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果物狩りの可能性とは?観光農園の役割や地産地消と6次産業化に役立つ取り組みを紹介

目次
  1. 果物狩りができる観光農園の魅力と役割
  2. 6次産業化に取り組むメリット
  3. 地産地消の法制化の背景と取り組み
  4. 自治体と生産者との連携で6次産業化に取り組んでいる事例紹介
  5. 地元の特産品を活かした取り組みをしましょう
果物狩りの可能性とは?観光農園の役割や地産地消と6次産業化に役立つ取り組みを紹介

果物狩りは観光として人気があるだけでなく、地域経済や地元の農業を支える重要な産業活動でもあります。近年では「第6次産業」として農業×観光×加工を融合した形で、地域経済への貢献度の高い取り組みが注目されています。また、2023年には地産地消の推進が法制度にも反映され、地方自治体にとっても特産品の再評価と活用が重要なテーマになっています。本記事では「果物狩り」のもつメリットを軸に、観光農園がもたらす地域活性化の可能性や、地方公務員が知っておくべき地産地消の現状を解説します。




果物狩りができる観光農園の魅力と役割

果物狩りの可能性とは?観光農園の役割や地産地消と6次産業化に役立つ取り組みを紹介

観光農園とは、一般の人々や観光客が訪れて果物や野菜の収穫を体験できる農園のことです。近年、観光農園は観光ビジネスとして、また農業にもメリットがある点で注目されています。



果物狩りの人気の理由

果物狩りは、自分で収穫した果物をその場で食べられるため、新鮮な果実の味わいを堪能できる魅力があります。果物狩りは農業体験の1つとされていますが、家族連れや友人同士で気軽に楽しめるレジャーであることが人気の理由といえるでしょう。
ぶどうやりんごをはじめ、いちご、桃、梨など季節ごとにさまざまな果物が果物狩りの定番として挙げられます。
近年のインバウンドの増加により、各国で珍しいとされる果物や海外の人たちに好まれる果物など、外国人観光客からの需要も高まっています。



観光農園の地域への役割

観光農園には、ビジネス面の役割もいくつかあります。
1つは収益の多様化と安定化です。果物狩りでは、基本となる入園料・収穫体験料に加え、収穫した果物などを直接販売することも可能です。季節ごとのイベント開催や地域特産品を取り扱う直売所の運営、ECサイトを通じた全国展開なども販路の拡大につながります。
また、人件費削減の効果も期待できます。近年の農業では、果物や野菜の収穫作業にかかる人件費が課題となっています。観光農園では、収穫の手間を農業体験の価値に変換することが可能です。お客様自身が収穫作業を行い、その体験に対して料金を支払うことで、コストが収益となる仕組みです。





6次産業化に取り組むメリット

果物狩りの可能性とは?観光農園の役割や地産地消と6次産業化に役立つ取り組みを紹介

6次産業化とは、1次産業である農林漁業をもとに、加⼯などの2次産業、サービスや販売などの3次産業までの生産・加工・販売を一体化した取り組みで、果物狩りも6次産業の一環です。近年、地域資源を活用したさまざまな新しいサービスが登場し、地域活性化や収益安定化などを実現するための手段として注目されています。



6次産業化とは?

6次産業化とは、農林漁業を1次産業としてだけではなく、加⼯などの2次産業、さらにはサービスや販売などの3次産業までを融合することにより、新しい産業として農業の可能性を広げようとする取り組みです。収益の向上・安定化、雇用の創出、地域活性化、持続可能な農業の実現を目標としています。1次×2次×3次=6次となるため「6次産業化」と呼ばれています。
具体的には、生産物を使った加工品を開発・製造し、道の駅などの店舗やインターネットなど、販路を開拓し、販売を行う「加工品販売」・生産物や地域の食材を加工、調理して提供する飲食店「農村レストラン」・農家の住居を宿泊施設として提供する「農家民宿」などがあります。
果樹栽培を行う農家が生産物をジュースやジャムに加工したり、農場の一部を観光農園として経営したりなどして収入源を増やす農家が増えてきています。



地域経済に与えるメリット

6次産業化に取り組むことで、地域経済にはさまざまなメリットがあります。
たとえば、所得の向上・雇用の創出・生産物のブランド化・地域活性化などです。
 
・所得の向上
農産物に付加価値を付けて販売することで所得の向上が見込めます。具体的には、観光農園、農家レストラン、農家民宿などの事業があります。
 
・雇用の創出
農業生産だけの場合、人件費の面から収穫などの繁忙期以外に人を雇用することは難しくなります。そこで2次産業、3次産業を一体化させることで通年雇用が可能になります。また、新規事業によって新たな仕事を生み出すことができ、地域の人口流出を防ぎ、新たな人の流入も期待できます。
 
・生産物のブランド化
地域資源を活用して生産物をブランド化することで、さまざまなルートで全国に広めることができます。食品は、生産地の自然条件や地域の歴史・文化の影響を強く受けており、ブランド化しやすいという特徴があります。
 
