関係人口の有力候補は“帰省する人” 元居住者に注目! 移住・定住につなげるための施策を紹介
近年、地域への移住・定住を促進させるために、関係人口の増加に取り組む自治体も少なくありません。地域にゆかりのない人を呼び込むことも重要ですが、出身者や過去に住んだことがある人へのアプローチは、移住につながりやすいと考えられます。今回は、関係人口となる可能性がある出身者や地域にゆかりのある人を移住・定住につなげるための施策や成功事例を紹介します。
関係人口とは
関係人口とは、総務省の定義によると地域や地域の人々と多様に関わる人々のことを指します。関係人口と類似した言葉に定住人口や交流人口などがありますが、定住人口はその地域に生活の拠点を置く人、交流人口は地域外から通勤・通学・観光・レジャーなどで訪れる人を指します。
観光で一度だけ訪れたことがあるだけの人は交流人口ですが、地域に何度も訪れ、その地域への親しみや愛着を深め、将来的には定住する可能性がある人が関係人口と見なされるため、地域への移住・定住促進に取り組む際は、関係人口の人数が注目されます。
総務省|地域力の創造・地方の再生|関係人口・ふるさと住民
元居住者の重要性
出身者や元居住者がすべて関係人口に該当するわけではありません。しかし、地域への愛着や継続的な関わりをもちやすいため、関係人口となる可能性が高い層と考えられています。地方に住んだ経験のない人と比べて、Uターンや二地域居住へのハードルが低い傾向があるため、移住・定住につながることが期待されます。
また、家族や友人など地域内に人脈をもっている場合も多く、地域に溶け込みやすいという特徴もあります。自治体にとっては、新たな移住者を呼び込むだけでなく、地域にゆかりのある人との関係を深めることで、将来的な移住・定住や地域活動への参画につなげられる可能性があります。
2020年に1都3県以外の全自治体(市町村)を対象に行った移住定住施策に関するアンケート結果によると、地域の「出身者」を移住施策のターゲットとしている市町村は63%であり、「子育て層」「夫婦」に次いで3番目に多いという結果でした。「出身者」のUターンをターゲットにしている自治体も多く見られるという報告もあります。このアンケート結果からも、移住支援における元居住者への注目度が分かります。
「地方への人の流れの創出」に向けた効果的移住定住推進施策事例集(総務省)
関係人口を移住・定住につなげる施策
元居住者は移住・定住につながりやすいと考えられ、さらに可能性を高めるために、さまざまな施策が取り組まれています。地域とすでにつながりがあるため、慣れ親しんだ土地である安心感や愛着に加え、自治体からの支援があることで、より移住のハードルが下がることが期待できるでしょう。
Uターン就職・地元企業マッチング
地域への移住・定住を促す代表的な施策としてUターン就職があります。進学・就職を機に県外へ引っ越した人が将来的に地元にUターンすることを促すため、国の移住支援金のほか、独自で支援制度を設けている自治体もあります。内容や対象は自治体によって異なりますが、Uターン移住者に対し住宅助成金や、Uターン就職のための交通費・宿泊費補助を支給しているところがあります。
また、地元の大学と連携して卒業生の地元定着の促進や、地元企業とのマッチング・インターンシップの支援も実施されています。
お試し居住・二地域居住支援
移住を検討するときに、住まいに関する初期費用の負担が大きいことを懸念する人も少なくありません。
お試し居住支援には、一定期間の住居を無償で提供する「お試し住宅制度」や、定住を前提に家や土地を支給する「家付き支援制度」、家賃の一部を補助する制度などがあります。自治体によって、対象に年齢や世帯構成に関する条件を設けたり、移住目的や就業予定の有無を要件にしたりしています。
二地域居住支援には、都市部と地方部を行き来する際の交通費を補助する「交通費補助」やセカンドハウスを購入する際の資金の補助として活用できる「住宅取得支援金」などがあります。
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地域コミュニティの紹介・参加の後押し
出身者が地元に戻ることを検討するとき、地域コミュニティとの交流があることは、移住後の精神的な安心感につながります。旧知の友人や知人との再会、地域の行事への参加などを通じて、深い人間関係を形成しやすくなるでしょう。たとえば、伝統的な祭りや地域のボランティア活動、清掃活動などを通じて、住民同士が交流できる地域も多く見られます。
