸業,郵便業」258 万人となっていることと比べると、男女で雇用されている業種に大きな違いがあることがわかります。
女性の雇用割合が多い業種
令和5年における雇用者総数に占める女性比率を業種別にみると、比率が高い順に「医療,福祉」75.9%、「宿泊業,飲食サービス業」63.9%、「生活関連サービス業,娯楽業」60.6%、「教育,学習支援業」57.9%、「金融業,保険業」55.2%、「卸売業,小売業」53.2%、となっています。これらは、女性が雇用されやすい業種ともいえるでしょう。
女性に人気がある仕事の特徴を考える

必ずしも女性に限ったことではありませんが、さまざまな事業者が“女性はどのような仕事に魅力を感じるのか”について、アンケートを実施しています。多くの調査で共通しているポイントを3つご紹介します。
職場内の人間関係が良好でストレスが少ない
厚生労働省が公表した「令和5年雇用動向調査結果の概況」によると、女性の離職理由では「その他の個人的理由」25.1%を除くと、「職場の人間関係が好ましくなかった」が13%と最も多い結果です。男性の9.1%に比べると高い数値となっています。こうした背景から、職場内の人間関係が良好である点は、仕事を求める若い女性にとって非常に重要な要素といえるでしょう。
参考:厚生労働省 令和5年雇用動向調査結果の概況
仕事における裁量権の大きさは表裏一体
「令和5年雇用動向調査結果の概況」では女性の転職入職者が前職を辞めた理由の調査結果を公表しています。前職を辞めた理由のうち、「能力・個性・資格を生かせなかった」といった仕事における裁量権の小ささ等を原因とする離職は、5.4%と比較的低い結果となっています。
裁量権はやりがいに直結するものであり、ひいては女性が長く働く動機になると考えがちです。しかし一方で、裁量権の大きさは女性に対する負担の多さでもあります。「管理職にはなりたくない」「仕事のストレスを感じたくない」とう理由で管理職を辞退する女性が少なくない状況もあり、表裏一体ともいえるでしょう。
子育てなど私生活と両立ができる
仕事とプライベートのワークライフバランスが得られることも、重要なポイントです。「令和5年雇用動向調査結果の概況」においても、「労働時間・休日等の労働条件が悪かった」が11.1%との結果です。2番目に多い離職理由となっていることからも、私生活との両立は重要な指標といえるでしょう。
子育て支援だけじゃない!自治体による女性活躍の取り組み事例

よくある勘違いが、「子育てしやすい地域をつくれば女性は定住しやすくなる」という考えです。ここまでご紹介したように、女性が重視する仕事像や価値観は多様化しており、安定だけでなく活躍できる環境も重視されます。子育て支援については別記事で詳細を紹介していますので、ここでは女性の活躍を支援する自治体の取り組みにスポットをあててご紹介します。
喜ばれる子育て支援で移住者を呼び込むコツとポイント
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茨城県日立市
茨城県日立市では、女性による専門資格取得やキャリアアップに向けた意識向上のセミナーを開催しています。
専門資格取得については、資格取得にかかる経費の一部を補助することで、出産・育児・介護などのために離職した女性が再び社会で活躍できるように支援しています。簿記、介護職員初任者研修、介護福祉士、保育士、登録販売士といった女性に人気がある資格だけでなく、宅地建物取引士や大型自動車免許といった、女性が少ない分野の資格取得も対象にしています。
キャリアアップの意識向上については、さまざまな分野で活躍している女性を講師として呼び、キャリアについての考え方やライフプランとのバランスを取る方法など、経験をシェアしてもらうことで、働く女性のロールモデルを提案しています。
岐阜県恵那市:ショッピングセンターで女性活躍に関する取り組みを発信
岐阜県恵那市では「女性が生き生きと暮らせるまち」を目指し、女性が自然と集まり定住しやすいまちづくりを目指しています。特徴的なのは、情報発信の拠点がショッピングセンターであることです。女性が集まりやすいショッピングセンターで女性が活躍できる仕事の情報を発信しています。起業の方法を教える就労セミナーや座談会の開催、子育て支援事業なども行っています。
山口県山口市:女性応援サイトによる情報発信
山口県山口市は、Webで女性の活躍を積極的に応援している自治体です。「やまぐちしごと応援サイト」をメインサイトにしたサブサイト、「山口市女性しごと応援ルーム輝らり(きらり)やまぐち」を立ち上げました。そこでは、女性の働き方と雇用情報に関する情報を発信しています。たとえば企業と女性との交流会のイベント情報、活躍している女性の事例集、人を募集する企業のPR動画、女性社長が利用しやすい補助金情報など、幅広い仕事情報が提供されています。
女性が感じる魅力は千差万別。地域企業の魅力を効果的に発信しよう
ここまで、女性が雇用されやすい仕事や魅力を感じやすい仕事をご紹介してきました。しかし、一概にこれらの指標がすべての女性にとって重要かというと、そうでもないでしょう。キャリアアップを最重要視する人、ワークライフバランスを重視する人、出世はしたくなくとも与えられた仕事の中で大きな成果を出したい人、家族を最優先にできるスタイルを重視する人など、仕事に対しての価値観はさまざまです。また、仕事のスタイルよりも「やりたいこと」「関わりたい業種」を最重要視する人もいるはずです。
重要なのは、同じような会社や単一の会社に任せるのではなく、さまざまな会社があって女性の選択肢が多いことではないでしょうか。自治体としては、こうした魅力をうまく発信し、仕事と女性のマッチングがしやすい仕組みを整備することが重要です。皆さんの地域にも、女性が活躍する魅力的な企業や職場が必ずあります。ぜひ、効果的な情報発信の方法を考えてみてください。