シティプロモーションに失敗しないためには?失敗例から課題や注意点を考える
近年、シティプロモーションに取り組む自治体が増えています。しかし一方で、期待通りの結果を得られないこともめずらしくありません。シティプロモーションの取り組みにはどのような失敗があるのでしょうか。過去の失敗事例から見られる共通点や注意点を解説しますので、シティプロモーションの取り組みの参考にしてください。

シティプロモーションの理解すべきポイント
シティプロモーションとは、地域の魅力や特徴を、内部・外部に向けて発信することです。
取り組みの手段は多岐にわたりますが、基本的に地方創生を目的とした情報発信は、広い意味でシティプロモーションと捉えることもできます。シティプロモーションに取り組むことによって、その地域を知らない人にも広く認知してもらえます。
シティプロモーションを理解する上で大切なのは、広報活動ではなく営業活動であるということです。地域の魅力をうまく発信できたかどうかが重要なのではなく、魅力を発信した結果、どのような資源を獲得できたか、地域の持続や活性化につながったのかを重視すべきなのです。
自治体における広報には、自治体内にさまざまなノウハウが蓄積されている場合が多いですが、営業活動となると手法がわからず、つまずいてしまうことがあります。民間企業は営業活動やプロモーションのノウハウをもっているため、民間企業と連携して官民協働で取り組むことが効果的です。
シティプロモーションの注意点

地方創生や地域活性化を目標に、シティプロモーションに力を入れてみたものの、期待したような成果が得られなかったり、中途半端に終わったりすることもあります。ここでは、シティプロモーションに取り組む時によく経験する3つの課題について解説します。
移住・定住前と後にギャップを感じる人がいる
自治体がシティプロモーションを行う目的や目標には、前提として定住・移住者の増加があります。しかし、長期的に定住・移住者を増やすことは簡単ではありません。「地域に興味・関心をもって実際に移住してみたが、思っていたのと違った」と感じる人も少なからず存在します。
移住者が感じる主な不満には、次のようなものがあります。
・生活環境が大きく変化する
・求人数が少ない
・年収が下がる傾向にある
・人間関係をうまく築けない
・空き家をリフォームして入居した場合、予想以上にリフォーム代が高い
・コンビニエンスストアや医療機関へのアクセスが不便
近年の自治体は、これらを踏まえて定住・移住者の増加だけに取り組むのではなく、地域に関心をもち、地域や地域の住民と多様な関わりをする人々(関係人口)を増やそうとする取り組みにも力を入れる傾向にあります。
自治体ごとの取り組みが差別化できず魅力が伝わりにくい
2008年頃から、シティプロモーションに取り組む自治体が増えてきました。先駆けとしてはじめた一部の自治体のシティプロモーションは、成功事例として紹介されるケースがあります。
しかし、最近ではシティプロモーションに取り組んでいる自治体はめずらしくないため、地域の魅力を発信したとしても差別化を図りにくく、ユーザーが検索しても興味・関心をもちにくいという状態に陥っています。
政策の目標設定がされておらず手段のみになっている
シティプロモーション計画の中には、具体的な達成目標が掲げられていないものもあります。地域の魅力や文化を発信しても、目標が明確でなければ効果の検証ができません。
また、達成可能な目標設定なのか、検証してから取り組むことも重要です。定住人口の増加を目標にしたとしても、日本の少子高齢化が加速している中で、達成するのは困難なケースも多いでしょう。シティプロモーションを実施するにあたり、適切な目標設定と綿密な計画が不可欠です。
シティプロモーションの失敗例

