学校の統廃合に必要なのは合意形成! メリットや進めるときの注意点も紹介
少子化が急速に進む中、公立学校の統廃合に関する検討が求められている自治体も多いのではないでしょうか。
学校の統廃合は児童生徒にとっても、教員にとってもメリットがある一方、児童生徒への身体的・精神的負担や地域への影響も考慮が必要です。
また、統廃合を進める上で大事となるのが住民との合意形成です。本記事では学校統廃合が進められてきた背景、メリットやデメリット、合意形成の重要性について紹介します。
文部科学省による学校の適正規模基準と統廃合の実態
1957年にはじめて文部科学省が「学校統合の手引」を作成し、以降、学校規模の適正化や適正配置(通学条件)の見直しがされてきました。2015年に改定された「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」では、従来の12〜18学級といった学校規模の標準に加え、標準を下回った場合の対応の目安が細かく提示されました。
たとえば、1〜5学級の小学校において、学年が違う生徒で編成される複式学級がある場合、適正規模に近づけるために学校統廃合などの対応を速やかに検討する必要があるなど、統廃合を進行させる方針が定められました。
近年の統合数の実態については、文部科学省が行った「令和5年度学校規模の適正化及び少子化に対応した学校教育の充実策に関する実態調査」で明らかとなっています。1764の市区町村教育委員会等を対象に、2022~2023年度の2年間における統合事例について調査されました。
全国の総数は、2022年度が160件、2023年度が132件、複数年度にまたがった事例が1件の計293件でした。そのうち、小学校同士の統合が167件、中学校同士の統合が66件、小学校と中学校を統合した事例が49件と、小学校が多い傾向にあります。
文部科学省:公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引
文部科学省:令和5年度学校規模の適正化及び少子化に対応した学校教育の充実策に関する実態調査
学校統廃合が進められる背景には少子化がある
少子化により小・中学生の数は減少を続けており、標準規模に満たない学校が増えてきたことが学校の統廃合を推進させる最も大きな理由の1つといえます。
標準規模以下の学校では、生徒にも教員にもデメリットがあります。
生徒側には、単学級の場合はクラス替えがないため人間関係が固定され、問題が起きた際に解消するのが難しい、心機一転する機会が得られないなどが挙げられます。また、クラブ活動や学校行事が制限されてしまう、行事を開催しても盛り上がりに欠けてしまうといった課題もあります。多様な考え方に接する機会が少なくなることも、教育への影響の1つになるでしょう。
教員側には、学校行事の準備に人手が少なく負担が大きくなることが挙げられます。また、教員が少ない中で多様なアイデアが出にくく、相談相手がいないことも業務に影響すると考えられます。
こうしたデメリット解消方法の1つとして、統廃合が検討されることになります。
学校統廃合のデメリット
少子化が原因で進めた学校統廃合が、デメリットとなる場合もあります。学校がなくなることによる影響は、保護者・児童生徒だけでなく、地域に影響する可能性も考えられます。
学校統廃合によるデメリットを事前に把握し、学校と地域、保護者が協力することが大切です。
通学環境・手段や教育環境の変化により保護者や児童の負担が増える
統廃合によって通学環境や通学手段が大きく変わる場合に、新たな通学路の安全性が確保されているか確認する必要があります。学校は地域や保護者と協力し、安全な通学路決定のための調査を行います。
交通量の多い道路を通ることになったり、猛暑や悪天候の中でも毎日長時間かけて通学しなければならなかったりするケースも考えられます。
場合によってはスクールゾーンを定めたり、交通規制を行ったりといった整備も必要です。
スクールバスや公共交通機関を利用しなければ通学が難しい生徒も出てくるでしょう。運行状況によっては、親の送迎が必要になる場合も考えられます。
また、教育環境が大きく変わることで、児童生徒への身体的、精神的疲労の影響が懸念されます。新校舎や新しい集団へ適応することに精神的疲労を感じる児童も少なくないでしょう。また、長距離通学が必要になる児童は身体的疲労も生じます。
通学に時間を取られることで、友達と遊んだり習い事に通ったりする時間が確保できず、結果として学校以外の活動が制限されてしまうことになります。
学校の規模が大きくなり生徒数が増えると、委員会や行事の役割が足りず、一人ひとりの活躍する場がなくなることも考えられるでしょう。
