企業版ふるさと納税の進化―企業・自治体・地域住民の“三方良し”で持続可能な地域づくりに貢献
人口減少や地域経済の停滞など、地域が抱える課題はますます複雑化しています。こうしたなか、企業が地域と協働しながら課題解決に取り組む動きが広がり、その中心的な仕組みとして注目されているのが「企業版ふるさと納税」です。
近年は、寄付にとどまらず、企業の専門人材が自治体のプロジェクトに直接参画する取り組みが増え、地域の実情に寄り添った支援や、企業側の人材育成にもつながる新しい関係性が生まれています。地域の課題解決に貢献しながら、企業・自治体・地域住民の三者がともに恩恵を受ける形へと進化している点が大きな特徴です。
本記事では、企業版ふるさと納税の仕組みや制度のポイント、人材派遣型の特徴、活用事例までを体系的に解説し、企業と地域の未来をつくる新しい地方創生の姿をお伝えします。
企業ふるさと納税の概要と制度のポイント
企業版ふるさと納税とは、企業が地方公共団体の地方創生プロジェクトに寄付を行った際、法人関係税の税額控除を受けられる制度です。寄付の対象は、国が認定した地域再生計画にもとづく事業に限られており、自治体の地域活性化を後押しする仕組みとして活用されています。
損金算入による約3割の軽減効果に加え、寄付額の最大6割が税額控除されるため、最大で寄付額の約9割が軽減され、企業の実質負担は約1割に抑えられます。また、令和7年度税制改正において、制度改善を前提に適用期限が令和9年度まで3年間延長される方針が示されており、今後も企業と自治体の連携を促進する重要な制度として注目されています。
令和7年度税制改正 企業版ふるさと納税の延長/企業版ふるさと納税ポータルサイト
企業が寄付しやすいように寄付額の下限は10万円
企業が利用しやすい制度にするため、企業版ふるさと納税の寄付額の下限は 10万円 に設定されています。これにより、規模の大小を問わず多様な企業が地方創生プロジェクトに参加しやすくなり、自治体との協働がより広がる仕組みとなっています。
寄付企業への経済的な見返りは禁止
企業版ふるさと納税では、制度の公平性と透明性を確保するため、寄付企業への経済的な見返りは禁止されています。
物品提供や金銭的利益供与といった直接的なリターンは認められていませんが、自治体のホームページ・広報誌での寄付企業名の紹介や、公正な手続きを経た契約締結などは問題なく行うことができます。企業の善意と社会貢献を適切に評価しつつ、不当な利益が生じない仕組みとなっています。
寄付額は事業費の範囲内とすること
企業版ふるさと納税では、寄付の適正な運用を確保するため、寄付額は寄付を活用する事業費の範囲内に収めることが求められています。これは、事業規模を超えた過大な寄付や、制度趣旨に反する資金の流れを防ぐための重要なルールです。
寄付額と事業費を適切に一致させることで、透明性の高い運用が担保され、企業と自治体が健全に連携しながら地方創生の実現を進めることができます。
人材派遣型の企業版ふるさと納税は2020年から
企業版ふるさと納税では、企業の専門知識やノウハウをもつ人材を自治体へ派遣することで、地方創生の充実・強化を図ることができます。単なる寄付にとどまらず、企業人材が地域プロジェクトの企画や運営に直接関わる点が特徴です。派遣された人材は実践的な経験を積むことで育成につながり、自治体側も実質的な人件費の負担を抑えながら企業の専門性を活用できます。
このように、企業と自治体の双方にメリットがある仕組みとして全国で活用が広がっています。
2020年からスタートした「人材派遣型」の仕組みとは
企業版ふるさと納税では、企業が地方公共団体に人材を派遣し、プロジェクトの実施を支援できます。派遣される人材の人件費を含む事業費に対して寄付を行うことで、法人関係税の減税を受けられる仕組みです。派遣先は、自治体の職員として任用される場合のほか、地域活性化事業を行う団体など、寄付活用事業に関わる団体で採用されるケースもあります。
これにより、企業は人材育成や社会貢献を実現しながら、自治体や地域団体は専門性を生かしたプロジェクト推進が可能となります。
企業の知見を生かした地域支援
企業版ふるさと納税では、寄付や人材派遣を通じて企業が地域と深く関わることで、地域での交流から企業自身が地域課題を把握し、解決に貢献する流れが生まれます。
企業人材が現地で自治体や住民と直接コミュニケーションを取ることで、地域の実情に即した支援が可能となり、企業のノウハウを生かした効果的なプロジェクト推進につながります。こうした交流は、新たな連携の創出や関係人口の拡大にも寄与し、持続可能な地域づくりに大きく貢献します。
地域と企業で行う「共育」の視点とは
地域と企業が協力して人材を育て合う取り組みを指す「共育」は、単なる支援や交流を超え、双方が学び合い成長する関係を築くことを目的としています。企業版ふるさと納税、とくに人材派遣型ではこの「共育」が重要なキーワードになります。
企業から派遣された人材は、地域の課題に直面し、行政の視点や住民の価値観を学ぶことで、新たな視野や課題解決力を身につけます。一方、地域側は企業の知識・ノウハウを取り入れることで、これまでにない手法や発想でプロジェクトを進めることができます。
つまり「共育」とは、企業は地域から学び、地域は企業の力で変わり、双方が成長していく循環を生み出す視点です。
企業版ふるさと納税(人材派遣型)概要/企業版ふるさと納税ポータルサイト
地方自治体と企業のメリット・デメリット
企業版ふるさと納税(人材派遣型)は、自治体と企業のどちらにもメリットがある一方、注意すべき点も存在します。地方自治体と企業のメリット・デメリットを確認して進めることも大切です。
地方自治体のメリット・デメリット
