避難所設置に女性の視点を!防災で求められる女性リーダーの重要性
東日本大震災など、これまでのさまざまな災害において、災害時の避難所運営における女性への配慮不足が大きな課題となっています。プライバシーの確保や衛生用品の配布、防犯・安全対策、避難所内での役割分担など、取り組むべきことは多岐にわたります。
今回は、避難における女性の課題を把握するとともに、女性の視点を考慮した避難への取り組みのポイント、事例を紹介します。
避難所で直面しやすい女性の課題
災害時の避難生活で女性が直面する課題は、主に、衛生・プライバシー・安全・負担の偏り・意思決定への参加不足などが挙げられます。避難所ではこれらの課題が重なり、健康状態の悪化や心理的負担につながりやすいとされています。
衛生用品の不足
避難所では、生理用品、下着、洗面用品、着替えなどが十分に届かない、または必要な量や種類が合わないといったことがあります。とくに生理用品は「1人1セット」のような一律の配布では、個々の状況や必要量の違いに対応できないケースが少なくありません。さらに、配布する人が男性職員であったり、追加で何度も申し出にくい雰囲気があったりすると、我慢して体調を崩すおそれがあります。
プライバシーの確保不足
避難所では仕切りや更衣室が少なく、着替えや授乳をする際にプライバシーが確保されにくい環境になりがちです。下着を干す場所がない、汚れた場所で着替えざるを得ない、といった状況も起こりやすく、日常のささいな行動にも気を使う場面が増えます。このような環境は、羞恥心などの心理的負担だけでなく、身体的な不快感や感染症リスクにもつながりかねません。
防犯上の不安
災害時は、避難所やその周辺で犯罪や暴力のリスクが高まりやすく、女性や子どもが不安を抱えやすくなります。夜間のトイレ移動、薄暗い施設、見知らぬ人が多い環境などが重なると、安心して眠ることすら難しくなり、健康への悪影響につながります。また、防犯対策が不十分だと、避難そのものをためらう要因にもなります。
家事・介護の負担増
避難生活では、女性に食事配布、片付け、子どもの世話、介護などの役割が偏りやすい傾向があります。平常時の家事や育児、介護などの役割分担がそのまま避難所に持ち込まれると、女性は自分のための時間が取りにくくなります。結果として、女性自身の体調回復や元の生活状態に戻ることが後回しになりやすくなります。
意思決定に参加しにくい
避難所の運営や物資配分、防犯、トイレ配置などの決定に女性の意見が十分反映されないことがあります。運営側が男性中心だと、女性が必要とする配慮が見落とされやすく、現場の困りごとが改善されません。女性が運営や意思決定に参加することで、衛生面や安全面の課題をより早く把握し、状況に対して適切な支援につなげやすくなります。
女性の視点を考慮した避難所づくりのポイント
女性の視点を考慮した避難所づくりでは、避難所の開設や運営、管理など、それぞれの段階において取り組む際のポイントがあります。
避難所の開設・運営における取り組みのポイント
避難所を開設する際は、位置、規模、施設構成をあらかじめ計画し、女性・男性双方のニーズに対応できるような設計をします。管理責任者に女性を配置する体制を規程に取り入れ、避難所の運営組織にも女性が参画するように促すことが重要です。
避難所の空間設計では、男女別トイレ、授乳室、更衣室、物干し場、多目的トイレの配置を考慮し、女性用トイレは利用者数や利用時間を考慮し、十分な数を確保するよう配慮します。また、照明や導線についても、夜間でも安全に移動できるよう設計します。
備蓄・準備段階における取り組みのポイント
生理用品、下着、洗面用品、クリームなどの女性用品の備蓄量を確保し、配布場所と受け取り手続きを事前に決めておきます。避難者名簿に個人情報の開示・非開示を選ぶ欄を設け、プライバシー管理を徹底することも忘れずに行います。
