業務効率化の力強い味方!自治体におけるRPAの普及状況と事例紹介
近年、デジタル技術を活用して行政サービスの向上や効率化、住民の利便性を高めるための取り組みである自治体DXが注目されています。その中でRPA(ロボットによる業務自動化)は、日々の定型業務を自動化するツールとして不可欠な存在になりつつあります。
自治体においてもRPAの普及は急速に進んでおり、総務省の調査(令和7年時点)によると、2024年時点で、1,788団体のうちRPAを導入している都道府県は96%、指定都市は100%、その他の市区町村は43%と、普及率が約13%といわれる民間企業を大きく上回っています。
今回はRPAの効果が発揮される自治体業務や導入事例、導入するときの注意点や対策も紹介します。
総務省:自治体におけるAI・RPA活用促進
自治体業務に適したRPA活用パターン
RPA(Robotic Process Automation)とは、普段人が行っている定型的なパソコン操作をロボット(ソフトウェア)が代替して自動化するものです。具体的には、パソコン上の操作を認識・記録し、処理のルールを定義した「シナリオ」に沿って、表計算ソフトや業務システム、Webサイト、メールなど複数のアプリケーションを使用する業務に適用するツールです。
自治体業務は、一度に扱うデータ処理件数が多いうえに、機密性が高い個人情報の取り扱いが多いという特徴があるため、ヒューマンエラーは極力避ける必要があります。RPAによる自動化によって、ヒューマンエラーの回避だけでなく、業務量の削減といった効果も期待できます。具体的にどのような業務に適しているのか紹介します。
データ入力
RPAは単純な定型業務の自動化に向いており、データ入力はその代表的な業務の1つです。
データ入力に効果を発揮した例として、介護保険高額介護サービス費等支給申請書の情報登録業務に導入した広島市の事例があります。導入前は、市民からの申請書に記載されている口座番号等の情報を業務システムに入力する作業を、職員がすべてパソコンで手入力していたうえ、作業中に電話や窓口対応で中断することも多く、手戻りの原因となっていました。RPA導入により、OCRで書類を読み取り、ロボットがOCR読み取り結果をシステムにアップするようにしたことで作業時間が短縮できました。
データ集計
複数のシステムからデータを集めて集計する作業は、単純作業ではあるものの手間がかかる業務です。正確性が求められる一方で、人間が手作業で行うとミスが生じやすいという課題があります。こうした業務こそ、RPAによる自動化が向いています。
代表的なデータ集計の自動化例として、時間外勤務時間の集約・集計があります。各職員の時間外勤務命令簿の整合チェックをしたうえで、人事給与システムに反映し、時間外勤務手当を支給する業務です。
時間外勤務命令簿を紙からExcelに変更することで、職員別に時間を集計して人事給与システムに反映を繰り返す作業を自動化し、処理時間の削減を実現します。
インターネットの問い合わせ対応
自治体に寄せられる問い合わせ内容は多岐にわたりますが、問い合わせ時に選択肢の中から選んでいく形式の場合、ある程度定型化されています。よくある問い合わせの場合、回答内容が決まっているものであれば、問い合わせ時に選ばれる選択肢によってRPAが自動で回答に導いてくれます。
また、RPAは夜間早朝など就業時間に関係なく対応できます。住民は問い合わせの受付時間に関係なく返答をもらえるため、住民の満足度向上が期待できます。
自治体におけるRPA活用事例
全国の自治体がRPA導入に取り組んでいます。導入の経緯や導入後の効果について紹介します。
活用事例①:愛知県阿久比町
阿久比町は、職員の働き方改革に向けた取り組みの1つとしてRPA活用を検討しており、その先に住民サービスの向上も見込んでいました。
導入にあたっては、まずRPAの情報収集から着手しました。その後、無償版でのテストも実施し、問題なく活用できる見込みが立ったことから、庁内各部署へのヒアリングを行い、実際にRPAを導入する業務の選定を進めました。
導入後、固定資産税関連業務として、法務局から受領した「税通」を土地台帳システムに入力する業務を自動化しました。「税通」のデータは、従来の紙媒体からCSV形式での受領に変更することで、入力・確認等の作業が不要となり、これまで行っていた入力前の仕分け作業もデータの並べ替えで済むようになりました。
導入後の業務時間削減効果として、「税通」の入力業務で年間450時間の削減を実現しました。
阿久比町デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画 | 阿久比町
活用事例②:東京都狛江市
狛江市は、被保険者一人当たりの財政効果額の順位が、都内26市の中で年々下がってきたことから、レセプト点検業務の見直しを検討していました。
導入までの経緯として、AIを活用したレセプト自動点検システムの導入とあわせて、RPAの導入を提案されました。レセプト点検結果の登録には、レセプトの構造や診療項目に関する高度な専門知識や正確性が求められるうえ、反復作業となるため、RPAに委ねることで効率化を行うという提案でした。
