古民家カフェを成功させるには? 地域活性化につながる自治体の支援を紹介
近年、地方に移住して古民家カフェを開業する人が増えています。空き家活用や関係人口の創出につながることから、古民家カフェを支援することは地域活性化につながる可能性があります。一方で、移住者によるカフェ運営は費用や集客など、さまざまな課題に直面することも少なくありません。
今回は、古民家カフェの開業の実態を踏まえ、自治体ができる支援や成功事例を紹介します。
古民家カフェとは?
古民家カフェとは、昔ながらの日本家屋をリノベーションし、カフェとして活用した店舗のことです。古い建物の外観や梁、畳などの特徴を活かしながら、水回りや空調などは利便性を考慮して現代的に整えるのが一般的です。こうした空間では、レトロで落ち着いた雰囲気の中で飲食を楽しむことができ、「非日常の時間」を提供できる点が大きな魅力とされています。都市部から離れた郊外や地方に多く見られ、忙しい日常を離れて癒しを求める人々から人気が高まっています。
古民家カフェの開業に注目が集まっている理由
古民家カフェの開業は、自治体にとって地方移住による人口増加や地域活性化につながると期待されています。また、開業者にとっても古民家は独自の雰囲気を活かした独自性の高い店舗づくりがしやすく、条件によっては初期費用や税負担を抑えられるメリットがあります。さらに、地域資源を活用したビジネスとして、観光や交流の拠点になりやすい特徴があり、移住と開業を同時に実現する手段として選ばれています。
初期費用を抑えやすい
古民家カフェは、新築店舗や商業施設内のテナントと比べて、物件取得時の初期費用を抑えやすい傾向があります。とくに地方では古民家が安価で手に入ることも多く、既存の建物を活かすことで内装工事を最小限にできる場合もあります。ただし、建物の状態によっては改修費がかかるため、事前の確認が重要です。
税制の優遇がある
古民家を活用する場合、条件によっては公的な支援を受けられます。たとえば、文化財や景観保全に関わる建物として評価されると、固定資産税の軽減措置が適用されるといったケースです。また、自治体によっては改修や再生に対する補助金制度が利用できることもあり、結果として運営コストの負担を抑えられる可能性があります。
古民家の魅力を活かしたコンセプトにできる
古民家は、建物自体が個性的な空間であるため、他のカフェにはない独自のコンセプトを打ち出しやすくなります。たとえば、「癒し」「レトロ」「リラックス」「和」といったテーマは相性が良く、木材の風合いや歴史を感じる造りを活かすことで、大がかりな内装を行わなくても特別感のある店舗づくりが可能です。
また、古民家カフェは海外からの観光客にも人気が高く、地域の文化や歴史と結びつけることでさらに魅力的なスポットとなり、集客につながることも期待できます。
古民家カフェを開業する人が直面しやすい課題
古民家カフェはさまざまな魅力がある一方で、実際の開業・運営にはいくつかの課題があります。とくに、建物の老朽化による改修費用の増加や、立地条件による集客の難しさ、地域との関係づくりなどは多くの開業者が直面する課題です。これらは事前の準備や情報収集によって対策できる部分も多く、自治体の支援が求められる分野でもあります。
改修費用が想定よりも多くかかる
古民家は見た目が魅力的であっても、必ずしもそのまま使える状態とは限りません。耐震補強や水回りの工事、断熱対策などが必要になることが多く、結果的に多額の費用がかかるケースがあります。とくに、耐震補強や配管・電気設備の更新などは必須となる場合があり、当初の想定よりも改修費用が大きく膨らむことがあります。
また、飲食店として営業するには保健所の基準を満たす必要があり、水回りや厨房設備の整備にもコストがかかります。結果として、低コストで開業できるというイメージとのギャップに悩むケースが少なくありません。
集客が難しい
古民家カフェは郊外や地方の自然豊かな場所や住宅地に立地することが多く、人通りの多いエリアに比べて集客に苦労する傾向があります。とくに開業初期は認知されていないこともあり、安定した来客数を確保するまでに時間がかかります。また、季節や天候によって来客数が大きく左右されることもあり、売上が不安定になりやすい点も課題です。遠くても足を運びたくなるように、SNSや地域の観光資源と連動した魅力的な情報発信など、継続的な集客施策が必要です。
地域住民との関係構築
古民家カフェは地域の中で営業することになるため、近隣住民との関係づくりが重要になります。騒音や駐車場問題などがトラブルになることもあり、開業前から丁寧な説明や配慮が求められます。また、地域イベントへの参加や、地元の食材をメニューに取り入れて地域経済に貢献しながら信頼関係を築くことが、長く営業を続けるためには重要です。
自治体がすべき支援
古民家でカフェを開業したいと考えても、最初に資金の問題に直面するケースは少なくありません。物件の雰囲気や立地は理想的でも、改修費や設備費の見積もりを見て計画倒れになってしまうことは珍しくありません。移住して古民家カフェを開業しようとする人を支援する制度を紹介します。
空き家バンクと物件マッチング
古民家カフェを開業したい人にとって、まずは条件に合う物件を見つけることが課題です。多くの自治体では「空き家バンク」の仕組みを用意しており、空き家の情報をまとめて公開しています。
