サイネックス・マガジン

もうすぐ花見シーズン! 桜の名所を未来につなげるために必要な取り組みを紹介

目次
  1. 桜プロジェクトのさまざまなアプローチと効果
  2. 自治体と地域で取り組む桜プロジェクトの事例
  3. 企業が主体で取り組む桜プロジェクト
  4. 桜を守るために市民や企業と協力しましょう
もうすぐ花見シーズン! 桜の名所を未来につなげるために必要な取り組みを紹介

桜プロジェクトとは、主に日本の名所や地域の桜を保全・育成し、次世代へ残すことを目的としたボランティアや植樹活動のことです。地域によってさまざまな名称がつけられていますが、ここでは桜を守る取り組みの総称として桜プロジェクトと記載します。

企業が地域活性化として展開するケースや、メディアによる開花観測活動などさまざまなプロジェクトが存在します。

今回は、自治体と地域が協力して取り組む桜プロジェクトを中心に紹介します。




桜プロジェクトのさまざまなアプローチと効果

もうすぐ花見シーズン! 桜の名所を未来につなげるために必要な取り組みを紹介

地域ごとに、桜プロジェクトに取り組む目的はさまざまです。
ここでは自治体が取り組む際にどのようなアプローチができ、効果が見込めるのかを紹介します。



記念植樹とオーナー制度による参加型アプローチ

桜の植樹後、成長には施肥、剪定、病害虫駆除といった管理が必要になり、管理側には負担やコストが発生します。そこで、自治体が全額負担するのではなく、誕生や入学、還暦といった住民のライフイベントに合わせて桜を植える「記念植樹制度」を設ける方法があります。こうしたオーナー制度によって、桜を単に「見る」対象から「育てる」存在へ心理的変化が生まれ、長期的な見守り活動の原動力となります。

こうした取り組みは、自治体の管理負担を軽減するとともに、シビックプライドの醸成につなげられます。シビックプライドとは、地域に対する住民の「誇り」や「愛着」を指し、住んでいる街をより良くするために主体的に関わろうとする当事者意識や自負心のことです。

桜プロジェクトを通じたシビックプライドの醸成は、地域活性化につながる可能性があります。
 
令和7年度 千秋公園さくらオーナーの募集について|秋田市公式サイト



ガバメントクラウドファンディングを活用したアプローチ

地域のシンボルとなっている桜の景観を未来に残すために、ふるさと納税制度を活用したガバメントクラウドファンディングを実施する方法があります。クラウドファンディングで集まった寄付金を、桜の木の管理や除草、休憩施設などの整備、情報発信などに活用します。

ガバメントクラウドファンディングは、目標額に未達成でも集まった寄付金が全額受け取れるケースが多いため、自治体にとって確実な資金調達ができるメリットがあります。
また、全国から支援を募ることで、地域の知名度向上にもつながります。
 
ガバメントクラウドファンディング、市木「桜(サクラ)」の整備|丹波篠山市



デジタル技術の活用によるアプローチ

限られた職員数で数千本の桜を管理するのは非常に負担となります。そのため最近では桜のリアルタイムの状態をデジタル化する取り組みが注目されています。たとえば、気象IoTセンサーやカメラを設置し、特定の桜の開花・満開の段階を数値化し、精度の高いピンポイントの開花予測情報の提供を目指した実証実験が行われました。また、AIカメラで樹木の幹の太さや形状を画像認識で数値化し、高齢化した樹木の管理に活用されています。

こうしたデジタル技術の活用により、初期段階での病害虫発見や倒木リスクが把握できるようになり、メンテナンスコストの削減が期待できます。
 
キリンビール「晴れ風ACTION」による桜の保全活動に千歳市が採択されました! – 北海道千歳市公式ホームページ – City of Chitose





自治体と地域で取り組む桜プロジェクトの事例

もうすぐ花見シーズン! 桜の名所を未来につなげるために必要な取り組みを紹介

桜を守り、未来に残すためには、市民・企業・自治体が連携して体制を構築し、取り組みを進めることが不可欠です。
ここでは、自治体が地域や企業と協力して取り組んでいるプロジェクトを紹介します。