導入を進めるにあたり、RPAのシナリオ作成は事業者に委託しました。その際、作業内容を詳細に可視化し、業務の目的を共有することで、共通認識のもとに作業が進められるようにしました。
導入後の業務は、国保連合会から受領したレセプトデータをレセプト自動点検システムに取り込み、AIによる診療(調剤)内容の点検処理を行います。疑義のあるレセプトについては、データを国保連合会の国保総合システムに取り込み、RPAにより疑義内容を選択し、再審査の申出を登録します。
導入後、年間4,212時間の業務時間削減効果や、処理日数が20日程度かかっていたものを1日~1日半程度に短縮でき、レセプト点検効果(財政効果額)の向上といった大きな効果があがっています。
狛江市DX戦略2.0 – 狛江市役所
活用事例③:鹿児島県奄美市
奄美市では、住民からの申請内容をシステムに入力する業務や、入力内容のチェック業務、システム間で連携できていない部分を手作業で補完する業務など、煩雑な業務が職員の大きな負担となっていることが課題となっていました。
導入を進めるにあたっては、導入の効果が期待でき、難易度が高くない業務を対象としたうえで、きちんと効果を出しきることを目標としました。パソコン内で完結し、業務手順の見直しを行わなくてもよい業務、月1回以上繰り返し行う業務であることを条件とし、3業務を選定して事業を開始しました。直接の担当職員に限らず、業務担当課の職場全体で理解を得るために、RPAの概要研修(全職員の1割程度が参加)を行うことで、3業務のシナリオは3~4カ月程度で完成し、スムーズに本運用に至ることができました。
導入後は、奄美市で利用している3つのふるさと納税サイトにおいて、RPAが新規分の寄付データをダウンロードし、ふるさと納税サイト上の操作で寄付者に対するお礼メールを送信します。その後、ふるさと納税管理システムで寄付データをアップロードし、ふるさと納税管理システム上で返礼品 の出荷依頼を行い、寄付者に対するお礼状・受領書等の帳票をPDF形式で作成・保存するという一連の作業をふるさと納税サイトそれぞれについて行っています。
導入後の効果として、ふるさと納税、軽自動車税、職員健康管理の3業務で年間297.5時間削減が実現できました。また定性的な効果として、「操作ミスが削減でき、正確性が向上した」「RPAに処理を任せている間、別の業務を行えるため、時間を有効活用できるようになった」などの報告もあがっています。
奄美市DX推進計画/鹿児島県奄美市
RPAを導入するときのポイント
RPAを導入することでさまざまな業務改善効果が見込める一方で、間違った進め方をしてしまうと、期待するような効果が得られなかったり、逆効果になってしまったりするおそれがあります。
導入を検討するときのポイントを押さえておきましょう。
目的を明確にする
「なんとなく業務効率化ができそう」「導入する自治体が増えているから」などの曖昧な理由で導入を決めてしまうと、結果としてRPA導入がうまくいかないケースも少なくありません。導入の目的が不明確では、導入すべき業務の選定が曖昧になり、最適なRPAツールの選定も難しくなります。
先の事例で紹介したように、抱えている課題を調査・把握して目的を明確化し、導入までのプロセスを決めていくことが重要です。まずは、自治体の業務が抱える非効率な点や自動化の需要、現場担当者の作業量といった現状を適切に把握することから始めましょう。
スモールスタートを意識する
RPAの導入初期の注意点は、大きな成果を求めすぎないことです。
時間削減効果が大きい業務を自動化するためには、複雑になるケースが多いため、はじめて自動化する業務の選定には不向きです。
RPAによる自動化の第一歩としては、時間削減効果は大きくないものの、単純で自動化しやすく、かつ担当者が熟知している業務を選ぶのがおすすめです。こうした業務であれば、利用するRPAツールの特性や自動化にかかるコストと効果を、比較的低コストかつ短時間で把握できます。
その結果、今後のRPA導入も進めやすくなるでしょう。
内製か外注かの選択
RPAによる自動化には、ベンダーやコンサルなどの外部業者に開発を委託する「外注」と、担当職員が自ら開発を行う「内製」の2つの方法があります。
外注のメリットは、専門業者が開発を担うことで確実性・信頼性が高い点です。一方で、コストがかかることや、発注側と受注側の間で認識の相違が生じるリスクなどの課題もあります。
内製のメリットとしては、RPAの修正が容易で、業務の細かい変更に対応しやすく、柔軟なカスタマイズが可能な点が挙げられますが、内部で開発を担う人材を確保する必要があるという課題があります。
それぞれの特徴を理解したうえで、自治体内部の人材や導入体制を検討して決めるとよいでしょう。
RPAの導入で業務改善を目指しましょう
自治体DXが注目される中、RPAの導入を検討する自治体も増えてきています。RPAを導入することによって期待できる効果はさまざまですが、まずは導入の目的を明確にすることが重要です。
そのうえで、改善したい業務の特性にあったRPAツールを選定し、取り組みやすい業務から着手してみてはいかがでしょうか。