空き家の活用を促進し、需給のミスマッチを解消するためには、できるだけ詳細な情報を開示することが重要です。たとえば、飲食店として使えるか、水道やガスは使えるか、どれくらい修理が必要かといった情報は、古民家カフェの開業を検討する人には必須の情報です。
そのため自治体は、単なる物件掲載にとどまらず、用途別に整理したデータベース化や、事業者目線で情報の付加を行うことで、実際の開業につながるマッチングを実現する必要があります。
自治体の空き家対策について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
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改修費や開業費を支える補助金制度
古民家カフェの開業に活用できる補助金は、国の補助金、自治体の補助金、空き家活用系の補助金の3つがあります。中でも、古民家カフェと相性が良いのが、自治体補助金です。空き家対策、地域活性化、観光振興といった目的で設定されているため、古民家の改修費、水回り工事、耐震補強、用途変更といった建物にかかる費用が対象になるケースが多いからです。
制度の有無や条件は地域によって大きく異なります。補助金制度のない自治体は、地域の需要を踏まえて制度の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
移住支援制度
自治体の移住支援には、古民家を改修し移住する人の支援、移住と就農を同時に支援、移住と同時に農業やその他の一次産業への就労を支援する制度があります。これらも補助金と同様に、地域によって支援の内容や実施の有無は異なります。金額も自治体によって異なりますが、リフォーム費用で50~100万円、工事費の2分の1までとするケースが一般的とされています。
自治体の移住支援について詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてみてください。
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古民家カフェの成功事例
補助金をうまく活用したり、官民協働で古民家再生に取り組んだりすることで、地域活性化に成功している地域の事例を紹介します。
三重県伊賀市:地域資源を活かして新たな価値を創出
株式会社七転八倒は、地域に残る古民家や里山といった資源を活かし、体験型事業として価値を生み出して地域活性化につなげたことで、農林水産省が実施する第10回「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」アワード(令和5年)で特別賞・新価値創出賞を受賞しました。
具体的には、空き家を改装した古民家カフェの運営を中心に、農業体験や林業講習、地元食材を使った料理のイベントなどを学生とともに取り組んでいます。発信・行動力のある学生と連携することで、都市部の人々を呼び込むことにつながっています。
また、地域の課題であった後継者不足の解消や雇用創出にも効果が見られており、今後の活動にも注目が集まります。
ディスカバー農山漁村の宝:農林水産省
千葉県流山市:古民家再生をきっかけに観光地へ成長
千葉県流山市に2016年にオープンした築100年以上の建物を活用したカフェでは、「流山本町・利根運河ツーリズム推進事業補助金」により、改修費や賃料の一部が支援され、開業につながりました。また、自治体が物件紹介やマッチングにも関与し、開業者と地域資源を結びつけています。さらに、物件所有者との良好な信頼関係や、地元業者との協力による改修を通じて、地域に根ざした店舗づくりが実現しました。補助金制度を立ち上げた古民家再生プロジェクトによって、流山を訪れる観光交流人口は年々増え続けており、街全体の活性化にもつながっています。自治体と事業者、地域住民が一体となって古民家再生に取り組んだことで成功した事例です。
流山本町・利根運河ツーリズム推進事業補助金|流山市
佐賀県嬉野市:手厚い支援で移住促進
千葉県から嬉野市へ移住した夫婦が、2022年に古民家を活用してカフェを開業しました。移住にあたっては、自治体の移住支援制度や空き家活用のサポートを受けることで、物件取得や改修がしやすくなり、補助金の活用により初期費用の一部を軽減できたため、開業が実現しました。嬉野市は「子育て世代HappyWelcome引っ越し応援金」「リモートワーク移住応援金」「HappyWelcome孫ターン応援金」など補助金制度が充実しており、移住のハードルを下げています。
地域おこし協力隊が移住者にお店を紹介したり、SNSからお店を知って訪れたりする人なども多いそうです。
開業後は地域住民との交流を深めながら営業し、観光客だけでなく地元客も集まる店舗として定着しています。需要に対してしっかり支援できる補助金制度があることや、地域住民と良好な関係を築くことが長く続く店舗にするポイントといえるでしょう。
嬉野市|移住・転入補助金(移住促進応援金)について
自治体の支援で古民家カフェから地域活性化につなげよう
古民家カフェを成功させるには、自治体による「移住支援」「空き家活用」「補助金支援」が大きく影響します。単に古民家を再生するだけでなく、地域住民との連携や地域資源の活用によって、新たな観光資源を生み出せる可能性もあります。
店舗が長く持続するよう、開業後も事業者に伴走しながら、地域活性化につながる施策に取り組んでみてはいかがでしょうか。



