地域スポーツコミッションによる地域活性化とは?スポーツを通じて新たな地域資源を創出しよう
近年、全国各地で、スポーツを通じた地域への訪問者の増加や、住民によるボランティアや運動機会の創出など、スポーツを通じた活動を行うことで、地域に交流が生まれ、活性化につながる取り組みが進められています。一般にはあまり知られていませんが、地域活性化にスポーツを取り入れるとき、地域スポーツコミッションが大きく関わっていることが多くあります。今回は、スポーツによる地域活性化の成功事例や地域スポーツコミッションと呼ばれる組織について、設立の流れや活動事例を紹介します。
メジャースポーツによる地域活性化の成功事例
スポーツを通じて地域に観光客を誘致することで、単なるスポーツ観戦にとどまらず、地域活性化や経済効果が期待できます。ここでは大規模な取り組みの成功事例を紹介します。
プロ野球のキャンプ誘致による地域活性化
宮崎県都城市では、千葉ロッテマリーンズのキャンプ誘致を軸に地域活性化を進めています。都城運動公園野球場は、2025年に2軍キャンプ地に、2026年は1軍の1次キャンプ地と2軍の2次キャンプ地に昇格しました。
災害時の防災拠点として整備した屋内施設などを、通常はスポーツ施設に活用しながら、充実した練習環境と地元の食の魅力をかけ合わせることで選手やファンの滞在を促進させました。その結果、来訪者が増え、地域のにぎわいの創出や消費拡大、住民の地域への愛着にもつながっています。
プロ野球キャンプ地は温暖な気候であることが条件となりますが、反対に寒冷地という気候条件を活かしたスポーツ誘致も考えられるかもしれません。
2026春季 千葉ロッテマリーンズ都城キャンプ情報(2月27日更新) – 宮崎県都城市ホームページ
Jリーグの「フットボールツーリズム(アウェイ・ツーリズム)」による地域活性化
Jリーグでは、サポーターがアウェイゲームの応援に相手クラブのスタジアムを訪れる「アウェイ・ツーリズム」に力を入れており、クラブをもつ地域の活性化につながっています。たとえば、山陰地方初のプロスポーツクラブとしてJリーグに加盟したガイナーレ鳥取と人気クラブであるFC東京の対戦時に、FC東京のサポーターが試合を観戦するために鳥取県内の各地を訪れることで、現地の飲食や宿泊、周辺観光などの消費機会が生まれ、地域経済に大きく貢献しています。クラブや自治体が連携し、観戦だけでなく地域の魅力も楽しんでもらう工夫を重ねることで、人の流れと消費を生み出している点が特徴です。
アウェイツーリズム:Jリーグ公式サイト(J.LEAGUE.jp)
地域スポーツコミッションの活動事例
一方で、全国各地には地域スポーツコミッションがあり、地域活性化のためにさまざまな施策が進められています。ここでは、特徴的な取り組みを行っている地域の事例を紹介します。
栃木県「とちぎeスポーツフェスタ」:eスポーツで地域活性化と地域課題解決
eスポーツとは、「エレクトロニック・スポーツ」の略で、電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指し、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉えた用語です。栃木県では、eスポーツの普及およびeスポーツを活用した地域活性化を図ることを目的に、2023年5月に「とちぎeスポーツ地域活性化実行委員会」を設立しました。
2025年12月20日「とちぎeスポーツフェスタ2025」では、2024年の9,000人を上回る11,000人動員という大成功の結果となりました。地元の銀行をトップパートナーとし、技術パートナーとして民間企業を迎えるなど、官民連携でイベントの大成功を導いた事例です。
また、栃木県のeスポーツ活用は、こうした若者の活躍機会や地域のにぎわいの創出だけでなく、高齢者の生きがい作りや世代間交流の促進、障害者の社会参加や自立の促進としてもeスポーツ体験会などを実施しています。
eスポーツは年齢や障害の有無に関係なく取り組めるという特徴から、地域課題解決のための事業として取り組む自治体も増えており、今後も注目される分野となるでしょう。
栃木県/とちぎeスポーツ地域活性化実行委員会主催とちぎeスポーツフェスタ2025 Powered by 足利銀行 の開催について
高知県黒潮町「スポーツツーリズム」:地域資源を活かした地域一体の取り組み
