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自治体でも広がるカスハラ対策とは?実施すべき有効な対策

目次
  1. カスハラ(カスタマーハラスメント)とは
  2. なぜ今、カスハラ対策をすべきなのか?
  3. 知っておくと安心!カスハラ対策に関連する国の方針
  4. カスハラ対策の方法と事例を知ろう
  5. AIを使ってカスハラ対策!
  6. カスハラ対策はスタッフと来訪者の両者を守る取り組み
自治体でも広がるカスハラ対策とは?実施すべき有効な対策

住民などの対応をする場面で、カスタマーハラスメントに直面した経験がある方は、多いのではないでしょうか。
対応を誤れば要求や暴言が過剰になり、スタッフの健康や安全が危うくなったり、管理者責任を問われたりする可能性があります。多くの人が気持ちよくコミュニケーションができる空間を作っていくために、対策を怠らないよう心がけたいところです。
 
本記事では、カスハラ行為の定義や厚生労働省の方針、具体的な防止策を解説したうえで、マニュアル作成や研修、迷惑行動への初動対応などを紹介し、安心して対応ができる方法を整理します。地域を元気にするため、明確な対策でリスクを減らしましょう。



カスハラ(カスタマーハラスメント)とは

自治体でも広がるカスハラ対策とは?実施すべき有効な対策

カスハラ(カスタマーハラスメント)は、顧客や取引先が上位の立場を利用して不当な要求を通そうとする行為です。従業員にとってはカスハラが大きなストレスとなり、窓口業務の運営にもリスクをもたらします。近年ではSNSなどを通じた拡散が急増し、自治体の対応が大きく損なわれるリスクもはらんでいます。しっかりした対策を用意し、カスハラの防止と適切に対応できる体制を整備する取り組みが求められています。


厚生労働省によるカスハラの定義

厚生労働省によるとカスタマーハラスメントは、次に該当するものだとされています。

顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの

要求の内容が妥当性を欠く例として、提供する商品やサービスに瑕疵(かし)や過失が認められない場合や、要求内容が、企業の提供する商品やサービスと関係ない場合を挙げています。また、要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当な言動の例として、身体的攻撃はもちろん、脅迫・中傷・名誉毀損・侮辱・暴言・差別といった精神的攻撃、執拗な言動、従業員個人への攻撃や要求などが挙げられています。


心当たりはありますか?カスハラの例

カスハラへの対応を考えるうえで、具体的な行為を把握しておくと対策を立てやすいです。
 
主な例として、次のような行為が該当する可能性があります。
・「お前の対応が気に入らない。月末までに謝罪しろ」と強要しようとする
・「SNSに投稿して拡散してやるからな」と脅す
・「上司や本部を呼べ」と居座る
 
カスハラに該当するのは対面での行為だけではありません。次のような行為もカスハラに該当する可能性があります。
・数十回にわたり同じ情報公開請求を行う
・執拗に電話して不当な要求を行い、業務を妨げる



なぜ今、カスハラ対策をすべきなのか?

自治体でも広がるカスハラ対策とは?実施すべき有効な対策

クレームがエスカレートする迷惑行為が社会全体で増加し、対応に時間や労働力を多く割かなければならない状況が頻発するようになりました。放置すれば自治体や企業の経営にも影響が及び、スタッフのモチベーション低下を引き起こすと考えられます。カスハラ対策が未整備だと、余計なトラブルが続発する可能性が高くなります。まずはカスハラ対策がなぜ必要なのかをよく理解し、スタッフだけでなく、自治体の管理職や首長にもしっかり理解してもらいましょう。


離職率増加や生産性低下につながる

カスハラを放置すると、精神的ダメージを負った従業員の離職につながります。スタッフが不当要求や暴言を繰り返し受けることで、心身の健康リスクが高まり、業務効率も著しく低下するでしょう。周囲の人々も「同じ被害に遭うかもしれない」という不安を抱え、組織全体の雰囲気が悪化する事例も珍しくありません。
 
また、カスハラに対応するスタッフを周囲が見て「あの従業員は対応がうまくない」「相手を怒らせている」と、スタッフの資質を疑われかねない状態に、スタッフ本人が更なるプレッシャーを感じてしまい、悪いサイクルに陥ってしまいます。


対策を怠ると法的責任を問われる可能性がある

カスハラを軽視して放置すると、管理者が安全配慮義務に違反する可能性があります。スタッフが被害を受け、心身のトラブルを訴えた場合、スタッフを雇用している自治体や企業が損害賠償を請求されるかもしれません。
 
例えば労働契約法5条では、企業はスタッフに対して生命・身体などの安全を確保しつつ労働できるように必要な配慮をする安全配慮義務を負うと定めています。この法律に違反していると判断された場合、想像以上の損害賠償請求を受ける可能性があります。またそれがニュースで報道されたりすることで、自治体としての信用を大きく損なう状況に陥るかもしれません。


カスハラは職場で直面するハラスメント第1位!

