意外と知られていない!?地産地消の種類と取り組み方法-実践編(後編)

地域創生において地産地消は非常に重要なキーワードです。食品だけでなくさまざまな種類の地産地消があり、総合的に取り組むことで高い経済効果や防災効果を期待できます。
「理論編(前編)」では、地産地消の種類や効果、国の政策を詳しくご紹介しました。本記事では「実践編(後編)」として、自分の地域の状況を調べる方法、具体的な取り組み方法をご紹介します。
意外と知られていない!?地産地消の種類と取り組み方法―理論編(前編) ※要リンク
調べてみよう!自分の地域の状況

自分たちの地域でどのように地産地消が実施され、地域経済が循環しているかを把握することは重要です。専用のツールや分析システムを活用すれば、現在の地域経済の流れや農業・福祉関連事業、観光産業などの活性状況も簡単に確認できます。地域独自の強みや課題を見つけ、今後の取り組みに生かすことができます。
地域経済循環分析ツール(環境省)
環境省が提供する地域経済循環分析ツールは、自分の自治体でどの程度の地域経済循環が行われているのか、外部にお金が流出している場合はどの程度なのかを把握できる便利な無償ツールです。多くの自治体の担当者が、現状把握のための第一歩として利用しています。
システムを利用する際はダウンロードしたアプリで自治体を選んでボタンを押すだけで、数十枚の分析結果をパワーポイントで自動生成してくれます。また現状把握のツール以外にも、これまでの推移の分析や、各種政策を実行した場合の経済への波及効果も自動で作成してくれるツールも用意されています。
(参考)環境省:地域経済循環分析
RESAS 地域経済分析システム(内閣府)
RESAS(地域経済分析システム)は、地域経済データや産業構造、人口動態、雇用の状況、観光客の動向などをまとめて「見える化」できる無償ツールです。さまざまなミニアプリが実装されており「マーケティング」「観光」「人口」「産業構造」「地域経済循環」「農林水産業」「医療介護」などの切り口から地域の状況を分析できます。
このツールの特徴は、推計ではなく実測データが多く活用されており信頼性が非常に高い点です。たとえば生産された産品がどこでどれだけ消費されているのか知りたい場合、全国のスーパーやドラッグストアのPOSレジシステムのデータをもとに、生産物の何割がどの自治体で消費されたのか表示してくれます。また、他の自治体との比較も可能です。近隣自治体やベンチマークしている他の自治体を指定し、数値を比較することもできます。
(参考)内閣府:RESAS 地域経済分析システム
REPOS 再生可能エネルギー情報提供システム(環境省)
REPOS(再生可能エネルギー情報提供システム)は、地域単位でどのような再生可能エネルギーの利用状況があるか、導入可能なエネルギー資源や発電施設などの情報を一覧で確認できます。地域のエネルギー自立や電力地産地消の推進に役立つデータや地図、各種レポートが利用できるため、政策立案や新事業の開発に強い味方となります。
たとえば太陽光発電を推進したい場合、地域内のどのエリアでポテンシャルが高いのかマップで色分けして表示したり、実際に発電した場合にどれだけの電力を生み出せるのか自動計算したりできます。他にも地域の水資源マップをつくることもでき、地下水が多いエリアを表示する機能もあります。
(参考)環境省:REPOS 再生可能エネルギー情報提供システム
まずはここから!押さえておきたい地産地消の取り組み
これから始める地産地消の取り組みという観点では、生産者や流通業者、仲卸業者、小売店、飲食店など地元全体で協力体制をつくり、新鮮な農産物を市民へ届けることから着手するのが効果的です。市の公式サイトやさまざまな情報発信などを行い、取り組みを広く市民へ周知・参加できる環境を整えることが地域活性にもつながります。
農産物直売所の推進
農産物直売所の設置は民間事業者が行うケースが多いですが、自治体にもできることはたくさんあります。農家や販売者への補助金や施設整備費の一部支援、空き店舗や遊休地の提供、マーケティングや販促の支援など、行政が旗振り役となれる場面は多岐にわたります。
また、公式ホームページや観光案内所、学校などで直売所の情報発信、アクセスマップの作成と配布、イベント開催支援など、地域全体で愛される「地元の顔」としての直売所づくりを促進します。販路拡大を図るため、企業や団体、給食施設との連携を地域農業振興の柱とすることも重要です。
他には、市民農園も昔から親しまれてきました。市民農園とは、自治体や事業者が農園で自ら育てた作物を自ら収穫して、自宅で食べたり、隣人にお裾分けしたりして、より身近な範囲での地産地消を行う取り組みです。利用者は農家ではなく会社員などで、リフレッシュ目的で利用する人も多いです。
道の駅の開設・活性化
地産地消の推進において、道の駅は大きな役割を担っています。たとえば地元農産物の直売コーナーを強化し、新鮮な野菜や加工品を来場者が手にしやすい展示方法を工夫します。また地元産品を使った生産者との共同イベント、観光情報の発信機能を高めるなど、地域資源を活用した多様なサービスで交流人口の拡大に寄与できます。全国の道の駅で、個人や団体、観光客と農漁業者をつなぐ拠点として、地域の活性化に貢献するための取り組みが進められています。
地産地消の仕組みをつくる!これから広がる取り組み