また、避難所チェックシートを作成し、女性・男性双方のニーズの違いをチェックできる仕組みを作ります。避難所の生活環境改善のため、女性の応援職員、男女共同参画担当部局と連携して巡回指導を行う体制や、女性団体と連携して、不安や悩み相談の窓口対応ができるようにしておくことも重要です。
運営段階における取り組みのポイント
避難所の管理責任者に女性が参画し、リーダーシップを発揮できるようにします。生活ルール作りには女性の意見を反映し、食事作り、片付け、警備などの役割を性別で固定化せず、特定の性別に偏らないように分担します。
防犯対策として、たとえば、女性用トイレや更衣室には女性が巡回し、警備は男女ペアで行うようにします。また、プライバシーが確保しにくい環境だからこそ、女性が相談しやすい窓口を設けることが重要です。避難所チェックシートで定期的に女性のニーズへの対応を確認したり、意見箱で女性の声を収集するなど、改善への取り組みも行います。
女性に配慮した避難所づくりの事例
東日本大震災や能登半島地震のような大規模な震災によって、避難所では多くの課題が発生しましたが、同時にさまざまな取り組みも行われています。ここでは、女性が避難所で支援する側として活躍した事例や、女性に配慮した支援が行われた事例を紹介します。
避難所等での女性の視点からの取組ポイント・事例| 内閣府男女共同参画局
女性リーダーが避難所運営に協力(石川県能登町)
能登半島地震の際、防災士の資格をもつ女性公民館長が、役場職員とともに避難所運営の役割を細分化しました。炊事や健康管理などの担当やリーダーは、性別ではなく個人のスキルや知識を踏まえた適性に応じて決められました。
また、石川県防災士会と連携した支援も行われ、男性トイレの中に着替え用の紙パンツや尿漏れパッドを置くなど、性別や年代に偏らず、避難者の課題に向き合いました。避難所運営において老若男女問わず役割分担を行ったことも、避難所の問題解消に貢献しました。
避難所における女性専用スペースの開設(福島県)
東日本大震災が発生した際、福島県郡山市の「ビッグパレットふくしま」は避難者であふれる状況に陥りました。こうした状況を受け、県庁から避難所運営支援チームの担当者が派遣され、女性たちが避難所で安心して過ごせるように女性専用スペースが設置されました。その後、福島県男女共生センターが中心となって運営支援を開始し、郡山市男女共同参画センターや郡山市内の女性団体が連携することで、女性を支援する環境づくりに成功しました。日頃から築いていたネットワークや各団体のノウハウをうまく活用できた事例です。
女性のニーズに寄り添った物資の支援(宮城県登米市)
東日本大震災後、登米市の避難所に暮らす女性を支援することを目的として、有志による「宮城登米えがおねっと」が結成されました。登米市市民活動支援課と協力して、市内の避難所に避難している430名の女性を対象にニーズ調査を行い、「パーソナルリクエスト票」という調査票を作成しました。
パーソナルリクエスト票は、中身が見えないように折って回収する作りになっており、身長や体形、年代のほか、使用している化粧品や生理用品のメーカー、下着のサイズなどを記入してもらう仕様です。パーソナルリクエスト票の配布・回収、データの整理は、市の担当職員が行いました。
その結果、市が後方支援していると情報発信することで信頼が得られ、企業などから多くの物資が集まるとともに、回答者一人ひとりのニーズに合うものを配布することができました。
女性の視点で避難における課題解決方法を考えましょう
避難所において、女性ならではの課題は多岐にわたります。避難所のリーダーや職員にはどうしても男性が選ばれがちですが、女性にしかわからない悩みを相談できる環境を整えることは、心理的な負担だけでなく、不安からくる健康悪化などの身体的負担の解消にも欠かせません。避難生活は、いつ、どこで必要となるか予測できないからこそ、平常時に体制を準備しておくことが重要です。地域の団体との連携も視野に入れながら、これからの避難所に必要なことを検討してみてはいかがでしょうか。
災害対応力を強化する女性の視点 | 内閣府男女共同参画局



