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職員のアイデアが肝となる職員提案制度とは?成功事例や課題と対策を紹介

目次
  1. 職員提案制度とは
  2. 職員提案制度の事例
  3. 職員提案制度の課題と対策
  4. 職員提案制度を利用して地域活性化につなげよう
職員のアイデアが肝となる職員提案制度とは?成功事例や課題と対策を紹介

職員提案制度を導入することで、自治体職員の提案やアイデアを収集し、庁内の業務改善や市民サービス向上につながる可能性があります。全国各地で導入している自治体も多く、成功事例も多岐にわたります。

今回、職員提案制度の具体的な事例を紹介するとともに、課題がある地域でどのような対策を行ったのかも紹介します。





職員提案制度とは

職員提案制度とは、自治体職員が日々の業務や市民との接点の中で気づいた業務の効率化や、経費削減、市民サービス向上のための新しい施策やアイデアなどを自由に提案できる制度で、職員の意識改革や、組織の活性化、行政の効率化を目的としています。
提案制度は単なる意見箱とは異なり、ボトムアップで組織改革を進める仕組みとされているため、多くの自治体で取り入れられています。

提案の種類は、事務改善提案の取り組みとして、事務処理の効率化、経費の節減、市民サービスの向上、既存制度の見直し、その他日常業務の改善のいずれか、または新規アイデア提案として、市民サービスの向上や業務の効率化につながる取り組みとされています。

採用された提案は、実際の市政運営に反映され、市長から表彰されることもあります。



自治体特有の課題「業務改善が進みにくい」の解決手段として広がりを見せている

業務の効率化や改善のために、なぜ職員提案制度のような制度を設ける必要があるのでしょうか。その背景には、「業務改善が進みにくい」自治体特有の環境があります。
自治体は民間企業のように市場競争や倒産リスクといった外部圧力がなく、コスト削減などのための効率化を強いられることもありません。また、定期的に人事異動があるため、改善に取り組む前に人が変わってしまうこともあります。

こうした背景から、職員の職務意識を高めるためにも職員提案制度が必要とされているのです。



業務効率化や品質向上だけでなく「政策立案能力」の向上が期待できる

公務員は日々の業務をこなすことに追われがちで、主体的に何かを考えたり提案したりといった機会は珍しいかもしれません。職員提案制度の目的の1つには、職員の政策立案能力の向上も掲げられています。

草加市の職員提案制度ガイドブックでも、日々の業務の中で気づいた小さなことから改善の一歩を始めてみることを推奨しています。一人ひとりの職員が提案することに慣れていく環境を作ることで、将来的には庁内全体の業務改善力の向上につながることが期待できます。

職員提案制度ガイドブック – 草津市





職員提案制度の事例

職員のアイデアが肝となる職員提案制度とは?成功事例や課題と対策を紹介

職員提案制度に取り組む自治体は全国各地にあり、その事例は多岐にわたります。
ここではその事例をいくつか紹介します。



北海道北見市

北海道北見市は、住民異動や戸籍届などに伴って発生する多くの手続きをワンストップで受け付け、「書かないワンストップ窓口」の先進自治体として広く知られています。これは業務改善のための職員提案がきっかけとなっています。

窓口業務は情報処理であるという観点から、手続きに必要なデータをシステムに渡せば、システムが手続きを判定してくれるという発想のもと、「書かない窓口」システムの原型が開発されました。北見市がゼロから開発した窓口支援システムは、さまざまな苦労や多くの時間を要しましたが、受付業務の負担軽減につながっています。また、戸籍謄本発行のRPA処理を全国で初めて実現するきっかけとなり、バックオフィスの業務改革にも貢献しています。

職員が考えたアイデアを少しずつ実現していき、成功体験を積んできたことが大きいと考えられています。うまくいかなければ元に戻せばよいという柔軟な考えと行動により、業務改革が止まらず進められる土壌ができあがっていることは、長期的に改革に取り組めている要因の1つといえるでしょう。
 
北見市役所の窓口サービス改善の取り組み経過 | 北見市



福井県

福井県では、若手職員の新しい発想を活かした政策づくりを推進し、全庁を挙げてそのチャレンジを応援、サポートする「チャレンジ政策提案制度」と「ふくい式20%ルール」に取り組んでいます。
チャレンジ政策提案制度は、若手職員が提案したいテーマを自ら選定し、2チームで政策を練り上げ、知事に直接プレゼンする制度です。優れた政策は、予算編成手続きを経て事業化されます。事業化される可能性もある点が大きな特徴で、責任は重大になりますが、若手職員の大きなモチベーションになっているようです。

ふくい式20%ルールは、職員が勤務時間の20%以内(週5日勤務のうち、1日程度を上限に従事することが目安)を活用して、担当業務以外に新たな政策の企画立案等、創造的活動に従事できるというものです。前職でSEだった人事課の職員が、住民税の市町納付に係る事務を効率化するシステムを構築した例もあり、担当業務だけでは活かしきれないスキルを活用する機会が生まれ、モチベーションの向上につながったという職員の声もあがっています。