これからの地産地消推進には、新鮮な農産物の提供や生産者・流通業者など多方面の協力体制が欠かせません。情報発信や公式ページで地域独自の取り組みを紹介し、消費者や観光客にも参加を促すことが、さらなる経済活性と交流人口増加につながります。地域の旬や安全・安心を守る仕組みを新たに構築していくことがカギとなります。
地域通貨の運用
地産地消を進めると、生産者と消費者との距離がぐっと近づきます。たとえば、地域通貨を導入することで、地元で稼いだお金が地元産品や地域サービスの消費に使われやすくなり、経済の循環効果が高まります。距離が近くなると、生産者は消費者から直接意見や要望を聞く機会が増え、提供する商品やサービスもより地域ニーズに即したものへシフトしやすくなります。消費者のリアルな声を受け取れるのは、生産者や地元事業者のモチベーション向上にもつながり、地域全体の事業発展が期待できます。
近年はDXが進み、地域通貨アプリを導入する自治体も増えています。地域通貨アプリで決済するとポイントが溜まったり、割引サービスを受けられたりといったインセンティブを用意することで利用が進みます。
官民共同出資によるまちづくり会社や地域新電力会社の設立
まちづくり会社や地域新電力会社の設立は、地産地消分野でとくに注目されています。地域新電力会社とは、地域のエネルギーを調達して地域住民や企業・自治体に供給してエネルギー地産地消を進める会社です。地域の農産物やサービス、再生可能エネルギーを地元企業や自治体が主体となって開発・供給を進め、地域内での使用を促進します。
地産地消を促す仕組みとしてこのような会社を活用することで、食費や水光熱費などが地域外へ流出せず、地域経済循環が進みます。災害時も自立的に電力を確保しやすくなるため、防災・安心の観点でもメリットが大きいです。また地域の事業者との連携による地域貢献事業の拡大や、収益の一部を地域福祉や産業活動・教育イベントなどにも活用でき、まち全体の活性化につながります。
まちづくり会社や地域新電力会社は、官民の共同出資により設立されることが多いです。官民協働の会社で同じ目標を掲げる会社をつくることで、自治体の方針を取り入れつつ、行政には手が届かないことを営利事業として継続的に実施できる特徴があります。
災害用井戸整備
地域における災害用井戸の整備は、非常時の安全・安心の確保に直結します。普段は地域外のダムや水道本管から水が供給されています。しかし災害時や断水時には、被害を最小限に抑えるため、地域ごとに井戸や給水設備を確保し、定期的に管理維持することが重要となります。また、こうした設備づくりは防災教育や地域福祉活動の一環としても効果的で、学校や福祉施設、観光施設とも連携し、幅広く住民の生活を支えます。公式ホームページなどでの案内や更新も大切にし、市民が安心して利用できる体制づくりを拡大していく必要があります。
まずは強みを生かして集客から始めよう
ここまでご紹介したような取り組みを行うためには、地産地消を求める住民を増やして地域内部の需要を高める取り組みが第一歩として必要になります。そのためには地域の強みを理解し、強みを伸ばす形で成功事例を積み重ねていくことが効果的です。強みを理解するためには、本記事でご紹介した各種ツールを活用してみてください。
地域住民が「地域の外のものより中のもの」を選んで買う消費行動が定着していけば、さまざまな分野での地産地消の取り組みも可能になるでしょう。そのとき必要になるのが情報発信です。サイネックスは情報メディア事業で、地域行政情報誌「わが街事典」 やシティプロモーションサイト「わが街ポータル」、デジタルサイネージ「わが町NAVI」を官民協働で実施しています。またDXサポート事業として地域通貨「わが街Pay」も運営しています。「これまでの地産地消から一歩進んで、総合的・戦略的に地産地消に取り組みたい」という方は、ぜひお問い合わせください。
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