つながるアンテナショップ「三重テラス」(前編)
Interview
三重県雇用経済部 菅生 和範 様/三重県雇用経済部 水谷 愛奈 様
三重テラス 大田 茜 様/三重テラス 大西 滋之 様
三重テラス外観
東京・日本橋にあるアンテナショップ「三重テラス」は、三重県の魅力を首都圏に発信する拠点として誕生し、今年で12年目を迎えました。三重テラスはショップだけでなく、レストランやイベントスペースも備え、観光案内や地域産品の紹介などを通じて「三重県のファンを増やすこと」を目標にしています。
本記事では、三重テラスのスタッフである菅生さん、水谷さん、大田さん、大西さんにインタビューし、日本橋と三重県のつながりや、その魅力を前編・後編に分けてご紹介していきます。
三重県のファンを作りたい!情報発信拠点の三重テラス
ーーはじめに、三重テラス開設の目的や概要について教えていただけますか?
三重テラスを日本橋に開設した目的は、三重県の魅力を東京で広く伝える「情報発信拠点」を作るためです。三重テラスはアンテナショップとして県産品を販売するだけでなく、三重の食の魅力を堪能できるレストランを併設しています。さらに2階には多目的スペースを備えイベントの開催やコワーキングに活用しており、ショップやレストランと連携することで効果的な三重県の魅力発信が行えるよう努めています。
実はこうした複合的なスタイルはアンテナショップの中でははしりともいえる存在です。特に2年前のリニューアルオープン以降は「部活動」と称したコミュニティ活動にも注力し、県内外の人々とのつながりを育んできました。
三重テラスをきっかけに様々な交流や発見が生まれ、「三重っていいな」と思っていただけるファンが増えることで、関わって頂いた皆様と三重県がさらに元気になっていくことを期待しています。(菅生さん)
日本橋は伊勢商人が江戸の繁栄を支えた場所
ーーなるほど。ではなぜ、日本橋に三重テラスを開設されたのでしょうか?
三重テラスを日本橋に開設した背景には、三重県とこの街の深い歴史的なつながりがあります。江戸時代、江戸城の門前町の繁栄を支えたのは伊勢から来た商人たちでした。徳川家康が江戸に入府する際に小田原から同行してきたそうで、多くの伊勢商人がのれんを掲げて大きな商いを行っている様子が浮世絵にもしっかり描かれています。
日本橋では伊勢商人の流れをくむ老舗企業さんが今も活躍されており、街全体として伝統を残しつつ新しいものを作っていこうとする組織的な取組が進められています。
また、日本橋は東海道の起点であり、江戸時代に盛んだったお伊勢参りのいわば出発点ともいえる場所でした。東京と三重をつなぐ三重テラスが位置する場所として、日本橋ほどふさわしい場所はないと考えています。(菅生さん)
三重県のことを知ってほしい
三重県には、伊勢神宮や熊野古道といった国内外に有名なスポットがあり、松阪牛などの食や多くの伝統工芸など、魅力的なコンテンツも数えきれないほど豊富にありますが、まだまだ知られていない部分が多いのも事実です。
三重県内には空港がなく、名古屋を経由して電車で移動すると地域によっては東京から5〜6時間ほどかかってしまうので、気軽に訪れるにはややハードルが高いと感じる方がいるかもしれません。
だからこそ、日本橋という東京の真ん中に拠点を構えている三重テラスでは、三重の魅力を直接届けることで、多くの方に、「三重のことを知りたい」「三重に行ってみたい」と思ってもらえるきっかけを作っていきたいです。(水谷さん)
三重の魅力を全方向から発信!特産品や限定品が手に入る三重テラスのショップ
三重テラス:ショップ
ーー三重テラスの1階はショップとレストランになっていて、とても開放的で入りやすいですね。
はい。三重テラスの1階は、どなたでも気軽に立ち寄れる開放的なショップとレストランになっています。ショップでは、名物として知られる「なが餅」や「シェル・レーヌ」などの商品や、「作(ざく)」などの地酒が人気があります。また、真珠や伊勢木綿、伊賀焼などの工芸品をはじめ、訪れる人に長く愛されている商品が並んでいます。
三重テラス 大田 茜 様
なかでも注目なのは、ここでしか買えない限定商品「シェル・レーヌ 尾鷲甘夏」です。尾鷲市の甘夏のピールを生地に練り込んだ特別な一品で、三重テラス独自で開発されたもの。尾鷲市内でも販売されていないため、まさに三重テラスならではの魅力を体感できます。この「シェル・レーヌ 尾鷲甘夏」は大人気商品で、将来的には三重県に“逆輸出”する構想もあるんですよ(笑)。
このような特産品や限定品を通じて、三重の多彩な魅力を直接感じられるのが、三重テラスの大きな魅力になっていると思います。(大田さん)
本当に良いものが欲しい。そんなお客様が訪れる
ーー三重テラスのショップには、どのようなお客様が来店されるのですか?
三重テラスに足を運んでくださるお客様は、「本当に良いもの」を求めている方が多いように思います。その「良いもの」という基準は人によって違いますが、ここには「現地ならではの本物」といえる品がそろっているからこそ、ご期待に応えられているのだと思います。たとえば、チルドの伊勢うどんは毎週金・土・日に入荷しますが、すぐに完売してしまうほどの人気商品です。「旅行で食べて感動したから」と、冷蔵品でありながらまとめ買いされる方も少なくありません。
また、ショップには工芸品や名産の真珠といった高額商品もあるのですが、50万円を超える品をお買い求めになった方もいらっしゃいます。お年を召した方で、新婚旅行で三重に行った時の思い出だということでしたね。
一方で、「おかげ犬」の松阪木綿を使ったぬいぐるみのように、歴史を感じるユニークな商品も人気です。江戸時代、自分がお伊勢参りに行けない時に、犬に代わりに行ってもらったのがおかげ犬の由来です(笑)。
ここに来れば、三重県の「本当に良いもの」がそろっている。そのような信頼をいただいていることが嬉しいです。(大田さん)
試食や試飲も開催。三重の魅力を全方向で発信
三重テラスでは、ただ商品を並べるだけではなく、試食や試飲を通じて三重の魅力を体験していただける工夫もしています。たとえば、志摩市のかつお節は、生産者の方に実際に来てもらい、かつお節の活用方法や魅力、おすすめの食べ方を直接紹介していただいたこともあります。また、伊勢茶や醤油なども生産者が試飲販売を行っており、現地ならではの話を聞きながら楽しめると、お客様から好評をいただいています。
三重テラスを訪れる方にとっては「本場の人から直接商品の良さを聞ける」貴重な機会であり、商品の背景やストーリーがより身近に感じられることでしょう。
食品や工芸品、さらには限定商品まで、多角的に三重の魅力を発信しているのが三重テラスの強みではないかと思っています。(大田さん)
後編へ
ーーここまでは三重テラスの概要やショップの魅力をお聞きしました。後編では、季節ごとの三重の味が楽しめるレストランや、イベントスペースの活用、コワーキングスペースでの取り組みについて取り上げていきたいと思います。



