聖地巡礼を地域活性化につなげるには?地域の魅力を再発見しましょう
聖地巡礼と聞くと、アニメや映画などの舞台をファンが訪れる観光をイメージする人も多いでしょう。
しかし、人が特別な場所を目指して旅をする文化は、現代に限ったものではありません。
日本では古くから、信仰の対象となる場所を訪れる巡礼が行われ、江戸時代にはお伊勢参りが庶民の間で盛んに行われるようになりました。
現在では、アニメや映画、音楽、歴史上の人物など、さまざまな憧れの対象をきっかけに、そのゆかりの場所を訪れる行動へと広がっています。
こうした人の土地への熱意を地域の魅力につなげることは、地域活性化のきっかけにもなります。
聖地巡礼とは?
聖地巡礼には、宗教的な場所を訪れる巡礼という文化がルーツにあります。
日本では古くから、信仰や修行などを目的に特別な場所を目指す旅が行われてきました。
江戸時代にはお伊勢参りが庶民の間で盛んに行われるようになりました。
特定の場所を訪れることで、その場所にまつわる物語や背景を体験するという文化は、時代とともに形を変え、現在の聖地巡礼へとつながっています。
多くの民衆伊勢へ「おかげまいり」
巡礼文化の歴史
日本には古くから、信仰の対象となる場所を訪れる巡礼文化があります。
文化庁の日本遺産では、西国三十三所観音巡礼を日本で最初の巡礼とし、四国八十八ヶ所は山岳信仰などに由来する修行の旅とされています。西国三十三所では、観音菩薩の慈悲に触れ、自分自身の人生を見つめ直すために人々が旅をしてきました。
こうした特別な場所へ足を運ぶという文化は、現代における聖地巡礼のルーツの1つといえます。
また、聖地巡礼を考える際、江戸時代に一世を風靡した「お伊勢参り」も参考になります。
長い場合は徒歩で3カ月ほどかかるとされた旅は、信仰の対象を訪れる旅でありながら、道中の観光や門前町での買い物なども含めた大きな旅の楽しみとなっていた点は、現在の聖地巡礼にも通じます。
1300年つづく日本の終活の旅|日本遺産ポータルサイト
一方、海外でも、特定の文化や作品への憧れから、そのゆかりの場所を訪れる行動は古くから見られます。
音楽では、ビートルズのアルバムのジャケットに使われた、ロンドンのアビー・ロードの横断歩道が象徴的な場所となっています。
また、シャーロック・ホームズの住所として作品に登場する「221B Baker Street」も、作品ゆかりの場所として知られています。
地域資源が聖地となる可能性がある
聖地巡礼という言葉は、現在ではアニメや漫画、映画、ドラマなどのモデルとなった場所や実際に登場する場所だけに限らず、作品と縁のある土地や、ファンとして思い入れのある場所を訪れる旅も聖地巡礼とされています。
さらに、地域に残る歴史上の人物の足跡や、神話にまつわる場所、自然景観なども、その場所へ行って背景を深く知りたい人にとっての聖地として捉えられます。
そして、聖地巡礼の注目すべき特徴は、必ずしも新しい観光施設を整備しなくても、既存の地域資源を観光につなげられる点です。
観光庁も、映画やアニメなどのロケ地・舞台を、観光需要を喚起する重要な拠点と位置づけ、聖地巡礼の促進などを通じたロケツーリズムを推進しています。
また、歴史的資源についても、城や社寺、古民家などを地域の観光まちづくりに活用する取り組みが進められています。
地域にある資源を「誰かにとって特別な場所」という視点から見直すことが、聖地巡礼につながる可能性があります。
ロケツーリズムの推進 | アート・文化芸術コンテンツの整備 | 消費拡大に効果の高いコンテンツの整備 | インバウンド回復戦略 | 観光政策・制度 | 観光庁
なぜ聖地巡礼が注目されるのか
アニメや映画などのコンテンツをきっかけとした聖地巡礼は、ファンの来訪による観光誘客だけでなく、飲食や宿泊、物販などを通じた地域経済への波及も期待されています。
さらに、ファンの活動を起点として、作品の制作側、自治体、企業などが連携し、コンテンツと地域の魅力を組み合わせた取り組みも生まれています。
コンテンツを活用した地域振興は、国の政策としても進められています。
