サイネックス・マガジン

地方活性化に必須!日本全国のシビックプライドの醸成取り組み事例を紹介

目次
  1. シビックプライドとは
  2. シビックプライドの醸成がもたらす効果とメリット
  3. シビックプライドの醸成方法
  4. 全国の自治体によるシビックプライドの取り組み事例
  5. まとめ

今回は、全国の自治体によるシビックプライドの醸成の取り組み事例を集めました。シビックプライドの醸成は、近年注目を集めており、地域活性化に不可欠な要素とされています。地域活性化や地域創生に関わる人の参考になるはずですので、ぜひご自身が携わっている自治体に置き換えて、「自分たちはどんな取り組みをやっているだろうか」「やるとしたら、どのような取り組みが適しているだろうか」と考えるきっかけにしてください。

シビックプライドとは

シビックプライドの意味は、「地域や自治体に対する住民の誇り」です。似た言葉に地元愛や郷土愛がありますが、意味は異なります。地元愛や郷土愛は、生まれ育った故郷や文化に対する愛情のことです。シビックプライドは、特定の地域に愛着をもち、住民として地域の発展に貢献しようという意識をあらわします。
 
シビックプライドの起源は19世紀イギリスまでさかのぼりますが、日本で認知され始めたのは最近のことです。少子高齢化や東京一極集中に伴う人口減少対策の重要性の高まりと共に、自治体関係者を中心に認識されるようになりました。
 
シティプロモーションもシビックプライドと近いシーンで使われる言葉ですが、シビックプライドは地域内の住民の意識を指し、シティプロモーションは地域外への働きかけを指します。



シビックプライドの醸成がもたらす効果とメリット

シビックプライドの醸成がもたらすメリットは多岐にわたります。一般にシビックプライドの高さと定住率は比例関係にあるといわれます。そのため、シビックプライドを高めることは、他地域へ人が流出するのを抑えたり、移住者が定住したりすることに効果があります。
 
シビックプライドが高い人は「住みやすい」「この街は良いところだ」「子育てがしやすい」「風景が美しい」といった感情を抱いている人が多く、そこから評判が広まれば、新たな定住者や移住者を引き寄せることも期待できます。その結果、若者の転出減少や出生率の増加などによって少子高齢化の改善につながる可能性もあります。

シビックプライドをもつ人は、地域へ貢献したい意識があるため、地方創生に積極的に取り組んでくれます。地方創生に意欲的な住民が増えるほど、住みやすい街づくりへの政策も進めやすくなり、より魅力ある地域へと発展させられるでしょう。



シビックプライドの醸成方法

シビックプライドにはさまざまな醸成方法があります。さまざまな自治体が現在進行形で試行錯誤している状況なので、今後も選択肢は増えていくと考えられます。



インナープロモーション

インナープロモーションとは、自治体が地域内で住民などに対して、発信しようとしている魅力や取り組みの価値を理解してもらうプロモーション活動です。地域への愛着や、公共サービスの効果を高める効果があるといわれています。市民が誇りを感じる魅力的なものを増やしていくことで、シビックプライドも醸成されやすくなります。最近では、動画やSNSなどのデジタル発信も増えているため、より取り組みやすく伝わりやすい方法から始めてみるとよいでしょう。


シティプロモーション

シティプロモーションは、地域の魅力を地域内外に発信して地方創生につなげる取り組みです。シビックプライドの醸成は、シティプロモーションの目的の1つとして、よく語られる要素です。シティプロモーションによりシビックプライドが醸成されれば、「定住・Uターンの促進」「来訪者から定住者への移行」「定住志向の高まりによる転出者の抑制」「企業誘致」「市民による情報発信の増加」などが期待できるからです。


方針や制度の整備

シビックプライドの形成・醸成は、自治体が主導で行うケースがほとんどです。市民が住みやすいと感じ、好きになってくれる地域を目指した制度や環境を整備していくことも重要です。自治体だからこそできる施策に取り組みましょう。限られた財源の中で、何に注力し、何に注力しないのかを決めることも大切です。


キャンペーンの実施

定期的な情報発信以外にも、集中的なキャンペーンを行うことも効果的です。イベントやキャンペーンを開催した際に集まる市民に同じ目的や思いをもってもらうと、共感してもらいやすくなります。シビックプライド形成・醸成のために、市民が気軽に参加でき、地域への愛着を呼び起こすイベントなどを開催するとよいでしょう。




全国の自治体によるシビックプライドの取り組み事例

日本各地のシビックプライドの醸成事例は多岐にわたります。インナープロモーション、イベントやSNSの活用、ユニークな町おこしまで、さまざまな取り組みが行われています。これからご紹介する事例を、実際に施策を検討する際の参考にされてはいかがでしょうか。


【インナープロモーション】埼玉県戸田市

埼玉県戸田市では、インナープロモーションの強化に力を入れています。
 
たとえば、水辺を活用したシビックプライドの醸成を試みた取り組みが挙げられます。新旧住民が参加するワークショップを開催し、戸田市の代表的な複数の水辺を巡るワークショップを開催しました。ワークショップでは、シビックプライド醸成に必要なことを議論する時間も設けられ、観光として有名な水辺よりも、実は日常生活で接点が多いことが示されました。
 
