人口ダム機能とは?東京一極集中型から多極分散型を実現する取り組み
日本では、地方の人口減少・少子高齢化への対策に加え、東京一極集中の是正が非常に重要なテーマとなっています。
地方で生まれた若者が東京に移り、その後も出生率の低い東京で暮らし続けることで、日本の人口が減少していくという悪循環に陥っています。日本政府や自治体も手をこまねいているわけではなく、さまざまな取り組みをしてきました。
なかでも代表的なものが「連携中枢都市圏構想」と「定住自立圏構想」の推進です。長年この取り組みを通して、「人口ダム機能」を地方都市に持たせようとしてきました。
本記事では、連携中枢都市圏や定住自立圏構想とは何なのか、その結果として得られる人口ダム機能とは何なのか、そしてこれらの取り組みによって人口動向はどうなっているのかをご紹介します。
みんな知ってる?人口ダム機能を実現するための2つの構想
政府や自治体が取り組む連携中枢都市圏構想・定住自立圏構想は、地方都市に人口ダム機能をもたせることを目的の1つとしています。「連携中枢都市圏構想」と「定住自立圏構想」の概要、2つの構想に取り組むことがなぜ人口ダム機能の実現につながるのかを解説します。
連携中枢都市圏構想とは
連携中枢都市圏構想とは、一定要件を満たした自治体が「連携中枢都市」となり、周辺の自治体と連携しながら、地域内で都市機能を充実させる考え方です。
地方の人口が東京へ流出する理由は、東京が地方都市よりも進学や就職などさまざまな面で選択肢が多いことがあげられます。しかし地方都市単体で東京のような都市機能を備えることは不可能であり、全国各都市が都市機能の充実に取り組むことも適切とはいえません。
そこで、中枢になる地方都市と周辺地域により、「駅や空港・企業が集積した都市」「住宅地」「自然が豊かでレジャー・リフレッシュできる場所」など、人の生活に必要な機能を面的に充実させようと考えられたのです。
この取り組みにより、ヒト・モノ・カネ・情報が地域内で循環することで、地域活性化の実現が期待されています。
連携中枢都市圏の連携中枢都市になるためには、原則として、①政令指定都市または中核市(人口20万人以上)であること、②昼間人口と夜間人口の人口比率がおおむね1以上であること(昼間人口が夜間人口よりも大きい市)であること、三大都市圏の区域外に所在することなどの条件があります。
総務省|地方自治制度|多様な広域連携
定住自立圏構想とは
定住自立圏構想とは、地方圏において安心して暮らせる地域を各地に形成し、三大都市圏から地方圏への人口流入を創出する考え方です。
地方の少子化・高齢化を緩和するには、地方から都市圏に流出した人口を取り戻す必要があります。地方から都市圏へ移動するのは、就職や結婚などがきっかけとなるケースが多く見られます。地方の人口流出を抑止するには、地方圏において「雇用の充実」「子育てがしやすい」といった地域を形成する必要があります。
この取り組みによって地方圏から三大都市圏への人口流出を食い止めるとともに、三大都市圏の住民にもそれぞれのライフステージやライフスタイルに応じた居住の選択肢を提供することで、地方圏への人の流入を創出することを目指します。
市町村の主体的取り組みとして、「中心市」の都市機能と「近隣市町村」の農林水産業、自然環境、歴史、文化など、双方の魅力を活用して、NPOや企業といった民間と連携・協力することにより、地方圏への人口定住を促進する政策です。
総務省|地域力の創造・地方の再生|定住自立圏構想
連携中枢都市圏構想と定住自立圏構想の違い
「定住自立圏構想」と「連携中枢都市圏構想」は、どちらも地方都市の人口減少の改善を目指す構想ですが、目的や圏域に入れる都市の規模要件が異なります。
連携中枢都市圏の中枢都市は政令指定都市または人口20万人以上の中核市という要件があるため、圏域に入る市町村は限られます。一方、定住自立圏は人口5万人以上であれば中心市になれるため、近くに人口20万人の市が近隣になくても入れます。
また、定住自立圏構想は医療・福祉・商業・交通といった生活機能を圏域で確保することに取り組み、連携中枢都市圏構想は定住自立圏の考え方をふまえ圏域全体の経済成長を目的とした取り組みを行います。
人口ダム機能とは
小規模な村や町などの住民が、多種多様な仕事や高い所得水準、充実した生活基盤、教育や娯楽の機会などを求めて近隣の市などへ移住する動きは、どの地域においても見られる現象です。東京圏への人口集中は、より大きな都市への移住の積み重ねの結果にあらわれているのです。
東京圏以外の地域で中核となっている自治体の「人口ダム機能」の役割は、政令指定都市や県庁所在市などが、移住の積み重なる人口集中構造の途中に存在し、周辺部から集まる人口を受け止めることで、より大きな都市への流出を抑制することです。あたかもダムが水をせき止めるように、人材や人口が都市圏外へ流出するのを食い止める効果が期待されています。
定住自立圏構想の推進要綱において、人口ダム機能は地方圏から三大都市圏への人口流出を食い止める目的であることが示されており、それが連携中枢都市圏構想にも引き継がれています。そのため、定住自立圏構想、人口ダム機能、連携中枢都市圏構想は密接に関連しているとも考えられます。