内閣府は「コンテンツと地方創生の好循環プラン」を掲げ、アニメや漫画などのゆかりの地巡りによる観光誘客や新たな産業創出などを地方創生につなげる方針を示しています。
国からの後押しもあり、自治体や企業などがコンテンツと地域の魅力を組み合わせた取り組みを進めています。
コンテンツと地方創生の好循環プラン : 知的財産戦略推進事務局 – 内閣府
地域活性化につながっている聖地巡礼の事例
聖地巡礼の対象は、アニメ作品の舞台だけではなく、映画やドラマのロケ地はもちろん、歴史上の人物にゆかりのある場所や、神話・自然と結び付いた場所も、訪れる理由や背景をもつ「聖地」として捉えることができます。
ここでは、地域資源を巡る観光や地域活性化につなげている事例を紹介します。
歴史観光としての聖地巡礼
歴史上の人物に思い入れがある人が、その人物の足跡をたどることも、聖地巡礼の1つといえます。
長崎市では、「坂本龍馬の足跡さんぽ」として、龍馬が活動した場所やゆかりの地を巡る観光コースを設定しています。
また、長崎市公式観光サイトでは、龍馬像や亀山社中跡などを巡るコースが紹介されています。
歴史上の人物を知るだけでなく、実際にその人物が過ごした場所を歩くことで、歴史をより身近に感じられる仕組みです。
このように、聖地を1つだけ訪れて帰るのではなく、複数の関連スポットを巡る仕組みをつくることで、地域内の回遊につなげられます。
坂本龍馬好き必見!幕末の足あとを辿る | モデルコース | 長崎市公式観光サイト「travel nagasaki」
さらに、訪問の途中で飲食店や商店などを利用してもらえば、観光消費の地域内への波及も期待できます。
聖地そのものだけを観光資源とするのではなく、周辺にある地域資源と組み合わせることが経済効果につなげるポイントになります。
神話・自然・パワースポットを巡る聖地巡礼
作品の舞台や歴史上の人物だけでなく、神話や自然に由来する場所を巡る観光もあります。
宮崎県公式観光サイトでは、高千穂町、日之影町、延岡市にあるパワースポットを聖地巡礼として紹介しています。
天安河原や滝、岩峰など、神話や自然と結び付いた場所を1つずつ巡ることで、その土地ならではの物語や魅力を体験できるルートです。このように、地域固有の自然や文化そのものが訪問の目的となるケースも、広い意味での聖地巡礼として捉えられます。
作品の舞台でなくても、その場所にまつわる物語や信仰、自然景観などが、人を呼び込むきっかけになる可能性があります。
観光地として有名かどうかだけではなく、その場所の背景や物語を知りたいと思えるかどうかという視点が重要になります。
スピリチュアルスポットがある – 宮崎県移住・UIJターン情報サイト「あったか宮崎ひなた暮らし」
動画コンテンツから生まれた聖地巡礼
アニメや映画だけでなく、YouTubeなどの動画コンテンツをきっかけにした聖地巡礼もあります。
愛知県岡崎市では、人気YouTuberグループ「東海オンエア」が、市内のさまざまな場所で動画を撮影したことから、ファンが撮影場所などを訪れるようになりました。
東海オンエアの活動を生かした観光施策にも取り組んでおり、ファンが市内を巡ることで地域の飲食店や観光スポットなどにも足を運ぶ動きが生まれています。
新パネル制覇!東海オンエア聖地巡り【徳川オンエア武将隊編】|モデルコース|岡崎おでかけナビ – 岡崎市観光協会公式サイト
聖地巡礼は、作品だけでなく、地域とゆかりのある人物やコンテンツをきっかけに広がる可能性があります。
こうしたファンとの継続的な関係は、観光客数だけでは測りにくい地域とのつながりを生むことが期待されます。
自治体にとっては、一時的な集客だけでなく、地域を好きになってもらい、再訪してもらうきっかけとして聖地巡礼を捉えることも重要です。
聖地巡礼を生かすポイント
聖地巡礼を地域活性化につなげるには、単に聖地をPRするだけでは十分ではありません。
ファンや訪問者が楽しめる環境を整え、地域の事業者や住民とも連携しながら、地域そのものへの関心につなげていくこと、そして実際に地域内で消費が起きる仕組みをつくることが重要です。
