年度末・年度初めの業務負荷を軽減!転入・転出対応業務で進むDX化
3月・4月は転入者・転出者が他の月より急増し、転入・転出対応の業務負荷の大きさに悩む自治体も多いのではないでしょうか。
全国の自治体で転入・転出手続きがオンライン化されたことにより、効率化された面があるとともに新たな課題も出てきました。
具体的なオンライン手続きの手順や転入・転出対応のDX化成功例、繁忙期に備える対策についても紹介します。
自治体の転入・転出手続きの課題
自治体職員の主な業務に、窓口業務や電話応対といった住民と直接向き合う仕事があります。住民の問い合わせや窓口対応を減らすことは容易ではありません。
窓口業務の代表的なものの1つである転入・転出手続きにおいて、自治体はどのような課題を抱えているのでしょうか。
少子高齢化による人手不足
近年の少子高齢化により、自治体では、若年層の採用が年々減少し、人員確保が難しくなってきています。しかしそのような状況下でも行政サービスに対する住民の期待は変わらず、むしろ多様化・高度化しています。
いまや夫婦共働きが当たり前となり、核家族化が進んだこともあり、役場の窓口に直接訪問できる時間が限られる世帯が増えました。限られた貴重な時間を使って窓口に赴いた住民は、迅速な行政手続きを求める傾向が強くなってきています。
デジタル行政対応など行政サービスの業務内容の複雑さは増しているにもかかわらず、限られた職員数で、住民側が期待する「迅速」「わかりやすい」「柔軟な対応」が求められているのです。
転入・転出対応は自治体の窓口業務の中でも件数が多いものの1つとされており、人手不足による業務負荷への影響が大きいといえます。
3・4月は転入転出者数が倍増
毎年3月・4月は転入者・転出者が多い時期とされており、それに伴って自治体の住民対応の件数も急増することになります。
総務省による2024年の全国の月別都道府県内移動者数、他都道府県からの転入者数および他都道府県への転出者数の統計データから、3月・4月は他の月と比べて1.5~2倍近く多いことがわかります。
(参考)住民基本台帳人口移動報告:月、男女別都道府県内移動者数、他都道府県からの転入者数および他都道府県への転出者数-全国、都道府県(移動者、日本人移動者、外国人移動者)(2024年)
住民基本台帳人口移動報告 年報(実数) 2020年~ 年次 2024年 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口
転入・転出対応のため窓口業務の混雑を事前にアナウンスしている自治体も少なくありません。たとえば「3月・4月は引っ越しのシーズン 市民課・出張所の窓口が大変混雑します」「2時間以上お待ちいただく場合もあります」といったお知らせをHPで掲載しています。
その上で、あわせてマイナンバーカードを用いたオンラインでの転出手続きを推奨しているケースが多く見られます。
転入・転出対応のオンライン化による新たな負担
転入・転出手続きがオンライン化されたことで、住民の来庁の手間や窓口業務の負担が軽減できるとされています。
しかし、一方でオンライン化されたことによる新たな負担が発生する可能性もあるのです。
オンラインでの転出・転入手続きの手順
2023年2月に、全国の自治体においてマイナポータル経由での自治体に対する転出届と転入予約ができる「引っ越しワンストップサービス」が始まりました。
「引っ越しワンストップサービス」とは、マイナンバーカードを利用して、自治体での転出・転入の手続きや、電気・ガス・水道などライフラインの手続きも含め、引っ越しで必要になる手続きをオンラインで一通り行える制度です。
オンラインの転出・転入予約の流れは以下の通りです。
1. 引っ越しする人がマイナンバーカードで電子署名をして転出届・来庁予定を送信する
2. マイナポータルを通じて転出元市区町村に転出届の情報が送られ、転入先市区町村には来庁予定の連絡が送られる
3. 転出元市区町村から転入先市区町村に転出証明書情報の事前通知が送られる
4. 転入先市区町村の異動届窓口から転入手続きの事前準備について各関係課に共有される
5. 引っ越しする人は転入先市区町村の異動届窓口に来庁し、マイナンバーカードを提示して届出を行う
オンライン化しても残る窓口対応
転出届のための来庁は不要のため窓口対応はなくなりますが、転出元自治体における手続き作業は一部残ります。
また転入時は依然として窓口対応が必要となるため、完全に負担がなくなるわけではありません。そのため3月・4月の繁忙期は、混雑により時間がかかる状況の解消は難しくなります。
さらにマイナポータル経由のデータ処理・確認といった新たな内部の業務負担が増えることにもなり、住民対応にも影響する可能性があります。
オンライン化による問い合わせ増加
オンラインの転入・転出手続きの注意点として、転出届が受理されると、引っ越す日(転出予定日)にマイナンバーカードの署名用電子証明書が失効します。各種証明書の交付や健康保険証としての利用は可能ですが、電子署名を必要とするe-tax(確定申告)の送信や各種オンライン申請ができないことになります。
