地域の魅力を全国へ!マラソン大会誘致で広がる地域活性化の可能性
秋は気候がよく、スポーツや観光を楽しむのにぴったりの季節です。最近では、全国の自治体がマラソン大会を開催し、地域の魅力を伝える取り組みが広がっています。マラソン大会は、観光客の増加や地元経済の活性化、住民の健康づくりなど、さまざまな効果をもたらします。
また、「観光と健康を組み合わせた大会」や「地元の特産品を完走賞にしたイベント」など、地域ならではの工夫も人気です。走るだけでなく、地域の文化や自然を楽しめることが、参加者の満足度を高めています。
地域住民や企業が協力して運営することで、まち全体がひとつになり、新しいつながりや誇りも生まれます。こうした理由から、秋のイベントとしてマラソン大会を誘致・開催する自治体が増えています。
今回は、マラソン大会のイベント開催におけるポイントを紹介します。
なぜいま、各地でマラソン大会が増えているのか!?
市民ランナー増加のきっかけとなったのは、2007年から開催されている東京マラソンの成功であると言われています。健康志向の高まりはもちろん、費用面での手軽さ、目標・コース設定の自由度の高さ、ウェアのファッション性向上などもランナーの増加を後押しし、全国各地の大会増加を促しました。
マラソン大会の誘致は、自治体にとって経済・交流・健康・ブランド化の4つの効果をもたらします。大会期間中は宿泊や飲食などの消費が増えることで地域経済の活性化につながるうえ、全国から訪れるランナーとの交流で地域の知名度も向上します。
また、住民の健康意識が高まり、スポーツを楽しむ文化が根づくきっかけにもなります。さらに毎年の開催を重ねることで地域を代表する恒例イベントとなり、観光資源として定着していきます。
マラソン大会は、一過性ではなく持続的なまちづくりの起点となるのです。
大会期間中の来訪者増と観光プランで地域経済を活性化
経済面では大会期間中に宿泊施設、飲食店、交通機関、お土産店などの利用が増え、地域全体の消費が活発になります。参加者だけでなく、応援に訪れる家族や友人などの来訪者も多く、観光需要の拡大につながります。
とくに、観光地や温泉地では「観光とセットにした滞在型マラソン」が人気で、宿泊数の増加やリピーター獲得にも効果を発揮します。
地域の魅力発信とファンづくり
全国各地から集まるランナーや応援者との交流を通じて、地域の知名度が高まります。
大会の様子がSNSなどで拡散されることで、自治体のイメージアップや新たなファン層の形成にもつながります。地元特産品を完走賞に採用するなど、地域の魅力を直接体験できる仕掛けは、観光PRとしても高い効果を発揮します。
また、温泉や美味しい食事と美味しいお酒など、その土地ならではの楽しみもあり、地域の人との何気ない交流なども魅力の1つです。
世代を超えて楽しめるスポーツ参加で健康意識の向上
マラソン大会は住民の健康意識向上にも寄与します。大会をきっかけにランニングやウォーキングを始める人が増え、健康志向のまちづくりが進みます。地域ぐるみで「スポーツを楽しむ文化」を育むことが、持続的な地域活性の基盤となります。
また、高齢化に伴って医療費負担が大きくなっている現状においては、健康寿命が伸びれば社会保障コストも抑えられ、労働人口の維持にもつながるメリットがあります。
観光資源としてのブランド形成
毎年開催を重ねることで、マラソン大会自体が地域を象徴する恒例イベントへと成長します。長く続く大会は地域の誇りであり、ブランド価値そのものです。実際に、マラソン大会を誘致したことを契機に地域経済が活性化し、観光振興と健康づくりを両立させている自治体も少なくありません。
重要なのは、イベントを“一過性”で終わらせず、地域資源として育てる視点です。
マラソン大会を観光・産業・健康づくりの要素と組み合わせることで、地域が持続的に発展していく仕組みづくりが可能になります。
マラソン大会の運営で押さえるべきポイント
マラソン大会を成功させるには、「安全」「満足」「協働」の3要素が欠かせません。
医療体制や警備の整備で安心して走れる環境を整えたうえで、観光名所や特産品を取り入れたコース設計で地域の魅力を発信します。給水所や記念品などの細かな配慮も、参加者の満足度を高める重要なポイントです。
商工会や住民との協働、SNS発信によって大会の継続開催と地域活性化を実現します。
とくに自治体が主導する大会では、地元住民や関係機関と連携しながら、安心して楽しめる環境づくりを行うことが重要です。
警備と交通整理で安心の大会運営
マラソン大会の運営において、安全管理体制の整備は最優先事項です。