厚生労働省が公表した「職場のハラスメントに関する実態調査 結果概要」によると、職場におけるハラスメントであるパワハラ、セクハラ、妊娠・出産・育児休業等ハラスメント、介護休業等ハラスメント、顧客等からの著しい迷惑行為、就活等セクハラの相談件数は、いずれも増加傾向にあります。「顧客等からの著しい迷惑行為」つまりカスハラに関する相談を受けた企業の割合は、令和2年度の19.5%から令和5年度は27.9%まで増えています。
 
また、過去3年間でカスハラの経験をしたと回答した企業は86.8%に上り、他のハラスメントの中で最も高い結果となっています。いまやカスハラは、職場において最も遭遇する確率が高い主要なハラスメントとなっているのです。

(参考)厚生労働省:職場のハラスメントに関する実態調査 結果概要



知っておくと安心!カスハラ対策に関連する国の方針

近年は時短ハラスメントやマタハラなど、さまざまなハラスメントが社会問題として取り上げられています。カスハラも例外ではなく、厚生労働省が指針を示すなど、国を挙げて対策を推進している状況です。カスハラ対策を策定する第一歩として、国が発表している指針などをしっかり理解しましょう。


厚生労働省の指針(令和2年厚生労働省告示第5号)

正式名称「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」です。この指針は、職場で起きる優越的な関係を背景とした言動に関し、事業主が雇用管理上講ずべき措置をまとめたものです。
 
指針では、「事業主が他の事業主の雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為に関し行うことが望ましい取組の内容」が示されています。具体的には「相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」「被害者への配慮のための取組」「他の事業主が雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為による被害を防止するための取組」を行うように示しています。
 
(参考)事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)


カスタマーハラスメント対策企業マニュアル

厚生労働省は、企業がカスハラへの対応を具体的かつ実効性のあるものとするため、対策マニュアルを公開しています。ハラスメントの定義や従業員への注意喚起の方法、相談窓口の整備手順、危険な言動の見極め方などが解説されており、より具体的な内容となっています。
 
(参考)カスタマーハラスメント対策企業マニュアル



カスハラ対策の方法と事例を知ろう

自治体でも広がるカスハラ対策とは?実施すべき有効な対策

どのような事業でも、カスハラを受けるリスクはゼロではありません。クレーマーとのトラブルを個人の裁量で抱え込むと、スタッフの負担が大きくなります。柔軟な対応を実現するには複数人で状況を確認する体制が鍵となります。具体例を参考に、問題発生時の対応方法を見直していきましょう。


カスハラを許さない立場を明確にする

最も望ましいのは、カスハラを未然に防止し、起こさせないことです。顧客が不当な言動を繰り返すケースでは、「この自治体や会社はカスハラを許さない」という姿勢をはっきり示すと抑止力が高まります。従業員の安全確保につながり、自治体としてのポリシーを外部に周知する効果も大きいです。
 
具体的にはチラシやポスター、サイトへの掲載などで「暴言や脅迫行為を認めない」と表明する事例があります。明確な立場を公にすることで迷惑行為を未然に防ぎ、従業員が安心して働ける環境を整えやすくなります。また来訪者に対する周知だけでなく、組織内でもスタッフに対してカスハラを許さず毅然と対応するよう、周知することも大切です。


スタッフ向けの対応マニュアルを整備する

窓口対応を担当する従業員がカスハラ被害を受けたとき、迅速に相談できる窓口を設定しておくと問題の早期解決が期待できます。背後にある問題行為の定義を徹底し、カスハラと思われるケースにも対応者が落ち着いて判断できるよう研修が必要です。
 
明らかな暴言や不当要求だけではなく、社内規定で判断が難しい場合の報告ルートも定めておくと安心です。社内のどの部署に相談すればいいかを明確化し、情報共有をスムーズにすることで従業員の負担を軽減させられます。
 
近年は、スタッフに怒りを抑制するアンガーマネジメント研修を受けさせる事例も見られます。怒りを制御できない人の視点でマネジメント方法を学ぶことで、相手をエスカレートさせない方法を学ぶのです。


チームで共有する体制をつくる

深刻なカスハラに遭遇した際、一人で抱え込むと状況がさらに悪化する恐れがあります。役割分担を明確にし、管理者や本部、必要に応じて弁護士などに連絡する基準をあらかじめ設定すると、安全面のリスクを減らせます。
 
警察への連絡が必要なケースや、外部センターと連携する場合のフローを決めておくことも重要です。組織全体で発生した情報を共有し、素早い報告と適切な対応が取れる仕組みを整えておくことで、被害拡大を食い止めやすくなります。



AIを使ってカスハラ対策!

突然の暴言や恫喝からスタッフを守るため、初期段階で状況を把握できる仕組みをAIに担わせる事例が注目されています。AIがやりとりの内容を解析してカスハラに該当する言動を警告表示したり、チャットボット等で感情をエスカレートさせない窓口を経由させたりするなどすれば、従業員の負担を減らし、現場の混乱を防ぎやすくなります。


カスハラに該当する言動や行動の自動検知

AIによる管理システムを導入すれば、特定のキーワードや行動を解析し、事例に該当するリスクがあるかを素早く確認できます。複数のパターンを想定してマニュアルを作成しておけば、カスハラの可能性に応じた対応を自動的に提案してくれます。従業員が単独で対応していると見落としてしまうような要注意行動も、システムが常時監視していれば早期に認識し、予防するための行動を取ることができます。


冷静なやりとりを促すチャットボット

カスハラが想定される場面では、AIチャットボットを使った初期対応が効果的です。AIの自動返信がクレーマーを落ち着かせたり、企業側の従業員が深刻な暴言に直接さらされるケースを減らせるなどの利点があります。事前にマニュアル化した対応方針を搭載したチャットボットが冷静なやりとりを継続し、感情的な要求を少しずつやわらげ、適切なタイミングで有人対応に引き渡すことができます。



カスハラ対策はスタッフと来訪者の両者を守る取り組み

上位の立場を悪用し、スタッフに激しい暴言や不当な要求を行うケースは深刻な被害をもたらします。社会的な問題として認知されつつある今、適切なカスハラ対策を企画し、会社の安全対策や労働環境を整備することが不可欠でしょう。従業員を守るだけでなく、利用者側にも正しい情報を提供し、無用なトラブルを未然に防止することで、お互いを守ることにもつながるはずです。
 
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