とくに、作品などの人気が一過性のものにならないよう、地域資源と組み合わせる視点が求められます。
聖地巡礼を地域そのもののファンを増やす入口として捉えることがポイントです。
地域にある聖地のきっかけを考える
聖地巡礼につなげるために、必ずしも新たな観光資源をつくる必要はありません。
地域に残る歴史、人物、文化、自然、建物などをあらためて見直し、その場所を訪れたいと思う入口を考えることが重要です。
たとえば、歴史上の人物に関する聖地巡礼であれば、その人物が生まれた場所だけでなく、暮らした場所、活動した場所、ゆかりのある施設などをつなぐことで、足跡をたどるルートをつくれます。
作品の場合は、作者の出身地やゆかりの地を生かすアプローチも考えられます。
地名や景観が作品に登場していなくても、作品や作者とのつながりをきっかけに訪問を促せるかもしれません。
また、聖地の場所だけを紹介するのではなく、作品や人物とのつながり、その土地に残る歴史や文化など、背景にある物語を伝えることが重要です。
訪問者が来てよかったと感じられる情報を提供することで、地域への関心を深められます。
聖地だけで終わらせず地域を周遊してもらう
聖地巡礼を地域活性化につなげるためには、目的地に到着して写真を撮るだけの観光にしないことも大切です。
複数のスポットを巡るコースを設定したり、地域の飲食店や商店などと組み合わせたりすることで、滞在時間や地域内での消費につなげられます。
長崎市の坂本龍馬ゆかりの地を巡るコースでは、人物の足跡だけでなく、その周辺にある歴史やまちの魅力を合わせて体験できるようになっています。
とくに、日帰り旅行と宿泊旅行では、旅行者1人当たりの旅行消費額に大きな差が出るといわれています。
聖地を目的地ではなく、地域を楽しむきっかけとして活用することがポイントです。
ファンや地域事業者との関係を大切にする
聖地巡礼の出発点には、作品や人物、地域に対する訪問者の思いがあります。
そのため、実際に訪れる人が何に魅力を感じているのかを把握することも重要です。
一方的に情報を発信するのではなく、魅力の生まれる背景を把握し、地域事業者とも連携しながら受け入れ環境を整えることが大切です。
また、地域側では、観光協会や商店、飲食店などと連携し、訪問者を受け入れる環境を整えることが求められます。
訪問者と地域との関係を継続的なものにすることが、地域活性化につながるポイントです。
作品の人気だけに依存しない
アニメや映画などをきっかけとした聖地巡礼では、作品の人気が大きな集客力になります。
一方で、作品の人気だけに頼ってしまうと、ブームが落ち着いた後に来訪者が減少する可能性があります。
そのため、地域を知ってもらうきっかけとして作品を活用し、そこから地域の自然、歴史、文化、食、街並みなどにも興味をもってもらうことが重要です。
映画・ドラマのロケ地を訪ねるロケツーリズムについても、観光庁は単にロケ地を訪れるだけでなく、その地域の風景や食、人々のおもてなしに触れ、地域のファンになることを重視しています。
何の聖地かではなく、なぜそこへ行きたくなるのかを考えることが、地域の新たな魅力発信やリピーター創出につながります。
自治体が聖地巡礼を地域振興に生かすポイント
聖地巡礼は、アニメや映画の舞台を訪れるだけでなく、歴史上の人物の足跡や神話、自然など、その土地にまつわる物語を求めて訪れる行動にも広がっています。
地域にすでにある資源を、外からの視点で見直し、観光資源として生かせる可能性を探ることが第一歩です。
作品や人物などをきっかけに地域を回遊してもらい、自然や歴史、食、文化など地域そのものの魅力を知ってもらうことで、一過性の集客にとどまらない地域とのつながりにつなげられるでしょう。
サイネックスでは、こうした地域の魅力を届けるためのお手伝いをしています。ぜひご相談ください。
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