サイネックス・マガジン

「点」をつなぎ「面」で楽しむ―二次交通の再編による広域周遊を促す移動戦略(前編)

目次
  1. 観光消費額を最大化する「二次交通」とは
  2. なぜ今二次交通が廃れていっているのか
  3. 二次交通の利便性を改善
  4. なぜ「検索される交通」が不可欠なのか
「点」をつなぎ「面」で楽しむ―二次交通の再編による広域周遊を促す移動戦略(前編)

新幹線駅や空港などの交通拠点から、地域の観光名所や宿へ向かうための「二次交通」。実は今、この移動のしやすさが、地域としての魅力を決めると言っても過言ではありません。
 
「移動手段が少なくて、観光客がすぐに帰ってしまう」「バスやタクシーの利用者が減り、維持していくのが厳しい」そんな悩みを抱えている自治体は多いのではないでしょうか。本記事では、地域の移動を便利にしながら来訪者を増やし、地元で長く愛される交通手段を残していくためのヒントをわかりやすくご紹介します。



観光消費額を最大化する「二次交通」とは

「点」をつなぎ「面」で楽しむ―二次交通の再編による広域周遊を促す移動戦略(前編)

二次交通とは、空港や駅などの主要な拠点から、観光地や宿泊施設までの移動手段を指します。旅行先を検討する際、観光客をはじめとする来訪者は「アクセスの良さ」を宿泊先選びやプラン選択の決め手にします。移動のストレスは再訪を妨げる大きな要因となりますが、逆に二次交通が整備されたエリアでは、来訪者がより多くの店舗や施設に立ち寄るため、地域全体の経済波及効果が期待できます。来訪者を「点」で止めず「面」で回遊させることこそ、地域活性化への近道です。



なぜ今二次交通が廃れていっているのか

二次交通が衰退する最大の理由は、「人口減少」と「効率性を重視した交通運営と地域の実情とのずれ」、そして運転手の高齢化が挙げられます。かつては公共交通が住民の生活基盤でしたが、自家用車の普及と少子高齢化で利用者が激減。結果、交通事業者は赤字路線を維持できず、減便や廃止を余儀なくされました。さらに、観光客にとっても「時刻表が複雑でスマホで検索できない」「駅から先が不便」という状況が放置され、「そこに行く手段がない」という理由で観光地としての選択肢から外れる負の連鎖が起きています。
 
「交通を維持する」ことを事業者任せにしてきた地域構造の限界が今、顕著に表れています。交通を単なる「インフラ」と捉え、経済循環の装置として機能させられなかった点が、衰退の核心です。
 
(参考)
地方部における観光と二次交通の現状に関する調査 | 国土交通省 北陸信越運輸局(令和 8 年3月)



二次交通の利便性を改善

「点」をつなぎ「面」で楽しむ―二次交通の再編による広域周遊を促す移動戦略(前編)

二次交通の課題を解決する鍵は、既存の資源を工夫して使い、地域全体で受け入れる体制を作ることにあります。しかし、具体的に何から始めればよいのでしょうか。全国には、限られた予算や人員という共通の悩みの中、アイデアと官民の連携によって来訪者の足を見事に確保した自治体が数多く存在します。大切なのは、最初から完璧を目指すのではなく、まずは「来訪者の視点」に立って移動の不安を取り除くことです。本項では、予約制乗合タクシーやMaaS、グリーンスローモビリティなど、各地で成果を上げている具体的な成功モデルを紹介します。



「予約制乗合タクシー」による直結型モデル

主要な拠点から観光地まで、公共交通の便が悪い区間を直接結ぶ予約制の乗合タクシーは、多くの地域で成果を上げています。バス路線の廃止エリアでは、地域のタクシー事業者と連携した予約型乗合タクシーや、公共ライドシェアの活用が極めて有効です。空港や新幹線駅から観光地までを直結する予約制サービスは、観光客の心理的なハードルを大きく下げます。
 
秋田県の「あきたエアポートライナー」では、地元の交通事業者や観光協会が連携し、空港と主要観光地を結ぶ予約制の乗合タクシーを運行することで観光客の不安を払拭しました。
 
(参考)
空港間及び二次交通のネットワーク形成を活かした官民連携手法調査業務報告書(秋田県)



「観光型MaaS」によるシームレス化

スマートフォン1つで移動から観光情報までを完結させる仕組みは、観光客の回遊性を劇的に高めます。
 
神奈川県三浦半島の「三浦COCOON」では、デジタルチケットの購入や混雑状況の確認、交通検索までを1つのプラットフォームに集約しました。これにより、「どのバスに乗ればいいかわからない」「チケットの買い方が複雑」といった訪日客や若年層の不満を解消し、スムーズな移動体験を提供しています。
 
(参考)
国土交通省:観光型MaaS「三浦COCOON」の実装による分散化・混雑回避事業



「グリーンスローモビリティ(グリスロ)」による体験型移動

時速20km未満のグリスロは、従来のバスでは入れない狭い路地を走行できるため、古い町並みが残る観光地との相性が抜群です。移動そのものが体験コンテンツとなり、関係人口の創出にも寄与します。
 
島根県大田市の石見銀山で導入されている「ぎんざんカート」は、世界遺産の街並みに適した移動手段として住民にも利用され、観光客にとっても風景をゆっくり楽しめるアクティビティとして定着しました。街歩きを楽しくするツールとしてブランディングすれば、徒歩よりも効率よく、タクシーよりもゆっくりと街の魅力を発見できる、唯一無二の移動体験を提供できます。
 
(参考)
島根県大田市観光サイト



なぜ「検索される交通」が不可欠なのか

「点」をつなぎ「面」で楽しむ―二次交通の再編による広域周遊を促す移動戦略(前編)

近年の旅行者、とくにデジタルネイティブ世代や訪日客は、目的地へのルートをスマホの地図アプリで検索してから行動します。もし、地元のバスやタクシーがそこに出て来なければ、彼らにとってその移動手段は「存在しない」のと同じです。どれだけ魅力的な観光地があっても、たどり着く方法がわからなければ、選ばれることはありません。
 
まずは、国土交通省が推奨する「GTFS-JP」という共通形式で時刻表や乗り場をデータ化してみましょう。地図アプリで見られる状態にすることは、人流を呼び込むための最低限かつ最優先のDX戦略です。情報整備というデジタルな入り口を整えることこそ、観光客が安心してあなたの地域を選び、訪れるための最初の一歩となります。
 
ここまでは前編として「二次交通」とは何か、二次交通の利便性の改善に成功している自治体の紹介など幅広くご紹介しました。次回の後編では具体的な対策についてご紹介します。
 
(参考)
公共交通政策:公共交通運行情報標準データ(GTFS-JP)に関する資料・検討会 – 国土交通省



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