メリット:企業版ふるさと納税では、専門的な知識やノウハウをもつ人材が寄付活用事業やプロジェクトに参加することで、地方創生の取り組みをより充実・強化できます。自治体は実質的な人件費負担を抑えつつ人材を活用でき、関係人口の創出や拡大も期待されます。
デメリット:人材受入体制やプロジェクト管理の負担、派遣人材とのミスマッチの可能性、寄付金の使途や効果検証の透明性確保など、自治体側には一定のリスクや課題も存在します。
企業のメリット・デメリット
メリット:企業版ふるさと納税では、派遣人材の人件費相当額を含む事業費への寄付により、当該経費の最大約9割に相当する税の軽減を受けられます。さらに、単なる金銭支援にとどまらず、派遣人材が事業の企画や実施に参画することで、企業のノウハウを地域に生かし貢献することが可能です。また、社員の育成にも活用できます。
デメリット:寄付や人材派遣に伴う調整・管理コストがかかることや、寄付額や活動内容に制限があること、プロジェクトとの相性や成果が短期的に見えにくい点など、企業側にもリスクや注意点があります。
活用実績と留意事項
企業版ふるさと納税を活用する際は、自治体が寄付企業の人材を受け入れることや受入期間を公開し、透明性を保つことが大切です。また、寄付企業への金銭的な利益供与は禁止されており、地域再生計画に沿った効果の検証も求められます。
令和6年度は、116の地方公共団体で活用されました。
企業の専門知識を地域プロジェクトに生かし、地方創生を支える取り組みとして広がっています。
地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の令和6年度寄附実績について公表しました/企業版ふるさと納税ポータルサイト
活用事例の紹介
地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)は、企業が地方創生プロジェクトを支援することで税制優遇を受けられる仕組みとして全国で活用が広がっています。
内閣府では、この制度を通じて地域の発展に大きく貢献した企業や団体を対象に「大臣表彰」を実施し、その取り組み内容や成果を公表しています。大臣表彰は、先進的な事例を広く共有することで企業の参加を後押しし、地域と企業が連携した持続可能なまちづくりをさらに促進することを目的としています。
地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)に係る大臣表彰:令和6年度 受賞者の決定について/企業版ふるさと納税ポータルサイト
第⼀⽣命保険株式会社 ⇒ 群⾺県、徳島県、埼⽟県川越市 他
保険の枠を超えて新しい体験価値を提供し、持続可能な社会づくりに貢献することを目指しています。その一環として企業版ふるさと納税を活用し、地域の課題解決に取り組んでいます。
人材派遣型の制度を通じて、これまでに50以上の自治体へ社員を派遣し、グリーンツーリズムの推進やスマートウエルネスシティづくり、移住促進など幅広いプロジェクトに参加してきました。
また、自治体との意見交換を事前にていねいに行い、派遣内容とのミスマッチが起きないよう配慮しています。
第一生命保険株式会社と企業版ふるさと納税(人材派遣型)を活用した人事交流協定を締結しました|川越市
九州電⼒株式会社 ⇒ 熊本県(地球温暖化対策事業)
地球温暖化対策を進めるため、カーボンニュートラルの知識をもつ電力会社の社員を自治体に派遣し、あわせて包括連携協定も結びました。派遣された社員は、電力会社で培った経験を生かして、県内企業の省エネ支援やエネルギー転換の検討を行うほか、県有施設への再生可能エネルギー導入にも取り組んでいます。
派遣前から自治体と電力会社の担当者が何度も話し合いを重ね、取り組み内容を積極的に発信することで、他の自治体にも広がる好事例となっています。
九州電力株式会社との地域課題の解決に関する包括連携協定締結式(熊本県庁) – 熊本県ホームページ
両備ホールディングス株式会社 ⇒ 岡⼭県真庭市(観光振興事業)
自治体では、企業版ふるさと納税(人材派遣型)を全国で初めて活用し、観光に関する専門知識をもつ人材を受け入れました。この派遣人材は、コロナ禍で求められる新しい観光振興策の企画に携わりました。
専門家の視点が加わったことで、観光政策をより質の高いものにでき、観光分野の体制強化にもつながりました。
また、これまで進めてきた「観光地域づくり」に民間ならではの発想が取り入れられたことで、地方創生の取り組みがさらに充実し、自治体と企業双方のPRにも貢献しています。
真庭市における企業版ふるさと納税(地方創生応援税制) – 真庭市公式ホームページ
ふるさと納税の形も変わってきている
近年、ふるさと納税は単なる寄付や返礼品の受け取りにとどまらず、「地域との共創」「企業の人材活用」「地域課題の解決」といった新しい形へと進化しています。従来は個人が返礼品を目的に寄付することが中心でしたが、現在は企業版ふるさと納税(人材派遣型)など、地域課題への直接的な関与が注目されています。
企業は寄付に加え、専門知識をもつ社員を自治体や地域団体に派遣し、プロジェクトに参画することで、地域課題の解決と社員の人材育成を同時に実現できます。また、地域と企業、地域と個人が互いに学び合う「共創・共育型」の寄付や、観光振興・環境保全・移住促進など、具体的課題に沿ったプロジェクトへの寄付も増加しています。
このように、ふるさと納税は資金提供の枠を超え、地域との関わり方そのものを変えるツールとして活用され、企業・自治体・地域住民の三者がメリットを得ながら、持続可能な地域づくりに貢献できる仕組みへと広がっています。
企業版ふるさと納税ポータルサイト – 地方創生推進事務局
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