自治体による終活支援とは?近年増えている理由と支援内容(前編)
終活支援という言葉を耳にすることが増えました。そんな中、実は自治体による終活支援も近年増えています。終活支援を行う自治体が増えている理由や終活支援を受ける市民のメリット、自治体が提供する具体的な支援内容、自治体と民間事業者との連携事例について、2記事に分けて解説します。1記事目の今回は、自治体が終活支援を行う背景について詳しく説明します。
終活支援を行う自治体が増えている理由
終活支援を行う自治体が増加している背後には、高齢者の孤独死の防止や、残りの人生を安心して有意義に過ごせる環境整備、孤独死に伴う公費負担の軽減、そして自治体職員の業務負荷軽減、といった理由があります。これらの要因が相互に関連し合い、地域社会の福祉と安全を向上させるために、自治体による終活支援が求められるようになっています。
高齢者の孤独死を防ぐ
日本では高齢化社会が進み、高齢者の孤独死が増加しています。孤独死を防ぐことは、住民が安心して生活できる環境整備という自治体の使命において、重要な役割といえます。自治体では、遺言や葬儀の手続きを事前に整理したり、地域コミュニティの中で安心生活できる環境を提供したりするなど、孤独死防止につながる終活支援を行っています。
残りの人生を安心して有意義に過ごせる環境整備
遺言や葬儀、相続手続きなどの準備が整っていれば、高齢者は安心して残りの人生を送りやすくなります。そこで終活支援として、一人ひとりの想いを後世に残すための、各種手続きのサポートを行う自治体が増えています。一人ひとりのニーズに応じたサービスやプログラムを提供することで、心身共に健康な状態で、残りの人生を有意義に過ごせるようになることを目指しています。
孤独死に伴う公費負担の軽減
孤独死は、遺族がいない場合や連絡が取れない場合に、死後の手続きや費用に関する負担が自治体に及ぶことがあります。高齢者が事前に終活支援を受けることで、自身の死に関する事項をきちんと整理しておけるため、自治体が行うべき手続きや費用負担が軽減されます。これにより公費負担が減り、自治体はより多くの福祉サービスにリソースを割けるようになるのです。
自治体職員の業務負荷軽減
遺族がいない高齢者が孤独死した場合、遺品整理や墓碑の撤去、供養の手続きは自治体職員が行わなければならず、業務負荷が急増します。終活支援を通じて、高齢者が死後の事項を個別に準備しておくことで、自治体職員の業務負荷を軽減できます。また、高齢者に対する終活支援体制が整備されることで、地域住民の安心感や、自治体に対する信頼度も高まるといわれています。
今後も増える身寄りのない高齢者
1人暮らしの高齢者は増加傾向にあり、更なる孤独死の増加などが懸念されています。令和5年版高齢社会白書によれば、昭和55年には65歳以上の男女それぞれの人口に占める1人暮らしの割合は、割合は男性4.3%、女性11.2%でしたが、令和2年には男性15.0%、女性22.1%と大幅に増加しています。高齢化が進む日本社会において、この傾向は今後も続くことが予想されるため、終活支援であらかじめ対策を講じる自治体が増えているといわれています。
終活支援を受ける市民のメリット
自治体による終活支援は、自治体だけでなく、住民にとってもメリットがあります。自分の人生を振り返って整理し、事前に準備が整った状態で死期を迎えられるようになることです。自分の歩んできた道のりを思い返して、納得感や満足感をもてるのは、住民の幸福度を高める上で重要なことだといわれています。また、遺族にとっては、故人が残した遺志や遺品整理、葬儀などの手続きがスムーズに進むため、喪失感と向き合いながらも日常生活を送りやすくなるでしょう。
ここまでは、終活支援に取り組む自治体が増えている理由を説明してきました。次回は、全国で取り組みが広がりつつある、終活支援の具体的な内容をご紹介します。
自治体による終活支援とは?近年増えている理由と支援内容(後編)