・地域活性化
観光農園や農園レストラン、農家民宿などによって観光産業が促進されることで、観光客の増加が期待できます。また、地域と継続的に関わりをもつ関係人口の増加にもつながり、事業の発展が促進され、地域活性化にもつながるでしょう。





地産地消の法制化の背景と取り組み

果物狩りの可能性とは?観光農園の役割や地産地消と6次産業化に役立つ取り組みを紹介

地産地消とは、地元で収穫した農水産物を、地元のなかで消費することです。6次産業化は、地産地消とも深く関係しています。ここでは、地産地消の法制化の背景や、さまざまな取り組みについて紹介します。



地産地消と6次産業化の関係

2010年に、「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等および地域の農林水産物の利用促進に関する法律」である6次産業化・地産地消法が制定されました。この背景には、6次産業として農林漁業者が食品加工や流通・販売にも積極的に取り組み、その所得を向上させていこうという目標があります。
その後、2016年には、学校給食における地場産物の使用割合を増やすための計画として第3次食育推進基本計画が策定されました。
 
地産地消という言葉が使われ始めた1980年代から約40年が経過し、国や自治体が一体となってさまざまな取り組みを続けた結果、一般市民にとっても身近な言葉となったのです。

「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律」(六次産業化・地産地消法)について:農林水産省



地産地消の取り組み

地産地消は、国産農産物の消費拡大、農産物直売所・産直などの利用推進、そして農業の6次産業化にもつながる取り組みです。近年では、ふるさと納税や通販サイトなどを利用した、産地からの直送農産品の人気が上昇しています。
国も地産地消を推進する政策に取り組んでおり、2011年3月に6次産業化・地産地消法が施行されました。これにもとづき、地方公共団体による促進計画の取り組みが進められていくことによって、地産地消がさらに拡大することが期待されています。





自治体と生産者との連携で6次産業化に取り組んでいる事例紹介

地元の特産品と果物狩りなどの6次産業化に取り組んでいる事例を紹介します。



ブランド化による6次産業の強化

収穫量やおいしさの向上、また病気への耐性や育てやすさなどを目的に品種改良が行われ、栽培地域の特性に合ったさまざまな品種が誕生してきました。
果物の味・品質・希少性などを付加価値として地域ブランド化することで、価格競争に巻き込まれない独自の特産品が生み出されます。

全国的に有名なブランドの1つに、和歌山県有田市の「有田市認定みかん」が挙げられます。認定には、栽培地や品種はもちろんのこと、栽培方法・糖度・酸度・大きさ・食味など、多岐にわたる厳しい基準をクリアする必要があります。有田市の比較的温暖な気候や水はけの良い畑が広がる環境はみかんの栽培に適しており、その歴史は400年以上。贈答品としても人気が高く、地域活性化につながる強力なブランドとなっています。

こうしてブランド化された果物は、果物狩りをはじめとした6次産業や観光産業への集客に効果的です。また、採れたてを味わう体験に加えて美しい景観や歴史などのストーリー性を体感することで、消費者をファン化する強い武器となります。

有田市認定みかん|有田市公式ウェブサイト



体験型の返礼品化

果物が多く取れる地域では、とくに自治体と生産者との連携でふるさと納税の返礼品化が積極的に行われてきました。
ふるさと納税の返礼品は、モノ消費からコト消費へ移行しているといわれています。各地のさまざまな特産品が返礼品化されたことで、単にモノを送るだけでは差別化ができなくなってきました。自治体にとっては、寄付者と金銭や物品だけでつながるよりも、現地に足を運んでもらうことが地域の交流人口や関係人口の創出になることから、現在は工夫を凝らした体験型の返礼品が増えています。

果物についても同様です。たとえば、ある自治体では、果樹の共同オーナー権という返礼品を開発しました。これは複数の寄付者が1本の果樹の共同オーナーとなり、現地の農家が果物を育てる過程を共有し、体験することができるものです。
別の自治体では、多種多様な果物を育てる観光農園と連携し、さまざまな果物狩りが一度に楽しめる利点を強みに果物狩り体験チケットを提供しています。寄付者は応援している地域を訪れることでその魅力を再確認する機会が得られます。

いずれもリピーター獲得や自治体への寄付増が期待でき、関係性を強化できる取り組みといえるでしょう。





地元の特産品を活かした取り組みをしましょう

地元の特産品を活用することで、1次産業である農業だけでは実現できないさまざまな取り組みの可能性があります。今回紹介した事例も参考に、自分たちの地域の特産品の可能性を見直してみましょう。

サイネックスの「わが街とくさんネット」は官民協働で、地域の隠れた特産品や名産品を販売し、地域経済の活性化を目指すサイトです。
特産品を全国に広げるためのツールとして検討してみてはいかがでしょうか。

わが街とくさんネット

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