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地域活性化につながる廃校の活用方法とは?検討するときのポイントや成功事例を紹介

目次
  1. 廃校の活用状況
  2. 自治体の視点からみる廃校活用のメリット
  3. 廃校の活用を成功させるためのポイント
  4. 廃校のユニークな活用事例6選
  5. 廃校活用は官民連携で取り組みましょう
地域活性化につながる廃校の活用方法とは?検討するときのポイントや成功事例を紹介

人口減少や少子化が進む日本において、学校の統廃合や廃止をせざるを得ない地域が増えていることから、廃校の増加が続いています。近年では、毎年全国で約500校が廃校に至っていることから、有効活用する動きは全国で広がっており、雇用創出や地域活性化のためにも重要な取り組みとなります。

前回は学校統廃合における合意形成について解説しました。
今回は、特徴的で魅力ある廃校活用の事例をご紹介します。

関連記事:学校の統廃合に必要なのは合意形成! メリットや進めるときの注意点も紹介





廃校の活用状況

文部科学省の廃校施設活用状況実態調査によると、令和6年5月1日現在、廃校となった7,612校のうち、5,661校(74.4%)が公共施設や体験交流施設、福祉施設などさまざまな用途で活用されています。

廃校施設活用状況実態調査、余裕教室活用状況実態調査について:文部科学省

また、近年では自治体と民間事業者が連携した活用が注目されています。創業支援のためのオフィスや地元特産品の加工会社の工場として廃校施設が活用されるなど、地域資源を活かし、地域経済の活性化につながるような活用も増えてきています。

文部科学省が平成22年に立ち上げた「みんなの廃校プロジェクト」では、未活用の廃校施設の情報を集約して一覧で公表し、マッチングイベントを開催しています。

~未来につなごう~「みんなの廃校」プロジェクト :文部科学省





自治体の視点からみる廃校活用のメリット

廃校活用は、事業者だけでなく自治体にとっても多くのメリットがあります。
廃校活用は社会問題として注目度が高く、近年ではユニークな活用事例がメディアやSNSで紹介される機会も増えています。
話題性のある施設として取り上げられることで、地域の認知度向上や交流人口の増加が見込まれ、地域活性化のきっかけとなります。
また、宿泊施設や観光施設、文化・芸術拠点として運営されることで新たな雇用が生まれ、若者を中心とした人口流出の抑制にもつながります。

さらに、廃校は解体にも多額の費用がかかり、維持管理だけでも年間約200万円が必要とされますが、民間活用に転換することで管理コストを削減でき、加えて税収の発生により地方財政の安定化にも寄与します。





廃校の活用を成功させるためのポイント

地域活性化につながる廃校の活用方法とは?検討するときのポイントや成功事例を紹介

廃校を効果的かつ持続的に活用するためには、官民が連携し、地域住民の理解を得ながら取り組むことが不可欠です。
民間事業者の技術や発想を活かすため、サウンディング型市場調査(事業者に直接ヒアリングを行い市場調査する手法)を実施し、廃校の立地条件や施設スペック、利用条件を公開した上で、企業やNPOなどから幅広いアイデアを収集することが重要です。

さらに、公募型プロポーザル方式を採用することで、価格だけでなく企画力や実績を総合的に評価し、地域特性に適した事業者を選定できます。加えて、地域住民や保護者、自治体関係者で構成される検討委員会を設置し、廃校の将来像について丁寧に議論することで、住民の不安や懸念を解消し、長期的に地域に根付いた活用へとつなげることができます。





廃校のユニークな活用事例6選

地域活性化につながる廃校の活用方法とは?検討するときのポイントや成功事例を紹介

廃校が増え続けている中、全国各地でユニークな廃校活用が行われています。活用による効果や、進める上での課題・困ったことなどもあわせて紹介します。



静岡県島田市

静岡県島田市の「旧湯日小学校」は、2020年から廃校活用について協議を開始し、文部科学省「みんなの廃校プロジェクト」のホームページに廃校情報を掲載、同年に公募型プロポーザルを実施し、2022年にグランピング施設としてオープンしました。
島田市にとっては、雇用の創出、地元食材の活用、災害時避難所の確保などさまざまなメリットが挙げられます。一方、事業者にとっても廃校活用によるイニシャルコストの削減になり、地元住民と施設内でマルシェを開催するなど良好な関係を築いています。

事業開始前には、廃校敷地周辺の茶畑の環境維持に懸念が示されていました。
しかし、宿泊客からの苦情が寄せられた場合の対応について宿泊客に事前説明をしっかり行い、理解してもらうことで、オープン以来大きな問題には発展していないようです。

地域の事情を把握し、環境を損なうことがないように配慮した事業を行うことで、住民と訪問者の双方から理解を得られている点が成功のポイントと言えるでしょう。

第16回旧小学校跡地から、地域を結ぶポートへ|静岡県公式ホームページ



京都府福知山市

京都府福知山市の「旧中六人部小学校」は、2018年に閉校となり、2020年にイチゴ農園「THE 610 BASE」をオープンしました。現在ではイチゴ農園に加え、カフェやスケボーランプを運営したり、地元で栽培された大麦を使ったクラフトビールを醸造したりと幅広く活用されています。
福知山市としては、民間活用によって魅力的な施設運営が行われ、シティプロモーションにつながることに加え、施設の維持管理費の削減と歳入の増加を図ることができるといったメリットを見込んでいます。

