「点」をつなぎ「面」で楽しむ―二次交通の再編による広域周遊を促す移動戦略(後編)
新幹線駅や空港などの交通拠点から、地域の観光名所や宿へ向かうための「二次交通」。実は今、この移動のしやすさが、地域としての魅力を決めると言っても過言ではありません。
「移動手段が少なくて、観光客がすぐに帰ってしまう」「バスやタクシーの利用者が減り、維持していくのが厳しい」そんな悩みを抱えている自治体は多いのではないでしょうか。本記事では、地域の移動を便利にしながら来訪者を増やし、地元で長く愛される交通手段を残していくためのヒントをわかりやすくご紹介します。
今回は後編として、二次交通の具体的な対策を解説します。
地域一体となったプロモーションとブランディング
二次交通は、単なる「移動手段」としてだけでなく、旅を盛り上げる「楽しみの1つ」として発信してみてはいかがでしょうか。移動時間をただの待ち時間にするのではなく、ガイドによる楽しい解説や、車内での地元産品の販売など、地域ならではの演出を加えてみましょう。
たとえば、絶景を楽しむ観光列車のように「乗ること自体が旅の目的」になるような仕掛けがあれば、移動は旅のメインコンテンツに生まれ変わります。また、観光サイトでは交通情報を迷わず探せるよう工夫し、宿泊施設とセットでお得な周遊パスを用意するのもおすすめです。デジタルスタンプラリーなどを通じて、地域全体を回遊する仕組みを整えれば、観光客はもっと長く、楽しく地域に滞在してくれるはずです。点ではなく「面」で地域を楽しんでもらう工夫が、経済効果を広げる一番の近道です。
移動時間を「コンテンツ化」してストーリー性のある移動体験を創出する:五能線「リゾートしらかみ」(青森県・秋田県)
二次交通を単なるインフラではなく、「旅のコンテンツ」として発信することが重要です。
青森県・秋田県の五能線「リゾートしらかみ」のように、景勝地で徐行運転を行うなど、移動そのものを絶景体験としてブランディングすれば、移動時間は旅のメインコンテンツになります。また、観光ポータルサイトでの交通情報への導線強化や、周辺店舗と連携した共通パスの発行などを組み合わせることで、エリア全体の消費を押し上げます。
(参考)
政府広報オンライン:五能線で巡る日本海と世界遺産の絶景
デジタル技術を旅の手間を減らす魔法としてわかりやすくアピール:徳島県鳴門市「スマート案内MaaS」
便利なツールを用意するだけでなく、それを使うと旅がどれほど快適になるかという「ベネフィット」を伝える工夫が必要です。徳島県鳴門市の「スマート案内MaaS」では、アプリやログインを不要にし、「スマホをかざすだけ」で利用できることを分かりやすく打ち出しました。機械に不慣れな層や外国人観光客にも、「これなら自分でもできる」という安心感を与えるコミュニケーションが、DX導入の成功を左右します。
(参考)
国土交通省:MaaS等の新たなモビリティサービスの推進について
シェアサイクルで叶える「小回りの利く観光」:香川県高松市レンタルサイクル
バスやタクシーが足りない観光地では、シェアサイクルが強い味方になります。自分の好きなタイミングで、自由に街を回れる手軽さは、外国人観光客にも大人気です。
香川県高松市では、市が運営するレンタサイクルに加え、民間シェアサイクルサービスも導入され、街中のあちこちに借りられる拠点(ステーション)が広がっています。これにより、公共交通では行きにくい路地裏の名店や穴場スポットへも気軽に行けるようになり、観光客が街を回る範囲も広がりました。小回りの利く移動手段を整えることは、観光客の満足度を高め、地域のお店にお金が落ちる仕組みを作るための一歩になります。
(参考)
レンタサイクル事業|高松市
地域全体で連携し移動の不安を解消する:京都丹後半島「海の京都」
移動の難易度が高い半島エリアで、鉄道と二次交通をシームレスにつないだ成功例です。京都丹後鉄道とDMO(観光地域づくり法人)が密接に連携し、鉄道から駅周辺のバス、タクシー、レンタサイクルまで、地域の移動手段を1つのブランドの下で網羅的に情報提供しています。重要なのは、バラバラだった交通情報を「海の京都」という共通ブランドのもと、エリア内の移動手段を一元的に発信することで、観光客に「ここへ行けば、この方法で安心して動ける」という確かな信頼感を与えています。交通事業者と観光組織が一体となり、地域の情報を網羅的に管理・発信したことが、観光客にとっての心理的なハードルを下げ、広域的な周遊を促すことに成功しました。
(参考)
近畿運輸局地域公共交通優良団体表彰 – 近畿運輸局