大会当日は多くのランナーや観客が集まるため、警備員の配置や交通整理に加え、医療スタッフの常駐や救護ステーションの設置が欠かせません。AED(自動体外式除細動器)の設置や救急搬送ルートの確保など、緊急時の対応を事前に明確にしておくことで、参加者の安心感を高めることができます。
とくに高齢者や初心者ランナーも多い地域大会では、安全面への丁寧な配慮が信頼の土台となります。
また、開催日程の調整も重要です。他の地域イベントや行事と重ならないか、季節や気候条件が走行に適しているかを慎重に確認することで、参加者が快適に楽しめる環境を整えることができます。
安全でスムーズな大会運営こそが、地域に愛されるマラソン大会の第一歩です。
地域の魅力を取り入れたコース設計
コース設計の工夫も大会の魅力を左右します。交通規制の影響を最小限に抑えながら、地域の観光名所や特産品エリアを通過するルートを設定することで、「走って楽しい・見て楽しい」大会になります。
地元の名所や絶景ポイントを取り入れれば、SNS映えする写真が投稿され、自然と地域のPRにもつながります。
参加者目線の運営で満足度向上とリピーターを獲得
参加者目線の運営は、マラソン大会の満足度を大きく左右します。給水所の適切な配置や荷物預かりサービス、十分な数のトイレの設置など、基本的な施設の整備はもちろん、完走記念品や地元特産品の提供など、細やかな配慮が重要です。こうした工夫により、参加者は「また来たい」と感じ、リピーターの増加につながります。
また、エイドステーションでの応援や地域ならではの体験を組み合わせることで、走る楽しさだけでなく地域の魅力も同時に伝えることができます。これにより、参加者と地域双方にとって価値ある大会運営が実現します。
地元企業や団体との協力が大事
地元の企業や団体との協力は、マラソン大会を成功させるためにとても重要です。
企業の協賛によって運営費や記念品をまかなえるだけでなく、物品提供やサービスのサポートを通じて大会の質も高められます。商工会や観光協会などとも連携することで、飲食や物販ブースの設置が可能になり、地域経済の活性化にもつながります。
さらに住民ボランティアの参加は大会の運営を支えるだけでなく、地域全体の一体感や誇りを育みます。
こうして地元の力を集めることで、参加者に地域の魅力を伝えながら、長く続く大会をつくることができます。
SNSや広報戦略を活用
SNSや広報戦略をうまく活用することは、マラソン大会を盛り上げるうえで非常に重要です。
開催前には、参加募集やコース情報、大会の見どころをSNSや地域メディアで発信して、より多くのランナーに情報を届けます。当日や終了後には、写真や動画、参加者の声を投稿して大会の雰囲気を伝えることで、話題を広げ、次回の参加意欲を高められます。
また、地域の観光名所や特産品を紹介すれば、地域のPR効果もアップできます。
こうした情報発信により、参加者を増やすと同時に地域の魅力も効果的に伝えることができます。
開催にかかる主な費用と予算の考え方
マラソン大会の開催には、現実的な資金計画と開催規模が大切です。
開催に応じてさまざまな費用が発生します。主な内訳としては、会場設営費・警備費・救護費・人件費・保険料・広報費などが挙げられます。
とくに安全対策や交通整理に関わる費用は全体の中でも大きな割合を占めるため、事前の見積もりが大切です。
マラソン大会の規模
言わずもがなですが、マラソン大会の規模によって費用は大きく異なり、500人規模で数百万~数千万円、2,000人規模で数千万円以上、1万人規模では億単位が一般的な目安とされています。
とくに大会運営経験の少ない自治体や団体では、初年度に費用がかさむ傾向があります。ランナーの参加費用にも大きく影響する部分ですので、段階的なスケールアップを想定した計画が現実的です。
資金調達方法
資金調達の方法としては、スポンサー企業からの協賛金が大きな柱になります。地元企業とのタイアップにより、景品提供やブース出展など双方にメリットのある協働が可能です。
また、地元金融機関との連携も有効で、地域活性化の観点から支援を受けられるケースもあります。
さらに、ふるさと納税型クラウドファンディングを活用することで、全国のランナーや地域応援者から寄付を募る仕組みも広がっています。
コスト削減の工夫
一方で、コスト削減の工夫も重要です。地元住民のボランティア参加を促し、会場設営や運営補助を担ってもらうほか、既存の公園や運動施設を活用すれば、設備投資を抑えられます。
また、エントリー受付や記録管理をデジタル化することで、人件費と時間の両面で効率化が可能です。
マラソン大会の費用は「支出」ではなく、地域への“投資”と捉える視点が求められます。大会による経済波及効果や観光誘致、地域ブランドの形成は、長期的に見れば大きなリターンをもたらします。