茨城県日立市「さくらのまちづくり」

日立市では、公園、学校、交流センターなどにある地域の桜を、住民・企業・学校と自治体が連携・協力して地域で守り育てる体制づくりを進めています。桜守活動を行うことを目的として、令和4年から令和13年まで10年間の計画を策定しました。
とくに優先して取り組む施策に、市民や企業との協働による桜の樹勢点検をあげており、計画当初から地域住民や企業と連携して進めようとする方針が明確に示されています。

さらに将来的には、桜を観光資源と結びつけた観光振興を見込んでおり、企業等との連携による桜の特産品の開発・販売促進、SNSによる情報発信など、プロジェクトを通して市民や企業と連携し続けることで、今後の地域活性化にも効果が期待できるといえるでしょう。

ひたちさくら彩(いろ)プラン 日立市さくらのまちづくり基本計画を策定しました|日立市公式ウェブサイト



東京都多摩市「多摩桜プロジェクト」

東京都多摩市では、多摩商工会議所が2008年に「多摩桜プロジェクト」を立ち上げ、街の魅力向上につなげようとさまざまな取り組みを行ってきました。桜の専門家たちを招いたシンポジウムを開き、市民へプロジェクトの周知を図ったり、春に市内にある桜の名所を市民らで巡る「多摩桜ウォーク」イベントを開催したりと、市民との交流の場が設けられました。

また、JAXAが実施している企画に賛同し取り組みを始めた「宇宙(そら)桜」事業は、国内外との交流も進めるきっかけとなりました。
地域社会を大切にしつつ、外部との交流も積極的に行うことで持続可能なまちづくりを進められているといえるでしょう。
 
宇宙を旅した「宇宙桜」植樹10周年記念誌を寄贈いただきました|多摩市公式ホームページ



愛知県岩倉市「百年桜・千本並木に向けた保全再生プロジェクト」

愛知県岩倉市は桜の名所として知られ、五条川の両岸には千本を超える桜並木があり、街のシンボルとして親しまれています。
しかし、近年は樹齢70年を超える桜の木が増え、老木の長寿命化や後継木の育成、植え替えなどの取り組みが必要になっています。そこで、将来にわたり五条川桜並木をつないでいくことを目指してプロジェクトが立ち上がりました。

市は、樹木医や市民ボランティア団体と協力して枯損木の間引き伐採や剪定、将来を見据えた後継木の育成・植え替えを進めています。さらに、企業や大学、障害福祉サービス事業所などと連携して、伐採で生じた廃材を活用した商品開発も計画しています。

企業版ふるさと納税で寄付も募っており、市民・企業とうまく連携しながら進めている事例です。
 
【公式】岩倉市|百年桜・千本並木に向けた保全再生プロジェクト(岩倉市公式YouTubeチャンネル)



岩手県北上市「展勝地桜並木長寿命化対策事業」

岩手県北上市では、「北上展勝地」の桜を将来世代へ引き継ぐための保全事業を進めています。

同地は日本さくらの名所100選にも選定される名所として知られていますが、樹木の老齢化に加え、手入れ不足も重なり、樹勢が衰退して不良木が増えていることがわかりました。
市は、従来の維持管理に加え、土の入れ替えや肥料による土壌改良、枯損木の処理、不定根誘導といった延命化対策を進める方針を決定しました。さらに、桜の維持管理を行いながら成長を見守る「桜守」の育成にも力を入れており、市民向け講習会の開催などを通じて、地域全体で桜を守り育てる意識の醸成を図っています。