若手職員がいきいきと働ける環境を整えることで、人材の定着や地域活性化などにつなげられる可能性があります。
 
仕事の進め方改革 | 福井県ホームページ



神奈川県平塚市

神奈川県平塚市では、若手職員も含めた職員の意見やアイデアを広く反映するための取り組みとして、「職員提案・業務改善報告制度」を導入しています。
たとえば、2022年4月に市制施行90周年を迎えた記念事業の一環で、平塚市総合公園にインクルーシブ遊具広場が整備されました。これは、障がいの有無に関わらず誰もが自由に遊べる場がほしいという職員の提案を受けて実現したものです。

このような大規模な取り組みが職員の発案から実現した背景には、障がい者関係団体との意見交換や特別支援学校とのヒアリングを行い、多数の団体と連携したことがあげられます。
 
職員提案・業務改善報告制度 | 平塚市



静岡県富士宮市

富士宮市では、従来の市役所の事務全般の見直しを行う「自由提案」、課内の事務についての改善実績を報告する「事務改善報告」の2種類に加え、業務におけるデジタルツールの活用に関する良いアイデアや好事例を収集するため、令和6年度に「デジタルツール活用提案」を新設しました。

一例として、要介護認定・要支援認定申請の進捗確認に関する事務改善の提案がありました。これまで電話で回答していた進捗確認について、ノーコードツールを活用し、電子照会による自動確認の仕組み(Web上で確認)を導入するというものです。審査の結果、デジタルツールの活用とそれに伴う業務フローの見直しにより、市民と職員の双方にとって大きな効果があったことが認められました。

DXの推進が重要視される自治体業務において、デジタルツール活用の提案は今後さらに需要が高まり、職場のDX推進に寄与するでしょう。
 
職員事務改善提案制度 | 静岡県富士宮市



静岡県島田市

静岡県島田市では、生成AIを活用した日常業務の効率化に加え、作業時間を大幅に削減できた好事例が報告されています。

同市では令和5年4月から生成AI活用に向けて実証実験を進めていましたが、令和5年8月に行ったアンケート調査で、利用方法や質問力に課題があることが明らかになりました。そこで、対面やオンライン研修、金融機関との合同勉強会などを実施し、質問力の向上に注力した結果、徐々に活用が広がり、文章作成と校正・アイデア出し・情報検索など、さまざまな日常業務に活かされるようになりました。

庁内の職員提案による生成AIの活用では、「誰でも簡単にマクロが作れる!~生成AIを活用したExcelマクロのVBAコードの作成~」と題し、Excelのマクロを生成AIに作成させ、それまで8時間かかっていた作業を約1分にまで短縮した事例もあり、優秀賞に選れました。
また、特定のデータを取得し、回答に反映させる「RAG(ラグ)機能」を活用することで、自治体特有の情報を登録し、回答の精度も高められます。

同市は、今後RAGの活用も進めていくことを目標としており、さらに生成AIを活用した斬新な提案が期待できそうです。
 
令和5年11月定例記者懇談会 – 島田市公式ホームページ





職員提案制度の課題と対策

職員のアイデアが肝となる職員提案制度とは?成功事例や課題と対策を紹介

職員提案制度に取り組む一方、提案制度がうまく機能せず課題を抱えている地域も少なくありません。職員提案制度は導入するだけで終わりではなく、運用がうまく回っているかチェックすることも重要です。

ここでは、職員提案制度をより効果的に機能させるための改善事例を紹介します。



滋賀県草津市

草津市では、2017年から2022年の5年間で事務改善提案・新規アイデア提案の件数がほぼ横ばいで推移する一方、実現率は減少傾向にあり、その向上が課題でした。職員からは、職員提案制度の仕組みや課題の見つけ方・改善方法がわかりにくいことに加え、提案から実現までに時間を要する、提案内容の実現に職員の意見が反映されにくい、といった意見がありました。

そこで見直し案として、制度の周知や職員のスキルアップのために「職員提案制度ガイドブック」を作成し、業務改善の研修も実施されることになりました。また、効率的な提案・審査フローへ見直し、他部署の好事例なども発信するようにしました。提案の質向上のため、他自治体の事例を参考に、インセンティブの検討も行っています。
 
職員提案制度ガイドブック – 草津市



長野県長野市

長野市では、提案内容にひらめきレベルのものが多く、検討が不十分で実現性に乏しいものや、所管課ですでに検討済みの内容が含まれるなどの傾向が見られました。また、提案のしやすさを優先して氏名・所属を非公表としているため、再検討に向けた情報を提案者へ直接フィードバックできないといった課題もありました。

こうした制度運用上の課題を踏まえ、職員提案の種類に応じた表彰対象の見直しや、若手職員が提案しやすい環境を確保するため、入庁後5年以内の職員による提案については、総務部総務課が所管課への取り次ぎをサポートするなどの対策が進められています。

職員提案 – 長野市公式ホームページ





職員提案制度を利用して地域活性化につなげよう

職員のアイデアが肝となる職員提案制度とは?成功事例や課題と対策を紹介

職員提案制度から業務効率化や市民サービス向上につながった事例は多岐にわたります。さまざまな職員の提案を広く収集することは、庁内だけでなく地域にとっても有益なものを生み出すきっかけになるかもしれません。

ぜひ職員提案制度を積極的に利用できる環境を整備し、活用を検討してみてはいかがでしょうか。

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