短期的な収支だけで判断せず、地域の未来を育てる投資として、計画的かつ柔軟な資金運用を行うことが成功への鍵となります。
成功事例紹介:地域特性を活かした3つのケース
マラソン大会の成功には、地域の個性をいかに活かすかが重要です。
ここでは、実際に誘致から定着へとつなげた3つの自治体事例を紹介します。いずれも地域資源の魅力を発信し、関係者が一体となって運営することで、持続的な大会へと成長しています。
事例①:地元特産品を活かした「ご当地マラソン」
地元の特産果実をテーマにした「〇〇フルーツマラソン」といった特長的なマラソン大会があります。大会名称の分かりやすさや親しみやすさもさることながら、参加賞にはフルーツや加工品を用意し、「完走したら〇〇がもらえる」とSNSで話題に。地域の直売所や飲食店の利用が増え、地元商店の売上も向上しました。観光目的で訪れたランナーが翌年もリピーターとして再訪するなど、マラソンをきっかけに地域のファン層拡大につながっています。
たとえば、山形県東根市が開催しているさくらんぼマラソン大会では、各部門3位までの入賞者に、賞状・メダル・副賞(さくらんぼ)を授与。ハーフマラソン男女別総合優勝者にはホノルルマラソン招待派遣ほか賞品を贈呈。参加賞は、さくらんぼ「佐藤錦」、山形県産米おにぎり、大会記念Tシャツ、冷凍フルーツ(予定)となっています。
果樹王国ひがしね さくらんぼマラソン大会 | 東根市 「ようこそ果樹王国ひがしねへ」
事例②:観光と組み合わせた「宿泊付きマラソン大会」
観光地として知られている自治体では、観光協会と連携し、宿泊プラン付きのエントリー制度を導入。「走る+泊まる」を組み合わせることで、滞在時間を延ばし、飲食や観光施設の利用を促進しました。大会前後には温泉や観光ツアーを楽しむ参加者も多く、地域経済全体に波及効果をもたらしています。宿泊業界や飲食業界との協働により、地域全体で大会を支える仕組みができ、イベントを通じた観光誘致の成功モデルとなりました。
たとえば、ふくい桜マラソンでは、出走権付き宿泊枠、出走権付き/送迎バス付き宿泊プランなどを用意しています。
ふくい桜マラソン2026を開催します!(福井市公式ホームページ)
事例③:企業協賛による持続可能な大会運営
地元企業や金融機関から協賛を募り、運営費の一部を賄う仕組みを構築している大会もあります。例えば、SDGsの理念に基づきサステナブルな運営に力を入れている「京都マラソン」(京都府京都市)や、地元の文化財を魅力的に活用し、社会的取り組みにも積極的な「世界遺産姫路城マラソン」(兵庫県姫路市)など、大会趣旨に企業側が共感できるメッセージ性の高さや魅力があれば、スポンサーやパートナーを集めやすくなります。
大会側も企業ロゴをコースバナーや参加Tシャツに掲載することで宣伝効果を高めるなど、企業の後押しをする必要があります。また企業の協力が物品提供であれば、購入費用を抑えながら高品質な大会運営を実現することができます。こうした官民連携の体制により、地域全体で支える「持続可能な大会モデル」として地域に定着することは、ブランド確立につながるため、イベントの価値が向上します。
京都市:京都マラソン2026
「世界遺産姫路城マラソン2026」ランナー及びボランティア募集、応援協賛 | 姫路市
これらの事例に共通するのは、地域資源の活用、関係者の連携、継続的な運営の3点です。
単にイベントを開催するだけでなく、地域の文化や産業、観光と融合させることで、マラソン大会が「地域の風物詩」として根づいています。マラソンを通じて地域の魅力を全国に発信し、人と人をつなぐ循環を生み出すことこそ、持続的な地域活性化の鍵といえるでしょう。
持続的な地域活性のために
マラソン大会は単なるスポーツイベントの枠を超え、地域の魅力を発信し続けるためのブランドづくりの起点となっています。ランナーや観光客が訪れることで経済的な効果が生まれるだけでなく、地元の人々が誇りをもち、地域への愛着を深めるきっかけにもなります。
成功の鍵は、自治体・住民・企業が一体となることです。行政が方針を打ち出し、地域企業が協賛や運営を支え、住民がボランティアとして関わることで、「地域全体でつくる大会」としての魅力が高まります。この協力体制が、継続的な開催と地域活性の両立を可能にします。
さらに、開催をスムーズに進めるためには、誘致や運営のノウハウをもつ専門パートナーの存在も重要です。経験豊富な支援企業と連携することで、費用管理や安全対策、広報活動などを効率的に行うことができます。
マラソン大会を通じて地域の価値を高め、持続的なまちづくりへとつなげていくことができます。
その第一歩が、自治体の「誘致と運営への一歩」です。