うまくいっているのか?人口ダム機能の現在地
連携中枢都市圏の形成に取り組む過程で、人口ダム機能が注目される一方、その有効性を疑問視する声もあるようです。
ここでは、近年の人口ダム機能の状況やなぜ有効性が疑われているのかを紹介します。
人口動向の調査から見る人口ダム機能の実態
2024年の総務省の「住民基本台帳人口移動報告」によると、まず、2023年・2024年の都道府県別の転入・転出超過数では、転入超過は7都府県、転出超過は40道府県で、転入超過数が最も多かったのは東京都(7万9,285人)、転出超過数が最も多かったのは広島県でした。
2014~2024年の都道府県別の転入・転出超過数の推移を見ると、一貫して転入超過だったのは東京圏の4都県のみで、大阪圏は2014年以降転出超過が続いていたが、2024年に2679人の転入超過に転じました。一方、名古屋圏(愛知・三重・岐阜)は2019年以降、転出超過に転じています。
この調査の総括として、2014年~2024年の間で人口ダム機能が低下しているのは宮城県と愛知県、上昇しているのは大阪府と福岡県と報告されています。
人口のダム機能の重要性は、大都市への人口流出の抑制だけではありません。入学や就職などで大都市へ引っ越した若者が、結婚や住宅購入などを機に周辺のまちに移り住むといった周辺部へ人口を戻していく効果を発揮するためには、全国の各都市が個性的な資源や競争力をもつことが大事だと考えられています。
統計局ホームページ/住民基本台帳人口移動報告 2024年(令和6年)結果
人口ダム機能の有効性・適切性への疑い
人口ダム機能は、人口動向という数値で可視化することができるため、連携中枢都市圏構想の取り組みの指標に用いられることがあります。
しかし、連携中枢都市の要件に該当する主要都市における人口移動の実態を分析した調査・研究によると、東京一極集中に対する人口ダム機能は果たされていないこと、むしろ通勤圏外の地域から連携中枢都市への人口流出を強化し、人口減少や高齢化をさらに助長するおそれがあるといった指摘もあります。
人口ダム機能の有効性・適切性は、長いスパンで見なければ評価は難しいとされます。ただし地方圏からの人口流出の抑止効果が、従来の広域連携施策と比べて向上したという実証が得られていないことが、有効性に疑いがあがる要因の1つと考えられるでしょう。
人口ダム機能低下の原因「雇用」
総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」の分析を元にした2023年の都道府県の転入超過数(転入数―転出数)において、プラスとなったエリアはわずか7エリア(東京・神奈川・埼玉・千葉・大阪・福岡・滋賀)という結果でした。そして大阪と福岡については、関西エリア・九州エリアから広く若年人口を集めつつも、東京圏へ大量に若年人口を送り出していることもわかりました。
2023年の東京都において、20代前半の就職時期にある人口が6万人ほど増加していることから、東京一極集中は、大阪圏、中京圏、福岡圏の人口リーダー県(人口ダム)となる3県において、雇用を理由に東京へ若年人口が流出していることが一番の原因だと考えられるのです。
統計局ホームページ/住民基本台帳人口移動報告 2023年(令和5年)結果
あなたの地域の人口はどこへ流出し、どこから流入していますか?
出典:経済産業省:RESAS 地域経済分析システム
人口ダム機能の上昇や低下は、実際の人口の増減によって判断されますが、東京圏以外のどのエリアに存在するか、さらにエリア内のどこに位置するのか、市町村の規模によって人口流出の原因もさまざまです。
あなたの自治体がどのように人口流出の抑制や人口流入の対策をとるかは、まず現状どこに多く人が流れているのか、どこからの転入が多いのかを把握することが取り組みの第一歩と考えられます。
RESAS 地域経済分析システムの人口マップメニューで2012年から2023年までの全国都道府県における転入・転出による人口の社会増減が確認できますので、ご自身の都道府県について近年の傾向や変化を調べてみてはいかがでしょうか。
経済産業省:RESAS 地域経済分析システム
あなたの地域の人口動向を把握し、人口ダム機能について考えてみましょう
人口ダム機能が連携中枢都市圏の形成において有効かどうかは、事例や指標の取り方など比較の方法によって変わるため、一概に評価することは困難です。
しかし、総務省の「定住自立圏構想」の推進の調査結果によると、定住自立圏取り組み後5年が経過した40圏域のうち、6圏域(15.0%)で社会増、27圏域(67.5%)で社会減が縮小となっており、33圏域で人口流出の歯止めがかかっていることがわかります。
人口ダム機能について検討することは、地方創生に取り組むきっかけにもなります。
全国各地の圏域で実施されている施策も参考に、まずはあなたの自治体がある地域の人口動向を把握することから取り組んでみてはいかがでしょうか。