進めるにあたり、民間事業者のスケジュールと行政のスピード感の差異が課題になりました。
また、地域住民の理解が得られるかという不安、新たな用途に沿った建築条件や消防設備要件への適合、老朽化した設備の更新費用など、課題は多岐にわたりました。

こうした課題に前向きに取り組む事業者の姿勢と、それに対する住民の理解・応援によって成功につながった事例であり、自治体は連携する事業者選定も重要になるでしょう。

廃校Re活用プロジェクト – 福知山市オフィシャルホームページ



高知県室戸市

高知県室戸市の「旧椎名小学校」は、よく取り上げられる廃校活用の成功事例の1つです。
2015年に地域住民、民間団体、県および市職員を委員として検討委員会を立ち上げ、施設の有効活用について協議・検討し、2018年に水族館として施設が完成しました。
「廃校×水族館」という斬新なアイデアでありながら、学校の雰囲気も残した懐かしさも感じられる施設にすることで、高知県内でも有数の集客施設となり、交流人口が拡大しただけでなく、地域住民も親しみを感じて足を伸ばす施設になっています。

水族館としての活用を図る上で、集客施設として安定的な運営ができるのかが大きな課題でしたが、手洗い場を利用したタッチプール、屋外プールを改装した大水槽など、ユニークなアイデアによるさまざまな展示やイベントの実施により、当初の目標を大きく超える集客数を実現し、入館収入、グッズ販売収入による運営を実現できています。

民間のアイデアと地域のニーズをうまく取り入れたことが成功のポイントと考えられます。

むろと廃校水族館 – 室戸市 ホームページ



東京都千代田区

東京都千代田区の「旧千代田区立練成中学校」は2005年に廃校となり、2008年にアートセンター「アーツ千代田3331」として運営が開始されました。
千代田区はアート活動の拠点にしようという意向でコンペが行われ、30社ほどの中から選ばれた運営団体(現在は合同会社)が運営しています。事業の制約として、文化芸術活動をする人たちをここに集積させる、という条件があったことから、テナントを3つに分類して運営していました。

1つ目は文化芸術活動をしながら、ほとんど収益性が望めないもの、2つ目は、ある種の営業活動としてアート、デザイン、文化に関する事業を行いながら収益を得て、なおかつ文化芸術活動を行うもの、3つ目は、主に普通の企業活動を行っているもの、とし、それぞれ区分に応じた賃料設定を行っていました。
都心部において、アート活動を支えつつ不動産管理としての事業を行っているユニークな事例です。

現在は、運営団体との契約が満了し、閉館。
改修工事を経て、今後も「新ちよだアートスクエア基本構想」に基づき、文化芸術振興施策を推進していく拠点施設として役割を果たしていく予定です。

千代田区ホームページ – 新ちよだアートスクエア基本構想



千葉県安房郡鋸南町

千葉県安房郡鋸南町の「町立保田小学校」は、2014年に廃校となり、2015年に「都市交流施設・道の駅 保田小学校」として生まれ変わりました。
「道の駅 保田小学校」の体育館はマルシェに、校舎棟には観光案内所や地域の飲食店が並び、町の農水産物や特産品、海や山など豊かな自然を発信する場所となっています。音楽室では楽器やダンスの練習、家庭科室では加工品の試作を行えるなど、多目的に使用できるスペースが設置され、町内外の人から利用されています。

昭和43年に建てられた校舎の姿を残しつつ、リノベーションされた施設には、災害時の避難所や炊き出しができる機能も兼ね備えています。
また、保田小学校は宿泊もできる小学校として、小学校時代の懐かしさを感じながら過ごせる施設にもなっており、テラスには温浴施設も設置されています。
道の駅、宿泊施設、温浴施設など小学校の設備を最大限に活用し、外部からも人が集まる場所として再生した面白い事例です。

都市交流施設・道の駅「保田小学校」 – 観光情報 – 鋸南町ホームページ(まちづくり推進室)



茨城県高萩市

茨城県高萩市の「旧君田小中学校」は、2016年に廃校となり、2018年にドローン操縦士養成スクールとして活用が開始されました。スクールでは、校舎を座学会場に、体育館や運動場を屋内外の飛行場として活用するとともに、将来的にはAIやIoT(モノとインターネット)の技術を応用したドローン活用フィールドの研究開発を行う計画です。

小中学校施設としての役割を踏襲したスクール事業であったことや、校舎のほか、体育館や運動場も活用する事業であり、学校施設全体の有効活用を図ることが見込まれること、また、地域住民の雇用創出にも貢献する事業であったことが成功の理由とされており、今後の動向も注目すべき事例です。

イベントカレンダー | 高萩市公式ホームページ





廃校活用は官民連携で取り組みましょう

地域活性化につながる廃校の活用方法とは?検討するときのポイントや成功事例を紹介

学校の統廃合とともに増える廃校を活用することは、地域の重要な課題です。うまく活用することは容易ではありませんが、民間企業や地域住民と協力して取り組むことで、それぞれにメリットがあり、地域活性化につながることも期待できます。

廃校活用を検討する際、どのような事業者と連携するのかも重要になるため、まずは地域の特徴やニーズを把握することから始めてみてはいかがでしょうか。

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