一般社団法人京都府北部地域連携都市圏振興社・丹後海陸交通株式会社
持続可能な地域運営へ―地域総力戦で挑む二次交通改革
二次交通を維持していくにはコストがかかるため、自治体の予算だけで賄い続けるのは難しいのが現実です。そこで大切になるのが、国の補助金などを活用して「仕組み」そのものを変えていくことです。
成功の鍵は、交通事業者任せにせず、宿泊施設や観光協会など、地域全体でリスクと利益を分け合う体制を作ることです。たとえば、宿泊施設がバスの運営費を少しずつ負担する代わりに、宿泊客へ無料乗車券を配るような工夫をすれば、地域全体で観光客を呼び込めます。外部の支援をきっかけにしつつ、地域の中で「移動」を維持するための経済循環を生み出すこと。それが、次世代に地域を引き継ぐための持続可能な仕組みづくりにつながります。
地域が一体となって支える周遊バス:長野県小布施町「おぶせロマン号」
長野県小布施町の周遊バス「おぶせロマン号」は、地域が一体となって支える理想的な官民連携の成功例です。
最大のポイントは、単なる観光用にとどまらず、地元住民の足としても使えるよう設計したことです。日常的な利用を促すことで採算性を高め、持続可能な仕組みを作りました。
さらに、飲食店と協力して「バス利用者への特典」を設けることで、商店街へ観光客を自然に誘導しています。ただ移動させるだけでなく、バスを起点として地域全体でお金が回る工夫を凝らしている点が特徴です。行政・事業者・店舗が手を取り合い、公共交通を使って街の活性化を実現した素晴らしい取り組みです。
(参考)
【令和8年度】周遊シャトルバス「おぶせロマン号」の運行について – 小布施町
回遊性の高い街づくり:兵庫県豊岡市「城崎温泉」
兵庫県豊岡市の城崎温泉は、温泉街全体を1つの大きな宿と捉えた「回遊性の高い街づくり」で成功しています。
最大の特徴は、移動手段の共同化です。各旅館が個別に送迎車を出すのではなく、地域共通のシャトルバスを運行。駅や各宿、外湯(温泉施設)への移動を無料や低料金でカバーすることで、観光客が身軽に街歩きを楽しめる環境を整えました。
この仕組みにより、各宿は送迎コストを抑えつつ、お客様には利便性という価値を提供できています。効率的なリソース活用で温泉街全体のブランドを守り、滞在の満足度を最大化させる。まさに、官民が一体となって「歩いて楽しい温泉街」を実現した優れた取り組みです。
(参考)
城崎地域の取組み紹介|豊岡市公式ウェブサイト
観光客の利便性と地元住民の生活利用の両面から再構築:北海道帯広市「十勝バス(観光・生活一体型バス)」
北海道帯広市の「十勝バス」は、観光客と住民の双方を支える持続可能な公共交通モデルを確立しています。
同市では、バス利用のハードルであった複雑な情報をIT活用で「見える化」しました。さらに、観光客や住民の利用データを分析し、季節や時間帯に合わせた柔軟なダイヤ編成を実現しています。行政は地域と観光をつなぐ公共交通網の維持に向けた支援を行い、バス会社がそのデータを基にサービスを最適化。観光客を効率的に運びつつ住民の生活路線を守る体制を築きました。
行政と民間が綿密に連携し、客観的なデータに基づいた「必要な場所へ、必要な便を走らせる」取り組みは、官民協働による地域交通改革の好例です。
(参考)
バスのお得なきっぷについて| 帯広市ホームページ 十勝
地域全体の連携を強化して選ばれる地域になるためのアクションプラン
二次交通を整えることは、交通事業者だけの仕事ではありません。宿泊施設や商店街、そして私たち自治体が手を取り合い、「観光客を地域へ迎え入れ、周遊を促し、その魅力を存分に味わっていただく」という共通の目的を持つことが成功への鍵です。
まずは、地元の交通情報がスマホですぐに見つかるよう、デジタル化を整えましょう。次に、効率を求める部分と、あえてゆっくり楽しむ体験の部分を分け、魅力的な移動時間をデザインしてください。そして何より、宿やお店と連携し、地域全体で観光客をもてなす仕組みを作りましょう。
「人が動けば、お金も動く」。小さな実験からで構いません。みんなで知恵を出し合い、誰もが楽しめる持続可能なまちを一緒に作っていきましょう。
サイネックスが提供するのは広告媒体ではなく、地域を「知ってもらう」「訪れてもらう」「巡ってもらう」ための情報基盤です。自治体と地域事業者をつなぎ、観光客の行動を地域全体の価値へとつなげることが、官民連携による地域活性化につながります。
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