高知県黒潮町は、温暖な気候と豊かな自然や食を活用したスポーツツーリズムによる地域活性化に取り組んでいます。
黒潮町のスポーツツーリズムのコンセプトは、「スポーツを通じて「笑顔の輪を広げ」、また黒潮町に帰ってきたくなる」とし、スポーツを軸に、防災と観光で本物の自然体験を提供する地域一体の観光を目指しています。豊かな自然環境、コンパクトで多様な運動施設、おいしい食事、地域一体の受け入れといったPRポイントに加え、合宿や大会の運営に関わる宿泊・弁当、トレーニングコーディネート、会場の手配などを一括でサポートしています。
こうした取り組みを通じて、令和5年度には同町における宿泊数と経済効果が過去最高になりました。
黒潮町総合戦略【令和7~令和9年度】│黒潮町公式ホームページ
秋田県由利本荘市「スポーツ・ヘルスコミッション」:健康増進への意識向上を目指す取り組み
由利本荘市の「スポーツ・ヘルスコミッション」は2016年に設立され、地域のスポーツ施設や資源を活用して、スポーツ大会やイベント、スポーツ合宿等の誘致など、地域活性化を図る取り組みを行っています。また、市民がスポーツに親しむ機会を増やし、健康増進意識を高めることも目的としています。
具体的には、VリーグやFリーグ公式戦の誘致に加え、大会開催時に地域の特産品を販売しています。また、インターバル速歩を活用した「健康の駅」事業を展開するなど、ヘルスツーリズムも推進しています。
施設を民間企業と連携して活用することで、交流人口の拡大や地域活性化に成功しています。外部だけでなく地域内への取り組みにも力を入れている点も注目すべきポイントではないでしょうか。
由利本荘市スポーツ・ヘルスコミッション-大会・合宿は秋田県由利本荘市で!
地域スポーツコミッションとは
地域スポーツコミッションとは、地域におけるスポーツ関連施策を総合的に推進し、スポーツによる地域活性化に取り組むための組織です。自治体を中心に、スポーツ団体や観光・経済団体、民間企業など多岐にわたる団体が関わり、分野横断的な取り組みを実現します。単なるイベント運営にとどまらず、地域資源の活用や関係者間のハブとしての機能も果たしながら、戦略的にスポーツを地域づくりへと結びつける役割を担うという特徴があります。
スポーツ庁の調査によると、2023年10月時点で、全国で204団体の地域スポーツコミッションが設置されています。
スポーツ庁:令和6年度地域スポーツコミッション基礎調査2024報告書
地域スポーツコミッションに必要な4要件
地域スポーツコミッションは、一定の機能を果たすために組織要件と活動要件を合わせた4つの要件を満たすことが求められます。
組織要件には、地方公共団体、スポーツ団体、観光協会・商工団体・大学・観光産業・スポーツ産業などの民間企業といった複数の団体が連携する「一体組織要件」、常設され継続的に活動する「常設組織要件」があります。
活動要件には、スポーツと地域資源をかけ合わせることで地域外との交流を生み、地域活性化につながる主な活動とする「域外交流活動要件」、年間を通じて幅広くスポーツに関する活動を展開する「広範通年活動要件」があります。これらの要件により、単発ではなく持続性のある地域活性化の仕組みが構築されます。
スポーツ庁:【担い手】「地域スポーツコミッション」の設立・活動の支援
地域スポーツコミッションの役割と活動内容
地域スポーツコミッションは、地域内外の資源や関係者をつなぎ、スポーツを軸とした多様な取り組みを展開します。その活動は、競技スポーツの振興に限らず、健康づくりや観光振興、地域ブランドの向上など幅広い分野におよびます。
スポーツによる地域活性化について詳しく知りたい方は、こちらの記事をチェックしてみてください。
関連記事
スポーツで地方を活性化!進む企業と自治体の連携
地域スポーツコミッションの役割
地域スポーツコミッションの主な役割は、スポーツと地域に点在する景観・環境・文化などの地域資源を結びつけ、地域活性化に効果的な施策を実行するための調整機能を担うことです。また、スポーツと観光といった異なる分野の組織や人材をつなぐハブとなり、関係団体間の連携を促進し、情報共有や企画立案を行うことで、個別では実現が難しい取り組みを可能にします。また、外部とのネットワーク構築や情報発信を通じて、地域の魅力を高める役割も担っています。