また、さまざまな農業体験などの体験プログラムを実施する地域も多く、実家や知り合いなど、これまで培ったコミュニティで得た経験とは異なる新しい地域の魅力に出会える機会も創出します。
子育て支援
自治体の子育て支援は、移住・Uターンを後押しする代表的な支援です。医療費助成、保育所・こども園の利用枠、入園料や給食費の補助、出産・子育て応援金など自治体によって内容はさまざまですが、これらの支援や子育てしやすい環境は、地元に戻る決断を促す材料になります。
また、親の介護が必要となった場合にも、都市部では子育てと介護の両立は困難ですが、地方で親の近くに住まいを持つことでサポートしやすくなります。
元居住者が移住・定住につながった成功事例
全国各地で、関係人口の拡大と連動する形で移住支援が取り組まれていますが、中でもとくにUターンの支援に力を入れたり、元居住者向けに情報発信をしたりしている地域の成功事例を紹介します。
新潟県佐渡市
佐渡市では、広報に力を入れたことで、関係人口の拡大だけでなく、U・Iターンや移住につなげるところまでに成功しています。
佐渡にゆかりのある20〜30代の若者で作られている「佐渡部」は、佐渡を離れたとしても地元とつながりをもち続けてほしいという思いから始まりました。令和5年には部員数は約100名となり、年1~2回ほど、東京や新潟でイベントを実施しています。たとえば、佐渡とのつながりをもってもらう機会として、成人式やU・Iターンフェアで佐渡の魅力や移住に関する情報発信を行った結果、15名ほどの佐渡部出身者が移住につながりました。
また、定住へつなげる施策として「さど暮らしサポーター制度」があり、移住者・移住希望者向けの悩みや困りごとの相談窓口となっています。こうした移住支援の取り組みは市民が自発的に関わることで実現しており、民間とうまく協力できていることが成功につながっていると考えられます。
佐渡UIターンインフォメーションセンター
石川県かほく市
かほく市では、ターゲットを石川県内在住者、石川県外在住者に分けて、シティプロモーションに取り組んでいます。具体的には、それぞれをターゲットとしたCMを制作し、周知・広報を実施しています。県内在住者向けのテーマは「妻の機嫌がいい編」と題し、住まいサポートや子育て支援の充実、遊べる公園や施設が豊富であることなどをPRしています。一方、県外在住のかほく市出身者向けには、「シビックプライド編」と題し、懐かしさを感じてもらえるような故郷の景色がテーマです。テレビ、YouTube・Instagram広告、映画館での幕間等で放映するための短編CMも制作し、SNSも活用して幅広い広報活動に取り組んでいます。
また、子育て支援制度や住まいに関する補助金制度等、結婚、出産、育児まで若者や子育て世代にとって魅力ある施策を展開し、近年は順調に人口が増加しています。
移住者に子育て世代が多いことや市の取り組みの認知度が低いことなど、現状をしっかり把握した上で、適切な施策に取り組んでいるといえるのではないでしょうか。
かほく市移住定住PRCM(妻の機嫌がいい編)| 石川県かほく市公式チャンネル
鳥取県琴浦町
琴浦町は、近年移住者が増加しており、中でもUターンの移住者が多い地域です。最新の民間事業者の「住みたい田舎」ベストランキング(人口1万人以上2万人未満のまち)で全国1位を獲得しました。
この背景には、住民の積極的な定住フォローがあります。まず、地元の有志によるコミュニティづくりとして、毎月1回程度移住者と地元民が集まって交流や遠足、餅つきといったイベントを開催し、移住者の情報交換や知り合いづくりの場となっています。また、地域に愛着をもつ住民が多く、住民が核となって積極的に移住者を歓迎し、受け入れやすい雰囲気づくりをすることで、移住者が安心し、スムーズに地域になじむことにつながっています。
地元住民が主体となった移住者へのフォローがうまく機能し、Uターンの移住者増加につながっていると考えられます。
5年連続全国ベスト3達成!! 宝島社「2026年版 住みたい田舎ベストランキング」 | 鳥取県琴浦町
関係人口のニーズに合った支援に取り組みましょう
地域の出身者や過去に住んだことがある人は、地域に愛着や旧知のつながりがあることで、移住・定住する可能性が高いとされます。こうした人々が移住を検討するときに、適切な支援があることは地域に戻る決断の後押しとなるでしょう。
地域の住民が移住支援に関わることも重要であり、自治体が民間と協働で支援に取り組むことで効果が高い支援となる可能性があります。現状の関係人口・移住者の実態と求められている支援を把握することから始めてみてはいかがでしょうか。