シティプロモーションに取り組んでいる地方自治体は多くあります。しかし、うまくいかなかった取り組みも少なくありません。これから紹介する事例は、他の地域でも類似の失敗が見られるケースです。うまくいかなかった事例から学び、今後の自らの施策に活かしましょう。
事業性が甘い大規模投資
とある自治体では、駅前再開発事業として複合商業施設を開業しましたが、初年度から大幅な赤字を計上し、2017年に閉鎖に追い込まれました。計画は、市内を都市・居住・農林の3つの役割に分けて、徐々に集住を促していくという壮大なものでした。しかし、結果として複合商業施設が建った以外に明確な効果がありませんでした。人口減少に加え、郊外のお店との競争に勝てなかったことなどが主な理由として挙げられます。
主旨に沿わない制度活用
ふるさと納税制度を活用して高額な返礼品を提供することを条件に、知名度を大幅に高めた自治体もあります。しかし、返礼品が地場産品として見なされないものも多く、国からも主旨に反するため制度対象外とされ、悪い意味で話題になってしまいました。
地場産品規制は「持つもの」と「持たざるもの」で自治体間の格差が生まれてしまいます。現在、この自治体はふるさと納税制度に復帰し、ふるさと納税制度を利用したクラウドファンディングで集めた資金を利用して、新たな地場産品の開発事業に取り組んでいます。
エンタメの聖地化失敗
テレビドラマにもなった有名小説をテーマに、シティプロモーションを図った自治体もありました。しかし、住民からの反対や、ドラマのテーマからすると観光目的にそぐわないのではないかといった意見も多く、財政負担が大きいという理由もあり、縮小されました。
他の地域の類似例として、アニメの聖地化における失敗があります。この事例では、地域の特性やファンの心理を十分に理解せずに、一方的に聖地化を進めたことが原因と考えられます。アニメファンのコミュニティとのコミュニケーションや理解が不足していた可能性があります。
シティプロモーションに失敗しないための注意点

シティプロモーションの取り組みで失敗しないためには、どのような対策があるでしょうか。ここでは、シティプロモーションに取り組む時の注意点を解説します。
目標を明確に定める
シティプロモーションを成功させるために重要なことは、まず明確に目標を定めることです。地域にとって何が必要かを考えることで、解決すべき問題が見えてくるでしょう。
目標を定めることでターゲットが明確になり、おのずと具体的な施策が浮かびやすくなります。目標の具体例として、以下のようなものがあります。
・20〜30代の移住者の増加
・高校・大学卒業後に他地域への流出する若者数を抑制
・ふるさと納税制度の納税額をアップ
・20代のUターン・Iターン就職者の増加
・インバウンドの観光客の増加
このように、具体的な目標を定めることが、シティプロモーションを成功させるための第一歩です。
地域の強みを理解する
漠然とした案でシティプロモーションを行ってしまった場合、失敗に終わることが少なくありません。その理由の1つに、地域の強みの理解不足が挙げられます。地域の強みとは、たとえば「住民に寄り添った行政サービスがある」「その地域にしかない特産品がある」などです。
また、自治体が考えている強みが、ユーザーにとって本当に価値があることなのかを調査することも重要です。注目度ばかりを重視し、本来の目的を見失ってしまうことがないように注意する必要があるでしょう。
民間と協力体制を構築する
シティプロモーションを自治体の活動だけで成功させることは困難です。そのため、地域に根ざした企業や商店などの民間と連携することも視野に入れることが大切です。
民間企業は、資料作りや撮影、WebサイトやSNS運用などの知識やノウハウを豊富にもっている場合が多くあります。地域の企業・団体・住民など、関係者と協力して効果的かつ効率的に進められるケースも少なくないようです。
シティプロモーションを成功させるには、民間企業へのリサーチや働きかけも重要になります。
まとめ
シティプロモーションに取り組む時は、具体的な目標設定が必要です。地域の特性や住民のニーズを理解するといった調査や計画をしっかり行った上で取り組むことが、成功につながるポイントになります。
サイネックスでは、自治体から発信する地域情報だけでなく、 地域住民や企業・団体と連携した投稿型のシティプロモーション特設サイト「わが街ポータル」を開設しています。民間の営業力を活用する官民協働事業として、シティプロモーションに活用してみてはいかがでしょうか。
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