市民を巻き込んで桜を守る仕組みづくりに取り組んでいる事例です。
 
展勝地桜並木長寿命化計画|北上市公式ホームページ



秋田県仙北市「桜まちづくり事業」

秋田県仙北市では、民間企業と連携し、企業版ふるさと納税を活用して桜の保全活動を中心とする「桜まちづくり事業」を推進しています。2016年の協定締結以降、毎年の寄付やICT分野の知見共有を通じて両者の関係性を築き、桜の剪定・整枝などの環境保全に加え、地域のDX支援も実施してきました。
2024年には生成AIの基礎知識や業務活用を学ぶ「職員AI活用力向上プログラム」を開始し、自治体業務の効率化と人材育成にも取り組んでいます。

桜の保全活動をきっかけに、DXも民間企業と協働で推進しているため、今後、より地方創生が期待できる取り組み事例です。
 
「桜に彩られたまちづくり計画」が地方創生応援税制の対象事業に選ばれました  | 仙北市



沖縄県名護市「カンヒザクラ」植樹活動

沖縄県名護市の「なぐうら桜街道」で、名護市の花木である「カンヒザクラ」の植樹セレモニーが2025年5月27日に開催されました。

これはカンヒザクラの育成・普及を進めて地域活性化を目指すまちづくりの一環で、沖縄県労働金庫が企業版ふるさと納税を通じて300万円を寄付し、その資金を活用したものです。「名護・さくらの会」が中心となり、カンヒザクラ15本を植樹し、土壌改良や防風対策などの環境整備も行われました。今後、企業版ふるさと納税を活用する企業が増え、将来的には観光名所としての発展や地域ブランド強化につなげたいとしています。

観光受け入れ体制強化や景観向上によって、雇用創出や観光振興などの地域活性化が期待される取り組みです。
 
企業版ふるさと納税 さくら再生・普及推進事業セレモニー開催について | 名護市役所





企業が主体で取り組む桜プロジェクト

桜プロジェクトは、民間企業が主体となって取り組まれているものもあります。
影響力のある企業と連携して取り組めることは、地域にとって大変力強いことです。





全国の都道府県と連携する桜プロジェクト

大手建設会社による桜プロジェクトで、日本の象徴である桜と和の文化の素晴らしさ、自然環境の大切さを、未来を担う子どもたちに体験を通じて伝える活動です。

和楽器演奏と植樹を中心としたプログラムが全国の幼稚園・保育園・小学校で行われ、2025年にすべての都道府県で植樹活動が実施されたことが報告されました。植樹イベントでは和楽器演奏を聴いたり、子どもたち自身が演奏体験をしたりしながら、桜の苗木を植え、記念プレート・証明書などが贈呈されます。

また、吉野山での桜保全活動や、植樹実績をリアルタイムで公開するなど、桜と日本文化を次世代につなぐ取り組みを広く展開しています。
 
環境省_グッドライフアワード_受賞者紹介 第7回グッドライフアワード 取組概要



売上の一部を寄付する桜プロジェクト

大手飲料メーカーによる桜プロジェクトで、日本の春を象徴する桜を未来へつなぐ活動です。
桜パッケージの飲料を発売し、売上の一部を桜の植樹・保全活動に寄付しています。また、公益財団法人と協働で植樹先を選定し、全国各地の自治体を通じて植樹を進めています。

商品購入者は、「桜守」として自分の想いを入力し、見守りたい場所を選ぶことで特別な桜守名や認定書を受け取る体験ができ、誰でも気軽に活動に貢献できる仕組みがあります。
活動の実績は植樹マップとして公開され、桜が咲くスポットを確認できるようになっています。
 
株式会社伊藤園  社会貢献活動|海南市





桜を守るために市民や企業と協力しましょう

もうすぐ花見シーズン! 桜の名所を未来につなげるために必要な取り組みを紹介

花見のシーズンが近づき、人々が見たいと集まる桜の名所ほど、その桜を長く保ち、未来につなげていくことが地域にとって重要となります。今回紹介したプロジェクトについても、市民や企業の協力なくして取り組むことは難しいでしょう。

市民と一体になってプロジェクトの立ち上げから取り組むことで、桜はより市民から親しまれ、地域全体で守っていこうという意識が生まれるでしょう。

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