少子高齢化や過疎化などの課題に直面する地域が増えている現状において、地域スポーツコミッションは、スポーツを通じた持続可能な地域発展を支える存在として今後さらに重要になると考えられます。
住民向け活動
住民に対しては、日常的にスポーツに親しむ機会を提供することが重要な活動となります。スポーツ教室や体験イベントの開催、健康づくりのための運動プログラムの実施などを通じて、運動習慣の定着や健康意識の向上を図ります。また、地域のスポーツ施設の管理や、バリアフリー環境の提供といったことも活動の一環です。
世代やレベルに応じたスポーツへの参加機会を整えることで、地域コミュニティの活性化や交流促進にもつながります。
対交流人口向け活動
地域外から人を呼び込むための取り組みとして、イベントや大会、合宿の誘致に加え、スポーツツーリズムの推進も注目されています。スポーツツーリズムとは、スポーツの観戦や参加を目的とした移動に観光要素を組み合わせたものです。観光庁では、スポーツツーリズムを「観る・する・支える」というスポーツの要素を活用して、インバウンド促進と地域活性化を目指すものとして定義しています。たとえば、観光客への競技観戦を組み込んだ滞在プランや、スポーツチームの地域経営、市民ボランティアとしての大会支援などがあります。
スポーツ観戦や参加だけでなく、地域の観光や支える人々との交流から、新しい切り口の観光資源として、インバウンドの拡大や交流人口の増加が期待できます。
観光庁:観光立国推進基本計画
地域スポーツコミッション設立のステップとポイント
地域スポーツコミッションの新規設立には、いくつかのステップがあります。ここでは設立の流れと、各ステップにおけるポイントを紹介します。
1.構想整理・目的設定
まずは、地域課題とスポーツ活用の可能性を整理し、地域スポーツコミッション設立の目的や方向性を明確にします。地域資源や強み、ターゲット(合宿への誘致・健康増進など)を洗い出し、関係者間で共通認識を形成することが重要です。
また、単体の部署ではなく、さまざまな部署と連携することが、施策を成功させる上で重要です。連携のためには自治体内での理解を得る必要があり、場合によっては外部講師を招いての勉強会・講演会なども有効です。
2.先進地の視察
事業を進める際、先進地の事例を収集することはメンバーの理解を深める上でも有効です。視察の候補地選定のポイントは、事業内容が類似していることの他、自治体規模や保有しているスポーツ資源・観光資源も考慮して決めるのがポイントです。
コミッションの活動はさまざまな関係者との連携が必要となるケースが多いため、必要に応じて事前の情報共有や活動の方向性への理解を得るための会議体を設置することも有効です。
3.組織設計・事業計画の策定
地域スポーツコミッションの運営は自治体によるものと法人格団体によるものに分かれます。ただし、自治体から独立している法人格団体でも、自治体からの補助金や委託料によって運営されているケースが多いとされます。
事業内容について、既存の事業で多いのが「スポーツ合宿・キャンプの誘致」、次に「スポーツ大会・イベントの誘致」、続いて「スポーツツーリズム事業」に取り組んでいます。事業内容決定にあたり、よく課題としてあがるのが、既存団体の活動内容との重複とされていますが、その際、コミッションの目的を達成するという視点をもつことが重要です。
4.設立・事業開始と運営改善
事業を進める際、先進地の事例を収集することはメンバーの理解を深める上でも有効です。視察の候補地選定のポイントは、事業内容が類似していることの他、自治体規模や保有しているスポーツ資源・観光資源も考慮して決めるのがポイントです。
コミッションの活動はさまざまな関係者との連携が必要となるケースが多いため、必要に応じて事前の情報共有や活動の方向性への理解を得るための会議体を設置することも有効です。
スポーツを通じて新たな地域活性化施策に取り組もう
地域スポーツコミッションは、地域資源を活用しながらスポーツにまつわる施策に取り組み、地域活性化を目指す組織です。自治体とスポーツ団体、民間企業など幅広く連携することが成功のポイントでもあり、スポーツと観光といった異なる分野のハブとなる役割も担うため、官民連携が必須と考えられます。
地域スポーツコミッションの取り組みが少子高齢化や人口減少といった地域課題の解決や、新たな地域資源の創出につながる可能性があるため、ぜひ地域におけるスポーツ活用の可能性を検討してみてはいかがでしょうか。