人口減少により地域衰退を進める可能性がある
統廃合が地域の衰退につながる可能性もあると考えられています。
学校は学びの場としてだけではなく、避難所、遊び場、地域のイベント会場など、地域住民の交流の場としての役割も果たします。そのため、統廃合によって学校がなくなる場合、こうした地域住民の交流の場もなくなることになります。
また、統廃合によって長距離通学になることを避けるため、新校舎近隣への転居を検討する人も増えるかもしれません。すると地域の子どもの人数は減り、結果的に地域の衰退が進む恐れがあります。
学校の統廃合がもたらすメリット
一方で、学校の統廃合が進められる背景には、教育活動、人間関係、社会性など多くの面でメリットがあることが挙げられます。これらのメリットは、児童生徒だけでなく教員にもよい影響があるとされています。
以下では、具体的にどのようなメリットがあるのかを紹介します。
多様な人間関係によるコミュニケーション能力や社会性の向上
学校の規模が大きくなることは、他者とのつながりが広がり、人と関わる機会が増えるため、コミュニケーション能力の向上が期待できます。
また、運動会・文化祭・遠足・修学旅行といった学校行事や集団行動を通じて多様な考えに触れ、互いを認め合い、協力し合いながら切磋琢磨することで一人ひとりの個性や資質を伸ばす機会が生まれます。
さらに集団の中での振る舞いや規律を守る姿勢を身につけることは、社会性の成長にもつながります。
クラス替えがなかった学校の場合は、クラス替えが可能になることで人間関係が固定されることなく、新たに人間関係を構築する力もつけられます。
大人数の中での生活を経験することは、多様な意見や考えに触れる機会が増えるため、児童の成長や能力向上につながるといえるでしょう。
適正人数による教員の指導力アップ
教員の人数が増えるため、単純に一人の教員にかかる業務や行事の負担が軽減されます。少人数では盛り上がりに欠けていた学校行事も活気が出たり、クラブ活動や部活動の指導者も確保できたりといった授業以外の教育の場が広がります。
これらを通じて生徒のよさが多面的に見られる機会が増え、教育効果のアップが期待できます。集団指導・少人数指導の両方が可能になるため、それぞれのよさを生かした指導を実現できるでしょう。
また、教員同士で意見交換や指導のノウハウ共有が進むことで、指導方法の幅が広がり、授業の質の向上が期待されます。さらに、学校が抱える課題や問題に対応しやすくなる点も、メリットの1つです。
学校運営における教育・財政面の負担軽減
学校運営側では、教員を柔軟に配置できるというメリットがあります。
たとえば、小学校では専科教員を配置し、中学校では全教科に専任の教員を配置することが可能です。教員の特性・経験・専門教科を考慮し、バランスよく配置をすることもできます。学校運営を複数の教員で担うことで、一人ひとりの負担も軽減されます。
財政面では、児童生徒1人当たりにかかる経費を抑えられる点が挙げられます。
学校の統廃合における合意形成の重要性
学校の統廃合において、行政と住民がもめるケースは少なくありません。
過去には、統廃合を強行しようとして住民から大きな反感を買い、統廃合の可否そのものを見直すことになった例もあります。そのため、統廃合を進めるにあたって、住民の合意形成は容易ではありませんが不可欠であると考えられます。
統廃合を進める際の合意形成の第一歩は、地域にとって「母校」であり「シンボル」であるものがなくなるといった住民感情に寄り添うことです。その上で、現状の課題を見える化し、住民に丁寧に情報共有を行うことが重要となります。自治体の教育ビジョンをもとに、充実した教育環境が提供できているか、教育活動に課題がないかなどをデータや資料を用いて共有します。
さらに、教育面の課題だけでなく、長期的なまちづくりの観点からも検討が必要です。将来の児童生徒数の減少見込みを正確に把握した上で、検討が必要となる時期についても伝えます。また、先行事例を調査し、統廃合による効果の見通しも共有するとよいでしょう。
アンケートや公聴会を随時実施し、地域住民が本当に何を望んでいるかを把握しながら協議を進めていくことが重要です。
学校の統廃合は慎重に進めましょう
少子化が進む中、学校統廃合の数も高止まりしているのが現状です。
統廃合によって人間関係や教育指導の面で一定のメリットが期待できる一方、進めるにあたってはさまざまな課題もあります。
中でも、統廃合をスムーズに進めるためには、住民との合意形成が重要なポイントの1つです。
統廃合を検討する際には、地域住民とこまめにコミュニケーションを取ることを意識して進めるようにしましょう。