こういったことから、戸田市では観光地など外部の人を取り合うプロモーションの「競争」よりも、地域住民が身近に感じる魅力に焦点を当てたインナープロモーションにより、「共感」を得ていくことに注力しています。戸田市の事例から、必ずしも他の地域と比較して優位であるものが市民の誇りになるわけではなく、市民が親しみをもっていることがシビックプライドの醸成には大切であることがわかります。


【方針・制度の整備】神奈川県相模原市

神奈川県相模原市は、全国初のシビックプライドに関する条例「さがみはらみんなのシビックプライド」を2021年に制定しました。条例の制定のきっかけは、2018年のシビックプライドランキングで下位だったことです。条例では、市長、市、「さがみはらファン」、「相模原市と関わりのあるみんな」、の4者についてそれぞれの役割を定めたものとなっています。条例に基づくさまざまな取り組みの結果、2018年に149位だったシビックプライドランキングも、2021年には76位まで上昇しました。
 
基本的な施策としては、「相模原市の魅力の発掘・向上とさらなる発信」「市民等多様な主体との連携・協働による取り組みの推進」「効果的なシティプロモーションの着実な展開」を挙げています。また、対外的なシティプロモーションとして20~30代をターゲットに据えている点も特徴的です。
 
相模原市では、住んでいる地域に愛着を感じている市民の割合を令和9年までに85%まで高めたいと考えており、アンケート調査で結果を確認する予定です。KPIも明確で、今後もシビックプライドの向上が期待されています。


【シティプロモーション】愛媛県今治市

愛媛県今治市は、2010年にNPO法人今治シビックプライドセンター(ICPC)を設立し、今治港を起点としたシビックプライドの醸成に取り組んできました。港を「交通」の拠点から「交流」の拠点へコンセプトを変更し、みなと再生事業を始めました。
 
観光庁では、旅の体験の魅力を、デジタルの力でさらに高め、旅行者や地域をより豊かにすることを事業の目的とした取り組みを推進しています。その取り組みの1つに「レンタサイクルを基軸としたしまなみ海道活性化事業」が令和5年に採用されました。しまなみ海道の支点である今治市は、観光のDX、活性化を通じて、今後のシビックプライドの醸成が期待できます。
 
今治市の事例から、外部との交流や人の流入はシビックプライドの醸成に効果があるとわかります。地元に魅力を感じる観光客が増えることは、住民にとってその地域に誇りをもつきっかけにもなるでしょう。


【シティプロモーション】神奈川県川崎市

川崎市では平成28年7月、本市の魅力と将来の方向性を統一的に発信する目的で、都市のブランドメッセージ「Colors, Future! いろいろって、未来。」を設定しました。このメッセージには、川崎が多くの移住者を受け入れてきた歴史から、さまざまな分野における交流や、その結果生まれた多様性が、川崎市の豊かさと未来の可能性につながっていく、という意味が込められているそうです。
 
川崎市のように住民が多い都市でシビックプライドの醸成を図る理由の1つは、治安の改善といわれています。川崎市民に対するアンケート調査では、一定数が「治安の悪さ」を挙げました。そこで市は「地域に愛着をもつ人が増えれば、地域を良くする行動をする人が増えるはず」という考えのもと、シビックプライドの醸成に取り組みようになったそうです。
 
街を好きになり、街が元気になる取り組みを推進するため、民間事業者(営利企業やNPO法人、各種団体など)などの団体が積極的にブランドメッセージを活用しています。ブランドメッセージによって川﨑市の魅力を知って好きになってもらうために、音楽やスポーツイベント、新商品開発などに企業や市民と協力して取り組んでいます。


【キャンペーンの実施】鹿児島県鹿児島市

鹿児島市では「マグマシティ」というプロジェクトを展開し、住民のシビックプライドを高める取り組みを行っています。このプロジェクトでは、「都市ブランドの向上」「シビックプライドの醸成」「関係人口の拡大・深化」を軸としています。
 
シビックプライド醸成の取り組みとして、大規模ワークショップ「PLAY CITY! DAYS」が開催されました。約100人の住民が対象となったこのワークショップでは、鹿児島市のPR動画を住民自ら制作したり、より良い街にするためのプランをまとめたりと、地域の魅力を再発見し共有できる機会になりました。
 
また、観光資源が豊富なことから、観光につながる事業に積極的に取り組んでいます。首都圏における「食の都かごしま」プロモーションで、鹿児島の食の魅力を体験できるイベントの開催など、多様な切り口から誘客のアプローチを行っています。
鹿児島市の事例から、地域の魅力をしっかり把握しマーケティングできていることが重要であるとわかります。多くの資源があるからこそ、どの素材をどのようにPRするのが効果的かリサーチできていることで住民との連携も取りやすくなります。



まとめ

シビックプライドの醸成の取り組みは、さまざまな角度から行えます。シビックプライドの醸成につながるシティプロモーションは、自治体、地域の団体・事業者、住民が一体となって発信することが重要です。

サイネックスの事業の1つに、官民一体となってつくるシティプロモーション特設サイト「わが街ポータル」や、地域行政情報誌「わが街事典」があります。今回紹介した事例とあわせて、地域活性化の参考にしてみてはいかがでしょうか。

https://www.scinex.co.jp/business/media/wp/

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