また、転入日から14日以内に転入予定市区町村への転入届を提出しないとマイナンバーカード自体が失効になります。マイナンバーカードが失効すると、電子証明書はもちろん、カードの機能すべてが使えなくなるため注意が必要です。あわせて、転出証明書の再交付を申請する必要もあります。
これらの規定により、住民からマイナンバーカードが使えない、再申請はどうするのか、といった電話や窓口の問い合わせが増えることが考えられます。
転入・転出対応のデジタル化成功事例
転入・転出対応のデジタル化の進め方に悩む自治体の方も少なくないのではないでしょうか。
ここでは、システム導入によって転入・転出手続きの効率化に成功した事例を紹介します。
北海道北見市の事例
北海道北見市は、「書かないワンストップ窓口」の先進自治体として広く知られています。
窓口業務改善の取り組みとして、従来の手続きチェックシートや、窓口のレイアウト、業務フローなどの見直しから始め、2016 年 10 月に証明書の申請受付や転入・転出手続きを含む各種手続きをワンストップ受付できる「窓口支援システム」が導入されました。
従来は、チェックシートを使って職員が住民に質問し、アナログにワンストップの受付を行っていたため、ヒューマンエラーは避けられず、手続き漏れが度々起きていました。窓口支援システムの導入以降、システムが申請者に必要な手続きを自動でリストアップするため、手続き漏れも起きていないようです。
たとえば家族の転入のカウンターでの手続きは、一般的に20~40分くらいかかるとされていますが、 約15 分で終わります。
北見市には職員提案という制度があり、市長が職員の取り組みを直接見聞きする機会があります。職員同士や市長とのコミュニケーションがよく取れていたことが、デジタル化成功の要因の1つでもあります。
夏のDigi田甲子園-北海道|内閣官房ホームページ ●書かないワンストップ窓口:取り組み概要
兵庫県三木市の事例
兵庫県三木市では、2021年10月から転入手続き、2023年10月から転出・転居手続きのデジタル化が開始されました。
デジタル化前の手続きでは、住民異動届を手書きで記入し、本人確認書類や転出証明書などの資料と合わせて受付に提出する必要がありました。デジタル化以降、住民は庁舎内に設置されたタッチパネル端末で本人確認書類や転出証明書などを登録し、簡単なアンケートに答えることで、書類に手書きすることなく手続きが行えるようになりました。
転入・転出手続きのデジタル化を実現したシステム導入により、「手続きにかかる時間が以前より約30%短縮した」「市民の皆さまへ情報発信のきっかけができた」「書類への手書きが不要になり喜ばれている」といった職員からの声があがっており、自治体DX推進の成功例といえるでしょう。
窓口業務の煩雑な手続きへの住民の不満と職員の事務処理の負担という問題に、自治体DXによる解決を検討する中で企業からの共同研究の提案を受け、官民協働で取り組んだ成功例ともいえるでしょう。
記者発表一覧(令和3年9月) – 三木市ホームページ:スマート窓口システムで転入手続きが簡単に
転入・転出対応の負担軽減に活かせる取り組み
転入・転出対応の負担を軽減するために、いきなりシステムを導入することはハードルが高いかもしれません。
ここでは、比較的取り組みやすい事例を紹介しますので参考にしてみてください。
AIチャットボットの導入
近年、転入・転出手続きの問い合わせ対応にチャットボットを導入する自治体が増えています。チャットボットを導入するメリットには、以下のようなことが挙げられます。
・ 比較的導入しやすい
・ 24時間365日対応可能
・ 職員の窓口業務負担軽減
・ 住民の満足度向上
商用化されている自治体向けのチャットボットサービスであれば、費用や作業面での負担を軽減する方法として導入しやすいでしょう。
わが街AIチャットボット
カレンダーで混雑予想を共有
来庁の際、手続きにかかる時間の目安がわかることは住民にとって役立つ情報です。
東京都府中市のサイトでは、手続きの内容別に20分、25分、30分~1時間など、極力細かく時間帯を分けて混雑予想をカレンダーで掲載しています。
こうした情報共有があることで、住民の来庁を分散でき、住民対応も余裕をもって行えるようになります。
3月・4月の転入・転出対応に備えよう
転入・転出対応のオンライン化により、住民は来庁する手間が軽減された一方、自治体側では転入の手続きのための窓口対応は残っています。またオンライン化による住民からの問い合わせ増加や、転出届のデータ確認作業といった窓口対応以外の業務負担が新たに出てきました。
転入・転出対応の業務改善には自治体DXに取り組むことが効果的と考えられるため、まずは今回紹介した取り組みやすいアイデアを検討してみてはいかがでしょうか。



